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まだ見ぬパイセンと、個人依頼

あけましておめでとうございます。

今後はストック残との戦いになりそうですが、1週目は変わらず日々投稿できます。

2週目以降は仕事始め後の残業具合によるものとします。

「あれ、おかしいわね。ジャンプスーツの代わりにスクール水着とかいうコスチュームにすり替えておいたんだけど」

「ぶち殺すぞ貴様」


実際そうなってたが、搭乗前に何故だか嫌な予感がして手荷物として、別途このアンドロイド体用のジャンプスーツを持ってきていたのだ。

アンドロイド体で活動するディスカバリー社員は、宇宙線からの保護や真空中で活動するための分厚い宇宙服が必要ないってのは、軍のほうも知っているはずなのだが、それでもスク水でムーンベースに行くバカなんて前代未聞を超えた何かになっちまうじゃないか。

実際には、その実力差からぶち殺されるのは俺のほうなのだが、気分的な問題なので誰もツッコミを入れたりはしない。


ハーヴェイの「oh,mywife...」という呟きに関しては、今回は不問とする。

何故ならば、今の彼のストレス値は結構やばいことになっているからである。


この体は小さいが、ディスカバリーに日本支社があるように、体格の小さ目な日本人が入社することは当然の権利のように想定されているので、この体でもきちんとフィットするジャンプスーツは用意されている。

問題は、想定以上に日本人からの人気がないということだろう……自業自得だな!


「確かにディスカバリーはジャパニーズからの人気は低いんだけど、ドップリつま先から脳のてっぺんまで宇宙に漬かってる馬鹿野郎もいるわよ。そういうのはだいたい星系外で活動してるわね」

「へー、いつかまだ見ぬパイセンどもと一緒に未知の世界に突撃したいもんだぜ」


SF脳に侵されSANが負数まで突入しちゃってるような奴は、太陽系に帰ってくること自体稀らしく、元々数が少ないジャパニーズのほとんどがそんな気の狂ったやつららしい。

まあ、ボンクラだろうがなんだろうが、適当に生きようと思えば生きていける日本を飛び出して、宇宙に出ようなんて言うバカタレなんだから、そうなるのは当然なんだろうなあ。

俺だって、フリゲートを乗り越えてデストロイヤークラスの艦船に乗るようになったら、多分太陽系に帰ってくること自体が稀になるっていう自覚は持ってる。

何しろ、俺の帰りを待ってくれるような何かなんていないんだから、当然だよなあ。

多分、太陽系を飛び出してロクに帰郷することもなく活動してる奴のほとんどは、俺と同じような境遇のバカタレばかりなのだろう。


これはあまり重要でもなく、どうでもいい小話カテゴリに入るが、ディスカバリー社員として仕事を請ける、ディスカバリーの仕事リストを閲覧するのに地球圏に戻ってくる必要性は、当然ながらない。

これは、仕事リストや仕事の概要なんかは文字情報だけでよく、詳細は発注主から出るものであり、銀河中どこにいようがラグなく送受信できるダークマター通信の範疇で行えるからである。

音声通信ほど万能感はないものの、単純な文字列という意味でのモールス信号めいた形で行われるダークマター通信はその点でも便利であり、画像や映像として送るよりも処理が軽いのだ。

故に、カウンターに座る受付の綺麗なおねーちゃんというものは存在しない……その意味がないからだ。


火星ステーションでそれをやろうとすると、暇を持て余したマッチョマンこと3Mが嬉々とした表情でそこに座ろうとするのは間違いない。

そうなると本当に誰も来なくなるし誰も利用しようとしなくなるので、やっぱりやらないほうがいいということだ。


まあ、先のことは先の事として置いておくとし、今は目の前の仕事に集中すべきだろう。

減速期間に入って3時間ほどが経過すると、地球や月がだいぶ大きく見えてくることになり、妙な感動って奴が胸をこみあげてくるのがわかる。

あの青い星の中にいる人たちの中に、俺が思い入れのある人物ってのはほとんどいないわけだが、それでもあそこが俺のホームだと自覚してしまうのは、俺が地球人だからで、今の俺は地球を飛び出して、外から改めて地球を見たからなのだろう。


そう、今俺たちは通信でもあまりメンバー間で会話をしていない。

最初の頃は、光学カメラで大気を通さない"生"の太陽を観察して興奮したり、オカルティックな部分も含めた宇宙ネタで盛り上がったりもした。

しかし、地球が少しずつ大きくなるにつれ、カメラでの拡大などが必要なく、シールドスクリーンに目を向けるだけで、あの青い星がはっきり見えるようになってくると、皆揃って、俺も含めて、黙って地球を見つめるだけになっていった。


とはいえ、お仕事が俺たちの心情を酌んで待ってくれるというわけではない。

地球が肉眼だけではっきりとわかる距離ということは、月が目の前にあるということであり、お仕事を発注したのが地球を周回している月面基地の中の人なのだから。


「着陸シーケンスっていいたいところなんだけどね、フリート・ミッションだからハーヴェイ以外のメンバーは月面基地に行く必要はないんだわ。そんなわけで各メンバーの国籍に合わせて仕事請けといたからそれ振り分けるね。概要はそっちで確かめてね」

「「「アイアイサー」」」


DNAレベルで刻まれたその寡黙さで、いるんだかいないんだかよくわからないラーヒズヤも、このアイアイサーはきちんと発声することをお伝えしたい。


『ミッションの内容が通達されました、ご確認ください』

「あいよー」


お仕事を発注したのは、日本航空宇宙軍第三艦隊の少佐殿である……個人的な依頼らしい。

ちょっとしたものの運搬で、運搬先は地球ってことだが、これってようは種子島のマンションに置かれている(ハズ)のアンドロイド体にダイブしろってことかね。

ともかく、航空宇宙軍第三艦隊が展開している、土星ステーションまで向かう必要がある。


「俺は土星ステーションまで行って地球にとんぼ返りだわ」

「こっちは木星に突っ込んでいくであろう流星群の生観測だそうだ」

「土星って遠くない?……私は"実にイタリアらしい"依頼だったわ。ムーンベースに寄るする必要があるわね」


ていうか月まで来たのに、火星の公転軌道を超えていかなきゃならんのか……とは思うが、これがフリート活動なので仕方ない。


「ていうかどう考えてもそれなりの時間食うが、いいのか?」

「ええ、打ち合わせとか調整とか、必要な資材の受取とかで、そういうのでなんだかんだ時間食うのよ。ハーヴェイにその辺も叩き込まなきゃいけないし。だから最大7日間の猶予があるからきちんと仕事してね」

「アァン……」


ハーヴェイのギブアップ・ヴォイスが聞こえるが気にしない。

俺たちにも、客に直接会ったり、運搬依頼ならそれを受領して云々とかがあるわけだが、所詮は個人依頼で敷居も低い。

フリート・コマンダーとして仕事を受けるときにやらなきゃならない書類仕事的なものとは面倒くささが段違いってことらしい。


「うん?ならなんで俺のジャンプスーツをスク水に……」

「はい、もうお仕事の時間だからちゃっちゃと移動するように!」


だからなんでスク水に!?


『多分、日本人からの依頼を請けさせたからじゃないでしょうか』

「宇宙軍の人を困らせることになるだろうが!」


そりゃ下っ端には色々いるだろうが、日本航空宇宙軍は世界各国と比較してもクソ真面目とされる日本の軍人の中でも、選りすぐりのクソ真面目オヴクソ真面目が集まった超絶有能集団なわけで、スク水が舞い降りたって困惑以上のことはしてもらえないだろ常識的に考えて。


「まあいいや、タマヨリは土星ステーションまでの航路を計算してくれ」

『あいあいっさー』


とりあえず回頭し、AR機能で示される太陽系マップを睨みながら概ねの位置に向けてスラスタを吹かし前進を開始する。

凡そ13億キロの、俺たち地球人にとっては糞長く、宇宙規模で見ればそれほど長くない旅路であるためこの場ですぐさまグラヴィティ・アクセラレータを使用したいが、ここは月の重力井戸の影響圏であり、下手なことはできないので核融合パルス推進で暫く飛ぶしかない。


急加速によって強い慣性が発生し、ミステリアス・ナデシコ・キュートガールのボディがシートに押し付けられるが、これはアンドロイド体であるので内臓がつぶれたり骨が砕けたり、ブラック・アウトしたりするようなことはない。

これがアンドロイド体にフルダイブして操船することの利点であり、その利点を生かせないカプセル内のジョーモン・サエナイ・アラフォーオヤジの俺はミンチに……なることもなく、超テクノロジーな技術に守られてゆりかごに揺られる赤さんが如く暢気に寝ていられる。


「土星に着いたら補給くらいはするかなあ、経費扱いにできるんだっけ?」

『はい、シルビアの財布から支払われます』

「やったぜ」


などと言っていたが、ふと横を見てみると、ラーヒズヤがついてきているのが見えた。


「どうしたマッチョマン。確かに土星は木星より遠い場所にあるが、星辰が揃ったりしている時期じゃないから方角別じゃね?」

「うむ、未成年の女性を一人で旅をさせるのは忍びなくてな……」

「大丈夫だ、俺は未成年でもないし女性でもない」


彼は少々、天然すぎる。

ミルキーウェイ秘密協定と保護星系 その2


ミルキーウェイには多数の文明勢力があるが、地球内のように国境線を引いて勢力ごとに色分けしてみても、地球の西暦2222年現在でも空白地域のほうがよっぽど多い状態である。

この銀河だけでも地球人の理解の外側にあるテクノロジーを扱う勢力は多数あるが、直径10万光年にだいたい4000億の恒星を抱えるこの銀河を文明の色で塗りつくすには、まだまだ相応の時間がかかるというわけだ。


仮に全ての恒星のハビダブルゾーンに地球型の居住可能惑星があったとして、そのすべてに地球人が入植できんのかという話をしてみよう。

世の中全ての地球人がエロゲの世界の住人にでもならない限り、そこまで増殖するのは並大抵どころではないのは誰にだって理解できる話だろう。

1惑星1種族だけでは無理なのだ……当然1惑星内の1国でなんとかなんてできうるはずもないわけだ。

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