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23話 僕らは(欠けた後篇)

「友達」


 俺の頭の中で過った言葉は、まるで今までの俺の常識を覆すかのような言葉だった。

 さらに、今の光景が俺の友達という概念をおかしな方向に向けていた。


「ルカ……それは友達じゃない」


 おれは、ルカの傍まで歩み寄ると、優しく彼女の持っているそれを奪い取った。

 そして、ルカの顔を見ずに足元に落とした。

 ルカは俺の顔を見ると、なぜ俺がこんな事をしたのか、という顔で足元にあるそれを拾い上げようとした。


「お兄ちゃん……やめて、可愛そうだよ?」


 その可愛そうなのは、どういう意味なんだ?

 俺はそう思いながら、ルカの目を見る。

 ただ、次はそれをルカの手から無理やりもう奪おうとはしなかった。


「ルカ……」


 妹の目は、ドンヨリと生き生きしておらず、むしろこれから死にゆく者の目でした。

 周りを見渡しましたが、あの女の姿はなく、まぁ、あの時は俺としてもルカの方が最優先でした。


 俺は妹の腕を掴むと、人ごみを掻き分け飛び出していきました。

 ルカはされるがままで、先程のあれは何だったのか?、実は妹じゃないんじゃないか?と、何度も思っていました。だが、その考えもすぐ消されてしまいました。


「おい!そこの女と男止まれ!」


 後ろから、王兵が手に槍を持って走って来たんです。

 王兵は焦っていたのか、俺らの事を「男と女」などと呼んでいました。


 人数は4~5人程度で、距離もそれほどあるから逃げれば逃げれたはずでした。

 ですが、俺が逃げようとしたその時でした。


「かわいそう」


「え?」


 それは空耳ではなく、事実俺の耳で聞こえた妹の声だった。

 一瞬の事だった。突然一番ルカに近かった男が赤い花火のように弾けた。それは、数メートルまで広がり、俺の足元にまで飛んできた。


 すぐに、その弾けた物が王兵の赤い血と肉である事が分かった。

 鎧は粉々になっており、ただの砂と化してしまっていた。


「うぅ……うわわわぁぁぁああああああ!!!」


 一人の兵士が臆病にもそう叫び、ルカに腰に装備していた剣を振りかざした。


「消えちゃった」


 ルカはそう呟いた。

 妹の足元には、ただの肉塊。お世辞にも友達なんて言えるモノではなかった。


「あれが、君の妹かい?」


 腰の力が抜け、立てなくなってしまった俺の耳元であの女が囁いた。


「今、君の目の前で国を守る英雄たちを殺したあの子供が君の妹だって言うのかい?」


「何が言いたいんだよ?」


 俺は、恐る恐る後ろを振り返る。

 そこには、不敵な笑みを浮かべるあの女が立っていた。

 女は、俺を見下ろしニヤニヤと何やら、少なくとも良い事は考えていない顔をしていた。


「君は、親をどう思う?」


 俺は答えられなかった。


 いや、それ以前に、親というものを知らない俺に答えを求められるのはおかしな物だ。それにこの状況で家族を聞かされるのはお門違いだというものだ。


「家族というものを知らない私は、君達兄弟というものが正直のところ気になるんだよ」


「だから何だってんだよ!!」


 俺は、又意味のわからないその女の言葉に困惑する。

 前方では訳の分からない事が起こり、こちらではこちらで訳の分からない事が起こっている。

 俺の檻の中で生きていた人生の中で、説明のできない事が起こっており、俺にとって縁遠い事が俺に突き刺さっていた。


「だから見せてよ。私に」


 女は言葉を続ける。


「兄が妹を助ける。完璧な家族というものを見せてくれ」


 次の瞬間だった。女の背中から炎の翼が生えたかと思うと、女は一瞬で俺と妹を脇に抱えていた。

 王兵の姿はもうなく、いたはずのその場所には赤い血の花が何輪も咲いていた。


「お兄ちゃん?……この人…誰?」


「ルカ」


 俺は、妹の掴んでいる上半身だけの男の子を見つめる。

 未だ、母親にも死んでも会う事が出来なくなってしまった。俺が知らない人。その人にいつも当たり前かのように会っているこの男の子に俺は正直、嫉妬していた。


「君たちを生かすか殺すかなんて、私は興味ないんだよ」


 そして、俺たち兄弟を両脇に掴んだまま女は炎の翼を羽ばたかせ、上空に飛んだ。

 真下には、何が起きたのかと集まってくる街人が赤い花を中心に寄って来ていた。だが、やはり本能なのか、彼らはこれ以上近づかないて来なかった。


「お兄ちゃん?……新しいお友達」


 新しい友達が、死んだ二度と話すことはないだろう屍だとは、あまりにも皮肉で俺はただ頷く事しかできなかった。だが、俺は妹に合わせる顔などなかった。

 なぜこの女は、見ず知らずの俺たちを助けるのか、分からない。


「あなたは、誰なんですか?」


「どうせ、私が言わなくても知っているはずだよ?」


 俺は女の顔を見上げ、当然の質問を投げかける。だが、その答えは全く想像のつくものではなかった。

『知っているはず』。それは有名人か名の知れている人にしか言えない言葉だ。

 すると、妹は不審な顔で女の顔を見ると口を開いた。


「私たちを……どうするの?…止めてイヤ、怖い、お兄ちゃん何処?!」


 それは、まるであれの続きを見ているかのようだった。

 その時は、まだ俺は妹はおかしくなってしまったんだと、あの時のショックで記憶がこんがらがってしまっているんだと、そんな風に思っていました。


 女は黙って、俺たち兄弟を軽々と、まるで煉瓦を持っているかのような感じで笑っていました。


 そして……そして……あれ?

 あの後の事が……思い出せ……ない。なんで?


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