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我が可能性は膨張する宇宙が如し

「はいお疲れー。んじゃ機体の受領に向かうわけだけど、その前にもう1個会社からプレゼントがあるからそれからね」

「ういー、お疲れさまっした―」


砕けすぎた表現によって思いっきり省略されているが、我らが愛機をステーションのモジュールにある造船工廠に受け取りに行くことになるわけだが、金属やら塗料含む薬剤やらを使いまくる場所でもあるので、相応の準備が必要ということらしい。


「うんうん、よくわからないけどしっかり理解しているという気がしたから細かいことは省くけど、要するにアンドロイド体のことね。3Mとかアタシが使ってるみたいなの」

「あんたそれアンドロイドだったのかよ」


そらそうよというわけのわからない省略言語での返答をされた。

もっともパッと見では、それが本体なのか義体なのか判別できない太陽系外のクソッタレ超技術による賜物の一品なので、俺の目がフシアナサンというわけではないはずだが。


「ともかく、各自の部屋にコンテナボックスが届いてるから、その中のアンドロイド体とリンクしてからダイブ。アンドロイド体でこの部屋に戻ってくるように」

「「「「わー、えすえふのせかいだあ」」」」


これだよこれこれ、現実じゃお目にかかるとは思ってなかったクソッタレ超技術、現実世界の別の存在にフルダイブの初体験だこの野郎。

VRゲーもある意味じゃゲームサーバーにフルダイブしてるから原理的には全く同じで、地球上でも既に可能な技術であるっていう理屈はわかってたが、地球じゃ人間と見分けがつかないアンドロイド作る技術はまだないからなあ。


『ヤマトのアンドロイド・ボディーですか。楽しみですね』

「楽しみもクソも、自分と変らんモノが見えるだけだろ……」


そんなわけで自室。


シルビアの言葉の通り、部屋のど真ん中にデデーンという擬音が出てきそうな御立派なコンテナが1つ置かれていた。

俺は自分自身をめでるという習慣がないので、自分そっくりなオッサンが増えると思うと少し気持ち悪いなあと思いつつコンテナをあける。


『「罰ゲーム!……そうきたかー」』


コンテナをあけると、全裸の俺……ではなく、身長は150cm少々だろうか、俺と比べるべくもないレベルで整っているジョーモン・フェイスな色白で細身の、ハイティーン程度と見られる年齢の女性体がちょこんと座っていて、その脇には大きな段ボール箱が1つ置いてあった。

一つ問題があるとすれば、その女性体アンドロイド・ボディーは全裸であり、山から谷まで余すところなく俺の目の前にハロー・ワールドしているってことだろうか。


なお山がどこで谷がナニかという話はよしておくとしようじゃないか……ここは健全な宇宙ステーションなんだ。


『健全なHENTAI・ジャパニーズであるヤマトは今、スーパーハイテンションモードになってもいいと思います』

「何を言い出してるんだこのHENTAI・AIは。これがガチなのか冗談なのかはわからんが、この姿がガキだってことだけは確かだし、他になさそうだしこれは俺自身ってことだろ。自分に欲情できるほどいい性格してねぇよ」


とはいいますが、人生いろいろと諦めきったオッサンは大抵の場合イザというときにヘタレるのでその一環かもしれないが。

いずれにせよ人形に欲情する趣味はなかったので大丈夫だろう。


この年若そうに見えるアンドロイド・ボディーをションベンクサイと表現するにも、そもそも人工物なんだからションベンクサイわけがなく。

タマヨリにそれを申し上げたならば即時ツッコミを受けるとともに「なんなら嗅いでみたらいかがでしょう」などと言われるのが明白なので、絶対にそれを言ってはいけないわけだ。

何故ならば、仮に誰もいなかったとしても、その絵面がやばすぎるからだ。


ではアラフォーにして枯れているかというとそんなことはないと断言でき、俺のエロス・パウアーは平均的ジャパニーズ並なのは間違いないだろう。

つまり、ドヘンタイ・クラスだ……色々と取り繕う文言を並べてみたが、ここだけは真実を皆様にお伝えしたかった。


『まあ、ともかくネットワーク・リンクをして使用者登録をしましょう。そしたらもう逃げも隠れもできなくなります』

「そうするしかないとわかっているが、堀を埋めないでくれないか」


アンドロイド・ボディー1体で、ちょっとした国の国家予算くらいのお値段になったりするので、こんなもんいらねーよと返品するのも勇気がいるって寸法である。

これはなかなかの罰ゲームっぷりであり、罰ゲームにこれを持ってきたシルビアを褒めてやらねばならないだろう……拳でもって。


「んー、リンクしようとして『ざんねん じつは じょーく でした!』って来るかと思ったらあっさり登録されちまったゾ。もうコイツでブリーフィングルームに行くしかないじゃないか」

『諦めましょう。シルビアの嫌がらせはいつだってガチなのです』


恐ろしい話だが、真理である。


さて、アラフォーのサエナイ・オヤジからハイティーン・ビショウジョにボディ・チェンジしてみた俺だが、この時点で非常に困ったことがあるとすれば、体格が違い過ぎて服がないということだ。

そういえば横っちょのデカい段ボールはなんだろうと開けてみると、沢山服が詰め込まれていた。

ゴスロリ的なドレスに、メイド的なドレス、ハイティーン・ガールが学校に行くときに着るような制服など様々である。


『より取り見取りって感じですね』

「まともな服はないのかちくしょうめ!」


そう、コレは罰ゲームなのだ。

しっかりとオヤジ・ボイスからハイティーン・ビショウジョのボイスに切り替わっているあたりマジでいい仕事してんなあと言わざるを得ないが、今の俺はそういうのを気にしている状況じゃない。

かといってわいせつ物を陳列されてしまう全裸で向かうわけにもいかないだろう、このステーションだって秩序を保つための最低限のルールってものがあるからだ。


「何が困るって声が可愛らしいハイトーンになってるってことか。まあこの辺りもゲーム慣れしてりゃわかるからいいけどさ」


可愛らしい姿でアラフォーオヤジ・ヴォイスってのも困るが、"我が声"ながら違和感が凄まじい。

暇を持て余した神々の遊びとでも名付けるべきであろうこの工芸品たるアンドロイド・ボディーから醸し出される美少女オーラ感は、あんまり隙を感じさせない。

あえて"あんまり"と表現したのは、ゲーム世界だのアニメーション世界だのならともかく、現実で"完璧"だと違和感しかないんじゃねえかという印象があるが、この姿形からはそれを感じさせないからだ。


人種の違いがあるとはいえ、快活な魅力という意味ではシルビアに軍配が上がり、イケメン美女というカテゴリならガラッティのほうが圧倒的だ。

しかし、静かに真顔を保っておけば少しのミステリアスさと幼さを残しているこのナデシコ・ビューティーの顔は……誠に遺憾ながらハーヴェイのテンションが上がりそうだ。


『何さっきから変顔してるのですか』

「室内カメラで見るのやめていただけませんかね」


まあ、中に入っているのがアラフォー・オヤジの俺じゃなければ間違いなくジャパニーズ界では超絶美少女だろう。

内面がロクデナシではナデシコ・ビューティーも台無しというのは止むを得ない話だろう。

"フルダイブ"ができるならインターネッツワールドじゃなくてこうすればいいじゃない(なお技術力)、を思い立ったのでこうなりました。


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