どうせならよくわからなくてもとにかく便利で無双できる世界に生まれたかったオッサン
二章章開始なので、社畜適正はともかく宇宙でやっていくために必要なものを捏造するため、軽く説明文的なアレです。
そんなわけで、最後の休日はVR空間でハッスルするだけの休日になった。
休日が休日になってないってのはここに来てからもそうだし、ここに来るまでも大して変わってないから問題ないな……俺の出自はブラック社畜族なんだ。
結果は、俺にとってはソコソコという印象だが、それはまあ才能とか能力とかそういうのがあるので。
一般的に言えば芳しくないとかそういうレベルに落ち着くのだろうなあ、この体を使いこなすのに現実時間の8倍に引き延ばされた状況下で訓練できるとはいえ、2日分ではどうにもならん。
とはいえ、80時間みっちり使うのであれば、とっかかり程度の手ごたえはあってしかるべきなのだろうか、とは思う。
俺っすか、それでとっかかりを得られるのであれば地球上でも全然余裕で暮らせてたでしょうねえ!
本当なら現実世界でも体を動かすべきなのだが、リアル・トレーニングは本体のほうで行いたい。
ここは宇宙空間で、地球人は地球の重力に最適化された生き物である。
ステーションのトレーニングルームでステーションのエネルギーをたくさん使って発生する1G環境下での筋トレは欠かせないというか、マジでやり続けないとやばいことになる。
ここにいる間はそれでもまあ、なんとかなるっちゃなるのだが、俺たちパイロット(そう、ようやく名乗れるようになった)はステーションに引きこもっている時間よりも宇宙空間にいる時間のほうが長いのだ。
故にズンドコ筋力が落ちていくことになり――それがラーヒズヤの悩みでもあるのだが、この時代においても宇宙に出た人間が地上に帰った後のリハビリは必須である。
国がサポートする公的な宇宙飛行士や宇宙軍パイロットなら別にそれでもかまわんのだろうが、俺たちはサラリーマンであるのでリハビリに使ってる時間なんてないわけで、そのため地上に戻るなら宇宙空間から地上のアンドロイド体にフルダイブして疑似的に帰郷という形をとるというわけだ。
リハビリ期間をなんとかかんとか工面して、自費で地上に帰ることも可能といえば可能であるが、普通に考えていただければわかると思うがとても非効率的である。
この会社はやった分だけ支給という給与体系なので、やろうと思えばいくらでも休暇をとること自体は可能なのだ。
前置きが長くなったが、今俺は生身で我が愛機となるYHI-100の目の前にいる。
支給品ではあるが、所有権は俺個人に設定されており、俺個人の財産に等しいこの美しさよりも実用面を重視しているルーキーシップの武装は、造船所のドックにいたときとはだいぶ変わっているように思える。
今俺がいるのは、ステーションの個人ドックであり先日行った造船所のドックではない――ディスカバリーの正規パイロットにはランクに応じたサイズの個人ドックが用意されていて、そこには他人が立ち入ることは基本的にできない。整備が必要な時は個人ドックから整備ドックに転送する必要がある。もちろん、転送はワープとかそういうのではなく、ドックの床ごと物理的に移動するだけだ。
そんなわけで、件の若き専属整備士と顔を合わせることもなく、俺の実態が冴えないおっさんであるということはいまだにバレていない……是非とも誤解を解消したいのだが。
「じゃ、それぞれ機体の初期登録を済ませてから始動してね、そしたらフリート・リンクを行って、そのあとミッション・ブリーフィングするから」
「あいあいさ」
I.E.S.を通じてシルビアから音声通信が送られてくる。
宇宙空間での通信は、I.E.S.だけではなく、機体そのものにも通信装置がある――電波の速度は1cでしかなく、宇宙空間上というクッソ規模がでかい世界になるとその程度では不十分である。
そこで使われるのが、太陽系外の技術であるダークマター通信だ――便宜上太陽系勢力であるディスカバリーではダークマター通信と呼んでいるが、当然正式な名称があり、地球人がその正式な名称を正式な発音で喋ろうと思うと舌を噛みきって死ぬからそう読んだり呼んでいるだけだ。
このロマンあふれる名称の通信技術は、一般的な地球人に(投げやりに)説明するのであれば量子テレポーテーションを使った通信技術といったほうがウケがいいのかもしれない。
量子テレポーテーションはぶっちゃけて言うと便利でも何でもなく、あっちにある粒子がこっちを見てみたらあったよ程度の話で、複雑な何か(情報や物質など)を転送できるようなものではないため、この理論にロマンを感じる意義はないし、実用的な意味もない。
それでも量子テレポーテーションを持ち出したのは、ダークマター通信はクッソ乱暴に言うならこっちで発信すると同時に、相手が受信するというものなので、イメージ的には全く同一といっていいからだ。
さて、一口にダークマターと申し上げますが、一口に申し上げる理由は地球人にとってダークマターとは何ぞやが未だ解明できていないからで、解明できていなかったり観測できていない何かあるいは沢山の何某かをひっくるめてダークマターと呼んでいて、俺たちが呼ぶダークマターは、当然の権利のように一種類だけではなかった。
ダークマターには質量が正数のものもあり負数のものもあり、ゼロのものもあるんだとか何とかで、ミルキーウェイ内で判明しているとされているものだけでも多数の物質があり、実のところ全ての宇宙にびっしりと敷き詰められているものらしく、その中の数種類を使って通信をしているわけだ。
余りにもたくさんの種類があるが、こいつらに共通する特徴としては、通常ダークマターは他の物質に干渉せず、干渉もさせないというものがあるだろう。
そんなロマン技術であるが、一番俺たちでも理解しやすいのは音声通信だろう。
音声というのは、俺が知っている限り、気体の振動を鼓膜がキャッチすることで相手方に伝える伝送技術であり、何かが震えて鼓膜まで震わしてくれるのであれば音声として成立するわけで。
宇宙中にびっしりと隙間なく敷き詰められているダークマターを震わせることができれば、そしてそのダークマターの振動を鼓膜あるいは鼓膜の代わりとなる何かを振動させることができるのであれば、それを音声通信として成立させることができるのだ。
こいつを開発したのが、ミルキーウェイの知的生命体勢力の中のうちの一つで、俺の機体にも積まれている透明なボックスの中に詰め込まれている、透明すぎて全く視認できない何かである――技術者の話によると、保護カプセルに充填されるゲル状のものに似通っているらしい。
艦船にはダークマター音声通信用の通信ボックスに加え、ダークマター映像に画像通信用のボックスもあり、通常の電磁通信ボックスも積み込まれていて、通信用のものだけでも本当に沢山の機器があるのでめんどくさいが、まあ通信はとても大事なものなので仕方ないだろう。
もっともその通信を行うのにどの機器を使うのが最適かっていう選択はAIがやってくれるのでこちらが不便を感じることはない。
ともかく、ダークマター通信だけでも音声と映像、画像で別れていることからわかるように、音声と映像・画像で干渉するダークマターの種類が異なり、ボックスに詰め込まれているゲル状の何かの種類も違うそうだ。
そのゲルは特定の手順に従って扱えば、特定のダークマターに干渉できるものであり、ボックス内にある機器がゲルを"振動"させることにより、ダークマターを震わせることができるそうだ。
丁度、机に敷き詰めて並べたビー玉の端っこを押すと全てのビー玉が動き出すように、ダークマターを押してやると、距離に関係なく全方位にその衝撃というか振動が伝わることになる。
ダークマターの振動に合わせて受信側の通信ボックスの中に充填されているゲル状の何かが振動して、それを機器が拾って音声や画像、映像に変換するというのがこの技術の内容となり、話を聞くだけならものすごく単純明快であることがわかるはずだ。
特定の誰かに通信を行うにはちょいと不便なような気がするが、そこは受信キーと送信キーというものが役割を果たしてくれるそうで、それらの暗号化キーが一致しないと受信、あるいは変換をしてくれない。
例えば、太陽系共通の送受信キーがあり、ディスカバリーの送受信キーもあり、今回でいうなら、フリートの送受信キーも設定することになるだろう。
地球人にわかりやすく言うなら、ネトゲのパーティ・チャットやギルド・チャットとかそういうので、星系共通キーはシャウトめいていると考えればいいのだろうか。
この送受信キーは当然、個人間でも設定することが可能で、フレンド・チャットやウィスパーなどと置き換えればより理解しやすくなるはずだ。
ここまでくるとなんとなーくご理解できるかと思うが、通信という手段を扱う限り、傍受という可能性をゼロにすることはできない。
時代や技術が進むごとに暗号化技術はズンドコ進化していて、確かに傍受は難しくなってきているのだが、それでもゼロにはならない。
細かいことはAIがやってくれるのだが、通常は欺瞞情報を含めて複数の通信手段で同時に送信して対応するそうだ。
俺たちにとってミルキーウェイはあまりにも広く――それどころか太陽系だって俺たちには過剰で、ミルキーウェイにとっても宇宙はあまりにも広いが、無双可能な技術というのはいまだ見つかっていない。
どうせ生まれるなら、よくわからんけどとにかく便利な技術がたくさんある世界に生まれたかった……そう思いながら俺は初期登録をすべく機体に乗り込んだ。
帰宅が23時超えるようになってきてどうにもならんので来週はお休みします、土日までは投稿シマス(休みとはいっていない)
投稿前の再チェックをする暇すらないのはヤバイですし、D&DでDMやってる暇すらないのでなおヤバイです。
残業がクッソ長いのも休出があるのも(おちんぎんに反映されるから)別に構わんのですが、ボッチ生活だから洗濯ができなくて着るものが無くなるってのが一番ヤベェかも(痛恨感




