ミサイルへの憧れと、知ってしまった現実
そういえば、前回「画像・映像」用のダークマター通信用設備があるといった。
ダークマターを震わせることで音声通信を実現しているわけで、画像・映像とどうつながるかというと、存外アナログな手法を用いていて、モールス信号に見立てた0と1のビット表現でダークマター通信を行うことで実現している。
何光年離れていようがすぐ隣にいるかのように通信が可能なため、距離による通信ラグはないが、画像や映像をモールス信号型ビット表現にして送信するという段階でのラグ――というよりは送信作業か――は避けられない。
結局のところ何故音声と画像・映像の送受信装置が分かれているかというと、クッソ大量かつ超高速で流れてくるビット表現型のモールス信号を聞かされ続けるのは、やっぱツレェわ……というところに凝縮されてるんじゃないだろうか。
「あっちもこっちも非地球製だ、そりゃ1隻のコルベット船が目玉飛び出る値段になるわけだなあ」
『地球各国の宇宙軍1隻の値段は完全内製なのでそれほどでもないのですけどね』
幸か不幸か、グラヴィティ・アクセラレータの技術は地球独自開発だと言われている。
機体のオーナー認証登録は簡単だ、言ってしまえばアンドロイド体を登録するのとさして変わらない。
I.E.S.のIDは接続時に機体側に登録されるし、二重認証として備わっている生体認証のほうは、シートに座っているだけで終わるからだ。
生体認証のほうは、保護カプセルかパイロット・シートのどちらでも機能するため、アンドロイド体で活動するにしても不便はないし、I.E.S.に関してはアンドロイド体の体内に埋め込まれているので常時接続状態ということもあり、こちらも不便もへったくれもない。
ただ、タマヨリとリンクした時同様、機体名登録というエベレストよりも高い山を迎えることになってしまった。
機体名は主にステーションなどの宇宙上での拠点管制とやり取りするために使うもので、最悪機種名+ロットナンバーでも構わない。
しかし、地球全土に進出しているカフェ・チェーンや日本にある油ギトギトのラーメン・チェーン店すらドン引きするような呪文を言う羽目になるため、よほどひねくれた大馬鹿野郎でない限りは機体名を登録する。
だいたい、管制側もAIではなく人間が基本的にはやるもので――AIは提案できるが決定はできない。命令されたことは実行できるが己で判断し実行はできない。ロボット三原則たるアレはこの時代でも生きているというのが理由。
呪文をお互い言いあうのも大変だ。
『なんかすごい名前を付けましょう、超かっこいい奴』
「やだよ、これルーキーシップだぞ。まあ宇宙船だし"流星"でいいか。燃え尽きないようにだけは気を付けないといかんが」
「”ナガレボシ”ですか。儚い一瞬の光にならないといいですねえ』
なるべくなら長生きしたいが、俺の能力じゃ長生きできる気がしねえしなあ。
ポカミスで太陽に突っ込んで消し飛ぶ最後がありありと浮かぶぜ!
そうやって初期登録作業を終えると、ゴーグル・モニタにフリートへの招待を示すウィンドウが表示されるのでAcceptする。
「オッケー、じゃあミッションのブリーフィング始める前に各自の機体の情報送っとくから確認しといて」
「あいあいさ」
シルビアの無線ボイスに続いてずらっと文字列がモニタ上に並んでいく。
こういうのが好きなやつは好きなんだろうなあと思うが、俺は何ができるかだけ分かればいいよというテキトウ民族なので細かい数字はどうでもよかったりする。
ジェネレーターは核融合炉で、これはまあ地球製ならどれでも同じだろう……コイツの出力は15MWとなっていて、ソイツが順次艦船に内蔵されているキャパシタに蓄電されていき、ソイツを使って船内の俺が色々な機能を扱えるということだ。
現代地球上で使われているものに比べてもサイズといい出力といいかなり高性能で、数百年前に使われていた核分裂反応炉と比べれば文字通り"桁違い"であることがわかるとおもう。
コルベットサイズの艦船にとっては十分な性能といえるが、コイツで戦闘しようと思うとヤハタ魂的に全然足りなかったりする。
シールドリアクターが1基にシールドブースターが1基内蔵されており、若き専属整備士が言っていた通りプロジェクタイルに最適化されているが、過信はできない。
コルベットに搭載できるリアクター出力なんて雀の涙程度のもので、ブースターをぶん回して強度を上げようにも、今度は出力不足で数十秒でシールドシステム自体がダウンしてしまうことになる。
主要動力である核パルススラスターは2基で、それぞれにアフターバーナーが積まれている……こいつもエネルギーの枯渇を早める要因のうちの一つだ。
姿勢制御や方向転換に使うサイド・スラスターも各所に配置されている。
武装は、電子カタログやこの間の受領の時には見られなかったものが追加されている……というか、レールガン・タレットが機体上部の1基に減らされている。
変わりに機体下部は電波式レーダーを阻害・欺瞞するECM装置がそ1基、もう1基はネットワーク・アクセラレータとかいう謎の物体が、右翼には追尾式ミサイルの追尾性能を阻害する、ミサイル・ガイダンス・ジャマー、左翼にはセンサー・ダンプナーというロックオン妨害装置がついている。
もちろん、例の通信ボックスが多数積み込まれているし、AIが同伴できるように専用の量子サーバーも1基積み込まれていて、一応プライベートルーム的な場所はあるが四畳一間って感じだ。
倉庫はこれまた猫の額かうさぎ小屋みたいなもので、配送業や輸送業をやるには厳しすぎる……まあ宇宙のサイズ感を考えればこんなローテク船で宇宙運輸業やりたくないが。
なおその分……かどうかは知らないが、ヤハタ・スピリッツを感じさせることに弾薬庫だけはロイヤル・スイートって感じだった。
「んー、役割分担の一環かこれ。所謂サポート・シップだなあ」
「その通りでございます。それぞれ役割もたせて、それに合わせて兵装つけてるからちゃんと使い方覚えておくよーに」
どうでもいいけどこれ、兵装をフル稼働させたら20秒以内にキャパシタ枯渇してしまうのでは?
『正確には13秒ですね』
「……やったぜ」
もっとも、フリートで活動する以上好きにぶっぱしていいというシチュエーションなんてないので、指示に合わせて使うだけだ。
俺の武装は完全に、宇宙で活動する敵対勢力用のものになっているわけで、使う機会自体がないといいのだが、こればっかりは文字通り運次第って感じだろう。
その後、メンバー間で兵装の話をするが、それぞれ役割が違うようだ。
シールドやスラスター、アフターバーナーなんかの種別や出力は同一で、全員同じように飛べるっていうのは教科書通り。
ソロで飛ぶならともかく、少人数のフリートで飛ぶにあたって遅すぎる艦や早すぎる艦がいるというのは結構不便で、基本的にはある程度揃える……というか基本的にフリート・リーダーが「この船で来い」と指定するものらしい。
変わってくるのが、タレット・ハードポイントに組み込まれる各種兵装で、俺が電子戦装備、ガラッティはアタッカーの役割なのかレールガン・タレット5門積みという漢らしい奴。
ラーヒズヤはタレット・ハードポイントにセンサー・ブースターを2門組み込んでいるスカウト仕様で、ハーヴェイは2基が狙撃用の長砲身レールガンで、残り3基がなんとミサイル射出管だった。
「ミサイルはイイ……なにしろ電力を食わない」
「そりゃいいな、ミサイル至上主義者になりそうだ」
地上で暮らす分には絶対不便しないであろう15MWの電力供給能力は、宇宙においてはないに等しいと言わざるを得ないものだ。
宇宙におけるミサイルは、確かにレーザーどころかレールガンよりも初動の弾速は劣るのだが、推進剤が続く限り加速し続ける(それも遮るもののない真空環境だ)点や追尾をする点など、見逃せない利点がある。
それでもデメリットというべきものは、ある。
「カーゴの空きがない。物を運ぶ仕事をするためにミサイルを降ろさにゃならん」
「「「いかんでしょ」」」
ルーキーシップは小さいので――小型の全翼機程度のサイズ感、所謂倉庫、トランクルーム、あるいはカーゴ・ホールドと呼ばれる場所の容積は基本的に小さい。
弾薬専用の弾薬庫は別途あるのだが、そこに積みきれない場合はカーゴ・ホールドから順次コンベアで弾薬庫に転送することによって補充する形になる――今回でいうならばとにかく容積が必要になるミサイルだ。
ヤハタ・スピリッツにより優遇されているとはいえ、ミサイルマンになりたい場合に必ず立ちふさがるこの欠点だが、ミサイル戦闘艦とかであればカバーできる。
しかし、"太陽系内で活動するための"ルーキーシップにはそんなことは求められていないので、こういうことになる……らしい。
光学兵器とかいう常識的に考えても電池バカ食いな兵器を宇宙で自由に使う為の発電装置を捏造しなければいけなかったので未実装です。
まあ世の中光学兵器だけになったら対処も楽ですからね仕方ないね。




