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とりとめのない、補給中の暇つぶし

何とか間に合いました(間に合ったとは言ってない)

地球勢力においてコルベット艦という扱いをされている、我らが愛機YHI-100は宇宙船としては小型である――訂正しよう、超小型だ。

小さい艦であり、ミルキーウェイ秘密協定の都合でアナログな――といっても地球人にとってはオーバーテクノロジー気味な――手段で星系内を飛ぶ都合上、燃料問題というのは常について回ることになる。


そんなわけで、エッジワース・カイパーベルトに到達する前に一度補給をする必要があったりする。

ゲームの上では一度の補給をするのにいくつもの恒星系を飛び回ったりするだろうし、場合によっては燃料という概念自体がなかったりすらあるだろう――基本的にそういうのは面倒だからだ。

我々の小さな燃料タンクは仮想でも何でもなく現実であるため、そういうめんどくさいことを強いるというだけである。


この燃料というのが水なわけだが、別に水素ガスでも問題ないといえばない。

しかし水――といっても重水だ――のほうが地球の核融合炉的には都合がいい――つまりD-T反応炉である――ので、基本的にタンクに詰め込むのは重水となる。

D-T反応後に取り残されるヘリウムは、需要次第にはなるが回収されることになる……まあ燃料税みたいなものだろう。


恒星と同じ手段で核融合反応を仕様とすれば、水素核融合の後のヘリウム反応など、扱えるものは多いかもしれないが、とにかく熱量が凄まじすぎるし、生成される重元素の処理が大変すぎるので個人用宇宙船向きではない。

というか背中に小型太陽抱えたまま、凡ミス1つで太陽喰らって焼け死にたい奴なんてそうはいない――そんな心配するまでもなく様々な理由で俺たちは死ぬが、嫌なものは嫌なのだ。


と、いつも通りどうでもいいことを並べ連ねているのは、補給中はとにかく暇だというのがある。

この太陽からだいぶん離れた極寒の世界に浮かぶPluto……つまり冥王星軌道上のステーション――といっても火星や土星などの主要惑星と比べてだいぶ規模が小さく、ドックも野ざらし型のものだ――で補給を受けている。

野ざらし型故にキャノピー越しに冥王星が見えたりするのだが、丁度夜の部分に入ってしまっているらしく、おぼろげながら見える輪郭からその姿を想像するしかない。

もっとも、しばらく待てば昼間の部分に出るだろうが。


「区分上は既にエッジワース・カイパーベルトに入っているわね。ここから10auほど飛んだ先が目標地点よ」


シルビアの発言に、ハーヴェイが続く。


「今回の海賊は、ちょっとおイタが過ぎちゃった奴だ。アメリカの巡視船がやられたらしく、敵は複数って以外にロクな情報がない」


不穏な情報とやらがもたらされる。

太陽系は、ミルキーウェイの宇宙進出文明がそれぞれ主張している勢力圏と比較すればかなり平和なほうで、保護星系という枠組みもあってとにかく平和で、ぶっちゃけ星系内パトロールなんかもほとんど必要ないレベルではある。

なんなら今回俺たちがやるように、星系内の宇宙海賊退治は、軍事力を保有している民間企業にやらせたほうが効率がいいまである。


しかし軍を保有、維持するためには常に訓練っていうものが必要であり、1星系しか保有していない地球勢力が宇宙でやっていくためには、地球人にとっては少しばかり広すぎる太陽系のパトロールだって立派な実践訓練になりうるわけで、そこでおイタすぎることされてしまい、無事爆散し貴重な人材も資産もロストしてしまったというわけだ。

そらアメリカさんもゲキオコである。


しかしそこで自前の軍を投入するのではなく、我々民間企業に話が回ってきたのは、装備の質とかそういうもの以前の理由がある。

つまり、もうこれ以上エリート集団を失うわけにはいかないのだ。


「海賊退治なんてそんなもんよ。正規戦ならともかく、ゴロツキ相手に損耗なんて国内向け的な意味で許されることじゃないしね」


そらそうだわな。

敵の情報の質が劣悪っていうのは、敵の情報をアメリカが得られていないのか、こっちに回してくれていないのかまでは俺にはわからない。

海賊ちゃんが徘徊していると思われる凡その位置を知らせてくれるだけでもマシなほうだ、というのがシルビアの立場らしいので別に構わない。


「目標地点侵入後はフォーメーション維持したまま索敵。ラーヒズヤ、頼んだわよー」

「俺が力んでも索敵効率は変わらんぞ」


その通りなのだが。

今回は敵がその辺をうろついているというのはわかっているので、斥候役としての兵装を持っているラーヒズヤも先行して索敵とかはしないで済む。


艦隊戦(フリート)における花形といえばメイン火力たる攻撃役を思い浮かべるだろうが、役割としての重みは実はそこまで大きくないというかぶっちゃけ軽いといってもいい。

フリートという集合体において一番重い役割はやはりフリート・コマンダーである。

戦闘における敵の優先順位付けや攻撃指示、というか艦隊行動時の全ての指示判断を行う必要があるため、コマンダー無しにはフリートは存続できないといってもいい。


その後は順位はつけられないものの、敵を索敵・探知する斥候役――これは伝令役を兼ねることも多い――、そして敵に突っ込んでいって足止めをする役などがとにかく重い役割になるだろうか。

何しろ、ぶち殺される確率が一番高い危険な仕事で、ルーキーや実力がいまいちわからないやつに任せられる仕事ではない。


このあたりの役割の重みが何故大きいかというと、少人数でやらねばならず、それを成功させる必要があるからだ。

任務内容によっては、自分の死と引き換えにしてでも成し遂げねばならないこともあるため、フリートの中でも実力者が選ばれる傾向にあるようだ。


ではなぜ攻撃役の役割としての重みが小さいかというと、船と装備さえ用意できればあとはコマンダーの言うこと聞いていれば仕事として成立するからだ。

艦隊の規模が大きくなればなるほど一人当たりの仕事量は少なくなりそれに特化すればよくなるため、攻撃役の仕事というと、コマンダーの指示通りに飛んでコマンダーに指示された敵をターゲットし、コマンダーの指示に合わせてその敵を打つだけで済むようになる。


状況に応じて己で判断せねばならない前者の役割と比べてしまえば、攻撃役の仕事の簡単さがよくわかると思う。


が、別に死ぬ可能性が低いとかそういう話ではないというのも付け加えるべきだろうか。

艦隊指揮の定跡として、味方が10なり100なりいるとして、同じように敵が10なり100なりいてもそこまでターゲットは分散させないというのがあるそうだ。

つまり、基本的には1つの敵に味方の攻撃をなるべく全て集中してぶつけて、速やかに次の敵をターゲットして潰すという手段をとるということで、これは敵も似たようなことをやってくるという意味になる。

攻撃されるときは、100艦の船の全武装兵器が俺に向かって火を噴いてくるという意味をあらわすことになり、そうなってしまえばどうあがいても死ねる。


戦争は数が重要であるが宇宙においてもやはり重要で、人的有利な状況で少数の敵をぶち殺すというのが基本である。

もちろん少人数あるいはソロで多数の敵をぶち殺すなんてことも可能であるが、それをしようとするとめっちゃ金がかかるというのは言うまでもない。


重要なのは、艦の基本的な性能が似通っていること――つまり武装の射程やロック距離、航行速度などだ。

全員同じように飛べて、同じように攻撃できるのであれば、細かいことはどうにでもなる。

そういう意味では、フリート・ミッションの敷居って奴はそれほど高くないと言える。


因みに俺の船は攻撃用の武装は少ないが、コマンダーの指示に従っていれば事足りる役割ではあるので、正直言ってお気楽ちゃんである。


「じゃ、行きましょうか」

「「「「アイアイサー」」」」


小型の補給ステーションのため、全員いっぺんに補給が請けられなく、暇な時間が多かったがようやく本番である。

じゃあ、行こうか。

時間稼ぎ用エピソードを用意する必要があるかもしれないと思いましたが、我がホンペンペンの一部がすでにその役割を担っている感じだったので別にいらねえやとなりました。

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