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満月集会


春の大潮の夜

流しの下の銀のボウルの中の蛤たちは

台所の片すみで死を待つ運命を

恨むでもなく 嘆くでもなく

小さな やわらかな舌を

チロチロと 微かに蠢かせ

たおやかに口を開いて

ほのかなぬめりを帯びた

淡いことばを 紡ぎ出す


「小さなボウルに張られた水も 月に引かれて 騒いでいます

私の中にも 春のうしおが流れています

おお 姉妹たちよ 私は海から隔てられ ここを動けませんけれど

太古からの満月の夜の集会に

せめて 祝福のメッセ-ジをお寄せします

私の この ちっぽけな とるに足らない想いが けれど

今宵 私たちの夢に形を与える大きな力の

ほんのちょっとの一部になれますように!」



    その夜 どこか遠くの海で

    見渡す限り 潮が引き

    現れた 太古の浜辺

    (もしかすると それは 蛤たちの 吐き出す夢の 蜃気楼)

    濡れてなめらかに輝く遠浅の砂地に

    映る月影は 銀のヴァ-ジンロ-ド

    永遠に繰り返し 海と結ばれる花嫁として

    月の女神が やがて静かに 渚に降り立てば

    砂地のそこここから つぷつぷと

    小さな歓喜のため息が漏れる――



春の満月があんなにもなまめいて光るのは

あちこちの暗い台所から立ち昇る ひっそりと濡れた夢たちが

霞のように 空気に混じっているからなのだ

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