あらゆるマルチバースの俺の中でも一番悲惨な俺が、俺
人間が想像できることは以下略という言葉があるらしいです。
では異世界転生は可能なのかと言われるとんなもん知らねーよとしか言いようがありませんが、マルチバース的な意味ではあるんじゃないっすかね、地球上にだって自称含めた前世の記憶持ちは複数いた気がしますから。
このどうでもいい前置きから私が言いたいことは、ケモレベルの高(洋風)低(和風)やその他妄想の産物などなど。
別次元や並行世界をたどらんでも、ミルキーウェイや他の銀河にいてもおかしかないよね的なことだったりします。
我々もしくは2次元マイワイフに憧れを持っているそこのアナタが必要としているのは、宇宙に飛び出して3次元マイワイフにたどり着くための現実的な技術力なのです。
冒頭のアレは「実現できる」と続くわけですが、「実在する」と言い換えてもいいんじゃまいか的な乳幼児並の感想です。
HENTAI力が科学を押し上げる力になるという可能性が少しでもあるのならば、そんな見え見えの釣り針ぶら下げるくらいの思い切りの良さがあってもいいのかもしれません。
だってそうでしょう?そこにあなたのマイ・ワイフがいるというのであれば、なんとしてでもあなたはそこにたどり着きたいでしょうから。
「ホントに宇宙飛んじゃってるよ」
ガラッティの暢気なセリフは、俺たちルーキーパイロットの総意でもある。
現在の操船権はシルビアが握っているとはいえ、所有者権限が俺自身にある艦船のパイロット・シートに俺自身が座り、シールドスクリーンから見える宇宙の景色は、まがい物ではなく本物なのだから。
まずは、グラヴィティ・アクセラレータで10Gを14,400sec、つまり4時間加速してから残りは慣性移動で航行することになる。
その時の最終速度は時速にして凡そ5,000,000km/hとなり、76,000,000kmという想像し難い距離ですら小旅行程度の時間となるが、当然通常の手段でコレを止めようと思うと止まり切れないためグラヴィティ・アクセラレータによる減速が必要であり、4時間分の加速を無理なく減速させるためには概ね同じ程度の減速期間が必要となる。
グラヴィティ・アクセラレータを使用している勢力はぶっちゃけ太陽系くらいらしいという話をされたことがある――最も同レベルの保護星系の情報は入ってこないため不明だし、恐らく保護星系ごとに保護の条件が変わってくるはずだ。
このローテク具合を思うに、ぶっちゃけ使いどころさんがあまりにも微妙なのが原因なんだとは思う……1星系内小旅行をしたいならワープドライブのほうが便利だし――例えば1光速(凡そ毎秒30万km)で移動するなら250sec程度で到着する。
ただ、通常航行……つまり核パルススラスターを用いた加速などに比べて、グラヴィティ・アクセラレータの加速には利点がある。
スラスタ加速は、地上における車や航空機の加速時と同じく、加速度における圧力を感じることになるが、グラヴィティ・アクセラレータは機体や中のものやパイロットなども含めて一緒くたに"重力点"に向かって自由落下することで加速するので、加速度に比例した圧力を受けることがないのだ。
クッソ不便で銀河規模で見てしまえば圧倒的にローテクではあるが俺たちにとっては便利、というのがコイツの機能だ。
ともかく、この移動中は俺たちパイロットは基本的にクソ暇である。
宇宙における我らが愛すべき相棒たるタマヨリらAIは忙しいのだが、俺たちがやるべきことなんてほとんどどころか実のところ全くない。
何もないクソ田舎から大都会に出てきたピュアな若者よろしく、実のところ見るべきところなんて全くないに等しいクッソだだっ広い真っ黒な宇宙空間を半口あけて「ほへー」とか阿保みたいな声上げてみることくらいしかやることがないのだ。
「ちなみに、コルベットにワープドライブが積まれていない理由は、サイズの問題じゃなくてワープする姿を地球人に見られてはいけないからってだけよ」
「そ、そうなのか」
シルビアのぶっちゃけ話と、余りのどうでもよさに俺たちはドン引きです。
と言ってもそれほど難解なネタがあるわけではなく、リバースエンジニアリングだろうがなんだろうが、自力でワープドライブの理屈を解明して、自力で開発できるようになるまではその存在を秘匿する、というのが協定の条文の中にあるようで、シールドやらダークマター通信、ワープドライブなんかは宇宙で活動している一部の人間以外には秘匿されているということだ。
そのため太陽系内の比較的地球に近い場所、つまり光学観測が容易な領域における移動手段はグラヴィティ・アクセラレータになるので、地球製のフリゲート以上の艦にもグラヴィティ・アクセラレータは搭載されている。
各国宇宙軍も地球人にとってはオーパーツレベルの装備品である、系外勢力からの輸入品は一部使われていたりする。
しかし、ディスカバリーほどパイロット一人、艦船一つにコストをかけられる組織はないので、軍用艦船は俺たちにとっては廉価版みたいなものだ――ただし相手は軍で、こちらは傭兵あるいは何でも屋であるので、組織率や数っていう面では圧倒的な差がある。
ぶっちゃけると予算の問題で、内製できないパーツを組み込むためには系外勢力から輸入するしかないのだが、社員が個人で購入し所有する形態のディスカバリーと違い、組織の予算から捻出しなきゃならん軍ではそんな無茶はできないのだ。
そんなわけで、太陽系最大戦力を誇る組織てのはディスカバリー社だったりする。
『遊びに行ってる暇がなかなか捻出できません』
「我慢しろ、というか一応仕事中なんだよ、今」
タマヨリがブーイングをぶつけてくるが、気にしない。
俺は暇だがタマヨリは忙しいという理由の一つに、時速500万キロでデブリや小惑星にぶつかったら死ぬっていう当たり前すぎる現実がある。
人間にとっては高速すぎる速度域で、レーダーやセンサーから送られてくる情報を適切に処理し、進路に障害物があれば回避し、本来の目的地に向かう為の進路にまた再調整するという繊細なお仕事は、荒っぽいアラフォーのオッサンの手作業よりもAIのほうが安全安心というわけだ。
と言っても、タマヨリが自分だけですべての処理を行って、回避や舵角修正を行っているわけではない。
そもそも操船権は今、こちらにないというのもあるが。
例えばセンサー類はスカウト役であるセンサー・ブースターを積んでいるラーヒズヤ機のほうが上だが、量子コンピュータの性能がより高いフリゲート艦に乗っているシルビア機のほうがその情報の処理は得意だ。
しかし得意分野がバラバラなままだと情報の受け渡しが面倒だが、ネットワーク・アクセラレータを起動している俺の機体があるので、タマヨリ経由でラグなく情報をやり取りすることができる。
フリートで行動する利点は、この分散並列処理だ……コマンダーがメンバーの武装を指定するという理由はここにある。
「ハーヴェイ、コマンダーデビュー後はマジで大変だな。草葉の陰から応援するわ」
「勘弁してくれ……」
ちなみにルーキー組においてハーヴェイ"だけ"は暇ではない。
実際に決定するのは今回のコマンダーのシルビアなのだが、ハーヴェイにも俺たちが集め分析した結果が送られ、彼はずっとシミュレータ上でコマンダーとして活動しているのだ。
VR空間ならともかく、現実世界での判断ミスや遅延はフリートの死を意味し、そういう指導をする場合のシルビアのダメ出しは簡潔かつ火の玉ストレートであるので、死ぬほどこってり絞られていることだろう。
彼はきっと、ストレスからハゲてしまうだろう。
だが安心してほしい、時は西暦2222年、ハゲに対する有効な治療法は……実のところいまだになかったりする。
もちろん毛根の細胞が死滅した後で健康な毛根の細胞を移植するという対処療法的なものならばある。
どこでどうひん曲がったのか知らないが、地球では自然にハゲるのであればハゲさせるのが一番いいんだよ、というナチュラル志向クソ野郎が幅を利かせていたりもする――もちろんそんなナチュラル派閥の人間にハゲてる奴はほとんどいない。
「さーて、慣性移動中にやっておくことは、本体を保護カプセルにぶち込んでアンドロイド体にダイブしておくことくらいね。服くらいは着ておくように」
「アンドロイド体とはいえ全裸で寝かせる習慣はねえよ」
「「「「えっ、そうなの?」」」」
「えっ?」
びっくりした、俺意外全員全裸寝派閥の住人だったよ……いやパジャマ着たりするわけじゃないが、それでも全裸寝したことねえわ。
コックピットを出ると通路がある。
といっても、SF映画やアニメにあるような広い通路やら廊下ではなく、下手なワンルーム・アパルトメントよりも酷い、4-5歩程度で往復できる小さな通路である。
そのまま正面奥まで行けばカーゴホールドに、左に入ればプライベート・ルーム、右側のドアに入れば保護カプセルだ。
保護カプセルは緊急時に排出され、中に人を詰め込んでおけば(そして運が良ければ)生還できたりできなかったりする。
保護カプセル内に入り込んで、謎のゼラチン質が充填されると、肉体はほぼ冬眠状態のような形になるとされていて、長期間ほっといても餓死したり病気になったりはしないらしい。
カプセルの保護システムが完全に稼働する前にフルダイブしておけば、パイロットの肉体が冬眠状態入ってもダイブが途切れることもなく、完全無欠のリラックス状態にあるため、脳負荷もかなり低減されるとのこと。
そのため、宇宙空間で活動するとき、俺たち地球人というかディスカバリー・パイロットはほとんどの時間をアンドロイド体にフルダイブしたまま活動するという形になっているそうだ。
もちろんこいつも星系外超テクノロジー類のうちの一つである。
ともかく、ネットネトのゲル状の何かに包まれる前に服を脱ぎ去り、汚ねえボデーを晒してカプセルの中に入り込む、狭い。
中にあるのはボタンが一つ、つまりこれが起動ボタンであり、コイツを押してしまえばオッサンは無事長い眠りにつくことになる。
解除方法は、外部から解除キーをネットワーク越しに転送するしかない。
外装がぶっ壊れない限りは、中のおっさんは安全であり、外装は……まあ艦船や爆薬で破壊しようと思えば十分にできるレベルだ――故に死なないわけじゃない。
ともかく、ボタンを押すと、カプセルの入り口が閉まっていき、ケツのほうからひんやりとしたネットネトのゲル状の何かが充填されていきとても気持ちが悪いし、これ以上詳細に描写しようにも俺はアラフォーの冴えないオヤジであるので、描写に耐えないのはわかっている。
速やかにアンドロイド体にフルダイブすることにしようか。
『おはようございます、今日も可愛いですね。知らんけど』
「お前の語彙はどこから引っ張ってきてるんだよ」
身長150cm少々の小柄なボディに乗り移った元小汚いおっさんは、ミステリアス・ナデシコ・キュート・ガールに変貌している。
流石にドロングでクッソストレートな艶のある黒髪は宇宙空間では不便極まりないので、ショート・ボブに切ってある――ガラッティのアドバイスは非常に参考になった。
といっても、おっさんボディ時のような短髪に比べると、やっぱり髪の毛は跳ねたり跳んだりするのだが、実体のときに比べてもアンドロイド体ではそういうのも気にならない――これもガラッティからの情報だ。
もしもメンバーが野郎だけだったら、これらのアドバイスはシルビアから貰わなきゃならなかっただろうし、そうなる運命だった俺の世界を思うと気が滅入るが、そもそも教官がシルビアでなければこんなことにはならなかったはず。
おそらくありとあらゆる並行世界にいるであろう俺の中で、俺の運命が一番悲惨なんだろう。
きっと、そうに違いない……ほかの俺はもっとマシな人生を送っていると信じたい。
「ヤマトだ、今戻った」
「声可愛い!」
俺はお前のお人形さんじゃないだ、ガラッティ。
散々世話になっているけど、そこを我慢するつもりはねえぞ。
ミルキーウェイ秘密協定と保護星系 その1
初期宇宙進出惑星以下の惑星文明に対する攻撃的なコンタクトを禁じる協定で、ミルキーウェイのほとんどの勢力が、その主義主張問わず加盟している。
これは、ある程度以上宇宙に進出できるような勢力は頭が悪くないということを示していて、1種族で銀河全部占領なんて無理ってことがよくわかっている(つまり、多様性が必要である)からである。
その昔は惑星丸ごと奴隷化なんてしたりもあったそうだが、正直"奴隷"というものの生産性が死ぬほど悪いことなんて星系の枠を飛び出るような文明なら誰でもご理解可能なので、当然の帰結と言える。
逆に言えば、星系の枠から飛び出し始めた文明が調子に乗ってはっちゃけて自爆して滅ぶなんてことも多かったので、それじゃ困るということで"保護星系"を設定する必要性にかられたということでもある。
我々よちよち歩きのベイビーちゃんたる地球人が宇宙の常識を学ぶまで、惑星としての勢力としてではなく個人として宇宙で自由に遊んでよい、と許可された……というのがこの協定の基本的な概念であり、詳細な制限や優遇事例は該当する保護惑星と、そこにコンタクトし交渉する主要勢力の主義主張によって多少(宇宙規模の誤差範囲)は異なるが、ベイビーちゃんたる保護惑星の種族が他との違いを知るチャンスは銀河のサイズ的な意味であんまりないと言える。




