表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/62

アンデッド・ハイは徹夜明けの匂い

今更ですが、1レベル作文書きということで、なるべく文章を簡略化(デフォルメ)するため主人公一人称で書いています。

書いてて思いましたが、確かに他のキャラクターのために進行を遅らせて数話割く理由がそこはかとなく理解できました。

このお話でそれやると簡略化した意味がないのでやりませんが。

「よく立つわねえ、進歩してるんだかしてないんだかよくわかんないけど、その粘り強さだけは尊敬できるわ」

「ムッハハハ、俺から諦めの悪さを取り上げたら何も残らんという自信だけはあるぜ!」 


いくつかの週末を過ごし、今は"今月"の最終日、Curriculum4だ――宇宙では地球のカレンダーは用をなさないため、俺たちのカレンダーは訓練初日を『day1の月曜日』としたカレンダーで動いている。


本日の俺は12回殺されていて、今が13回目の金曜日――まあ宇宙カレンダーなので、休日前は金曜日ということにしているだけであるが。

とうに同期3人衆はイモムシと化しておりピクリとも動かない状態、戦闘訓練での俺は毎度他よりも多くの死を経験しているが、あまりに死にまくったため一つの悟りの境地に至る場合もあることに気づいていた。

『アンデッド・ハイ』とでも言うべきだろうか、相変わらず最小限の防護機能しか働いていないこの仮想空間での死はとんでもないダメージを心に残すのだが、一定のラインを超えるとだんだんどうでもよくなってくるどころか調子がよくなってくるのだ。

ランナーズ・ハイと比較するのは失礼なので、テツヤアケ・ハイに近いとでも言っておくべきだろうか……消える寸前の蝋燭の火みたいなものだ。

現実的に考えれば、ストレスで頭がパンパンになって目の前のこと以外考える余裕がなくなる、というのが一番納得いく理由になりえるだろうか。


ただしヤケになって死にまくっているわけではないということはお伝えしたい。


理屈上では全員が最初から理解している『仮想空間での死は現実の死ではない』というのを、心が納得するまでにある程度繰り返す必要があるというだけのこと。

各種苦痛を思いっきり制限している民間VRゲームでは、こんな苦労をせずとも同じ状態になれるのだが、実際に痛くて苦しい訓練用仮想空間では、その域に達する前に心がへし折れてしまうのだ。

もちろん折れなきゃいいってものではないのは確かだろう。


もちろんこれは俺の中での理屈であり、このカリキュラムで死にまくって脳ストレス値が青天井状態になっている理由とは少し異なる。

俺がその理由を知るようになるのはだいぶ先だし、知ったころには、ここで脳ストレス値と格闘しまくった成果がばっちりと表れていたのは言うまでもない。


この仮想空間はステーションセントラルサーバを利用しているが、その前に俺の個人量子サーバを経由している。

座学で学んだアプリケーション開発能力を活かして、全員で集まっていろいろあーだこーだやった結果、訓練風景を録画できることに気が付いたので録画アプリケーションを作成したのだ。

もちろん日々ブラッシュアップしていき、最初は自身の視点のみだったのが今では俯瞰視点だけでなく再生中に自由にカメラを移動できるようにもなった。

死亡と死亡の合間に自分の動きをチェックしたり、シルビアの動きを検証したりと、このアプリケーションでやるべき仕事は本当に多い。


動画を見ていると我ながら自分の動きは情けないものがあり、あーしようこうやってみようという項目ばかりなのだ。

アンデッド・ハイはそうやって修正した動きをやってみようと繰り返し死にまくった末に行き着いた境地だが、結局アンデッド・ハイ状態になるために日々何度も死に続ける必要があるため、俺の能力不足が原因であることには変わりない。

心が納得しようが何だろうが、すごい痛いし苦しいし、死の間際の辛さなどもほとんど実体験として降り注いでくるため、毎日それに慣れるところから始めなければならないという効率の悪さがネックだ。


そんなわけで、シルビアの謎過ぎるムーヴ以外は詰将棋めいた手順が必要だがある程度は対応できるようになってきたところ――むろんこちらは一度も攻撃に成功したことはないが。

今もちょうどほら、裏拳を屈んで躱して逆手から繰り出されるナイフをこちらのナイフで受け止めた……と同時に来る蹴りをなんとか後ろにジャンプしながらガードをして距離をとったところで、ナイフを持っているてと逆の手で銃をホルスターから抜いて構えたところだ。


「来いよヤマット、銃なんて捨ててかかってこい!」

「誰がテメェなんか……テメェなんかこわかねぇ!ていうか何で知ってんだこの野郎ぶっ殺してやらぁ!」


言いながら銃を撃つフリをして――動く相手に対するハンドガンでの攻撃はダメだ。

ただでさえ下手くそな俺が、片手で撃つなんて出来の悪いジョークでしかない……ので銃を構えたまま突進してみた。


前回はぶん投げたが、拾われて撃ち殺された。

それより前の話になるが、ホルスターからスリ取られて殺されたこともある。

今回は持ったままを試してみるが、そもそも戦闘開始前に拾われない位置にぶん投げるのが正解のような気がしないでもない。

もちろん近接戦闘をしようというのに有用な武器を投げ捨てるという行為が正解であるはずもないが。


ともかく彼女の繰り出す刺突を距離を詰める形でうまく回避しながら、胴に向かって一発ぶん殴るために手を握り締めて突き出した。

もちろん、ナイフを持っている手ではなく銃を持っている手であり、銃床を使うのではなくグリップを握り締めたまま銃口を当てるつもりで繰り出すのだ。

まず殴る先が頭部ではなく胴なのは、あんな動かしやすい部分を狙って当てられる技術があるならとっくに当てているということ。

ナイフで突くのも銃床で殴ろうとするのも一般的すぎるという理屈……あとは拳よりちょっとだけリーチが伸びる気がするので当たるといいなあという希望的観測だ。

 

「ヌッシャライ!」


俺が気合いと共に放った渾身の突きは銃口がシルビアの服に引っかかるだけで終わった。

むろんめげずにナイフを持った右手を乱暴に振って直後の死を避ける努力はする。

おかげさまでイケニエ代わりに捧げた俺の右手の指が何本かまとめてナイフでぶった切られるが、その痛みで力が入ったのか左手に持ったままの銃が火を噴いてシルビアの頬を掠めて血が噴き出るのを確認した。


「……マグレね!」

「その通りでございます」


死に慣れ始めたアンデッド・ハイ状態だからといって死ぬのが怖くなくなったり、痛みに鈍感になるわけではない。

そりゃ痛けりゃ痛い分だけ体は竦みますがな。


指が3本なくなった右手からはナイフは零れ落ちていて、もう銃をどれだけ乱射しても彼女には当たらないだろう……ずいぶんと小さく感じる手を見つめながら、これが手首ごと落とされてたら失血死ワンチャンだったんだがなあとため息をつく。完全に詰んだが素晴らしいことにこの訓練のルールに降参の文字はなく、この後の俺は当然のようにフルボッコされて死にました。


「ジワジワとなぶり殺しにしてくれるわーーー!」ってセリフをリアルに聞くことになるとは思わなかったよ――仮想空間上での出来事だけどな。


13回目の死の後、本来ならCurriculum5が待っているわけだが、本日は現実空間で専用AIの受領という形で行われるので脳ストレス値が振り切れていても特に問題はない。

それはそれで楽しみだが、休憩時間は脳みそが許す限り反省会の時間に充てている。


ハーヴェイが言うには、俺は適切な訓練を受けさえすれば割かしいい戦士になれるとのこと。

気合いだの根性だのそういう部分では狂気的といってもいいレベルだからもう十分だと評された。

必要な個所に必要な筋肉をつけるのは現実世界でしか成しえない。

しかし技術面に関しては仮想空間で事足りるので、自前で仮想空間を生成できればかなりプラスになりそうだ。


ということを言ったら全員が「嘘だろ?」って顔してたが何か文句でもあるのかね?

『仕事が消化しきれていないなら残業すればいいじゃない』はジャパニーズ伝統の悪徳なんだよ。

かといって1個完結させたくらいでは三人称視点で書く地力がつきそうにないので、別の物語を捏造するときにどうするかが悩ましいところです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ