二駅の彼女
毎朝、通学の時に乗る電車で、二駅だけ一緒になる女の子がいる。
彼女の制服は、俺が通う男子校では人気が高い。
最初は何気なく彼女を見つけた事から始まった。
俺が電車に乗ると、いつも数人の友達が乗っている。誰からとなく集まって、ダラダラと話す。この前のテストの事や、昨日のテレビの話題ばかりで、大した事は話さない。この下らない時間の過ごし方が、案外好きだった。
ある日、いつもの様に友達と話していると、一人で本を読んでいる少女に目がいった。同じ高校生なのに大人びた雰囲気で、静かに佇む彼女に一瞬にして心を奪われた。髪をかき上げる姿に、少女と思えない色気があった。
それ以来彼女が下車するまでの二駅だけ、彼女を目で追う様になった。
彼女はいつも文庫本を読んでいた。自分たちの周りにはいないタイプで、どう話しかけたらいいか、きっかけが掴めないまま1ヶ月が過ぎた。彼女の世界が、そこにはあった。
俺は、勝手に彼女を空想的存在として見ていた。
学校が休みの日、CDと洋服を買いに渋谷へ向かった。
これが彼女とのデートだったらいいのに、と思う。
電車に乗り込むと、足が止まった。胸が高鳴る。
目の前にあの彼女がいた。運命なのかと勘違いを起こす。
しかし、私服の彼女は少し印象と違った。
オフショルダーニットにミニ丈スカート。ストレートの黒髪はそのままだったが、かき上げた髪の隙間から、ピアスが見えた。随分と制服との印象が違った。 本当に勝手だが、物凄い違和感を感じた。
すると、どこからか携帯の音が聞こえた。音の先を探すと、彼女がカバンからストラップ山盛りぶら下がった携帯が出てきた。
「はっ?ウゼ。マジねえわ。」
電車の中で、彼女が電話の相手に大声で笑っている。
思っていた彼女はそこにはいなかった。同じ渋谷駅で降りたが、もはや運命は感じなかった。
俺は、勝手に片思いをして、そして勝手に失恋した。
自分の馬鹿さ加減に泣けてくる。
もう、一目惚れなんて信用しない様にしよう。だから周りはいつも、俺を『単純バカ』と笑うんだ。イヤ、今俺は泣きたい。
目的のCDショップで欲しかったアルバムを探す。気持ちを盛り上げるCDを買おう。恋愛なんて気にならないくらい、充実した日々を過ごそう。アルバイトでもしようか。
バカな考えないが出ない様に、忙しくしよう。そう決意を固めた。
レジで会計を済ませようと、店員にCDを渡す。
レジの女の子が、CDを見て笑顔で俺に話しかけてきた。
「BULEENCOUNTっていいですよね。今度イベントやるんで、来て下さいね。」
俺は、単純な男だ。
この言葉で、『やっぱり趣味の合う娘がいいな』って思ったんだ。
笑うなら、笑え。
これが、俺だ!!!




