21話 僕らは(前篇)
全てはあれが始まりだった。
妹がまだ、まともだった1年前の時だった。
「お兄ちゃん!」
「なんだ?今日も友達が増えたのか?」
俺らはある孤児院で暮らしていました。
孤児院は王都から北に位置していました。
子供も数十人もいて、どれも兄弟や双子が多くでした。
「ルカちゃん!あーそーぼ!」
遠くからルカの友達が何人もルカの事を呼んでいました。
食事は特に貧相な物でもなく、誰も病気になる子供はいませんでした。
僕らがその孤児院に入った頃の記憶はありません。気が付いたらもうこれだけいたのかな?という感じだけです。
でも、子供たちは皆、片方が15歳になると出て行ってしまいます。
僕らは悲しくありませんでした。むしろうれしかったです。親が見つかったと、まだ僕らには友達がいると。
「センセー・・・僕の本物のお父さんは何処にいるの?」
ある日、友達が園長にそう言いました。
園長は笑ってこう答えました。
「君のお父さんはね、事故に遭っちゃって病院にいるんだよ」
「じゃぁ、なんで新しいお父さんを探してるの?」
友達は、首を傾げてまた質問を繰り返しました。
「あぁ!ごめんね間違えちゃった。君のお父さんはね・・・・・・死んじゃったんだよ。だから、君の貰い手を探しているんだよ」
その時の僕らは、その意味が分かりませんでした。
その夜、その友達は園長室に忍び込みました。
園長と話した後、彼は僕にこう言っていました。
「違うよ、僕のお父さんは・・・・・・お母さんと死んじゃったんだ。首に紐をくくって・・・・・・」
友達は園長の言っていたことに疑問を抱いていました。
僕は黙って、眠っている妹を横目に夜を過ごすことしかできませんでした。
その日の夜の事は今でもよく覚えています。とても、どんよりとした秋空でした。
次の日、友達は双子の弟と共に消えました。
園長は皆を広間に集めて座らせました。
「・・・君はね、夕べ新しいお父さんと一緒に新しい生活に旅立たれました。・・・君も皆に挨拶できなくて悲しいと言っていましたが、皆も・・・君の新しい良い生活を願ってくださいね」
違う。僕はそう思いました。友達は消されたのだと。誰かに連れて行かれたのだと。
妹は嬉しそうに拍手していました。皆拍手していました。
誰に拍手しているの?ねぇ・・・君に拍手しているの?
「先生!」
俺はつい、席から立ち上がっていました。
「・・・君は本当に新しい親の下に行ったんですか!?」
「どういう事ですか?」
園長は俺に笑顔でそう問いかけた。俺はその笑顔の目がとても恐ろしく感じました。
「いや・・・・・そういう事じゃなくて・・・・・・」
「アル君、・・・・・それとルカちゃん。後で園長室に来てくださいね」
「・・・・・・・・はい」
俺は、そう返事するしかありませんでした。
園長は、この孤児院は何か隠しているそれしか分かりませんでした。
「はい!それじゃぁ、解散!みんなよい子に今日も過ごしてね」
少しして、俺とルカは園長室に行きました。
入るのは初めてで、少し緊張していましたが、その大半は恐怖が混じっていました。
「アル君・・・あなたは何を知っているの?どこまで知っているの?」
園長室にはソファに男が二人座っていました。
「お兄ちゃん・・・・・」
ルカは俺の腕に捕まり、怯えた顔で俺を見ていました。
園長は自分の席から離れると、俺らの方に近寄って来ました。
「・・・のお父さんは、母親と一緒に自殺したそうですね。なぜ、あの時嘘をついたんですか?」
「あなたは、今年15になりますね。ちょうどいいわ。あなた、ここから卒園よ」
園長はそう言うと、ソファに座っていた男が立ち上り俺らに近づいて来ました。
そして、園長が俺に両手を乗せると、後ろ首にチクリと痛みが走り、その後すごい眠気に襲われました。
気が付くと、俺は暗い暗い部屋の中で寝かされていました。
腕と足が縛られていて、動けないようにされていました。
「此処は・・・・・・!?ルカ!大丈夫か!何処にいる!」
「お兄ちゃーーん!!何処ーーー!!」
横からルカの声が聞こえました。
横には、目を黒い布で隠されているルカの姿があり、泣いているのか布は濡れていました。
「気が付いたか?」
頭上からは、男の声が聞こえました。
それは、園長室で見た、あの男たちでした。
「此処は何処だ!ルカに・・・俺らに何をするつもりなんだ!?」
男たちは金属製の台車に何か金色の何かを二つ乗せて、持ってきました。そして、何処かに行ってしました。
しばらくして、白い服を着た女に人がやって来ました。
「!!・・・あんたが・・・・・・どうして・・・・・・」
そこにいたのは、園長でした。しかし、そこにいたのは俺らの知っている園長ではありませんでした。
俺は必死に腕や足をバタつかせましたが、硬く縛れて動けませんでした。
「君らの『力』はどんな物なんだろうな・・・・・・今回は成功するかな~?」
園長はその金色の何かを一つ持って、上に掲げランプに照らしていました。
「果実・・・・・リンゴ?違う、これは・・・・・・」
「金の果実、呪術者の端くれに君たちはなれるかなぁ~?」
ルカの方を見たが、未だ体中をバタつかせ、俺の事を呼んでいた。
俺は、「俺はここに居る!!」と何度も叫んだが、ショック状態に陥り俺のいう事を耳に傾けない。
園長は俺らのなってないやり取りを黙って聞きながら、その果実に何か言っていました。
すると、果実は細かく砕け、透明なコップに開けました。そしてもう一つにも同じことをしていました。
「あんた達、来てくれないか?実験の開始だ」
「うぃーーっす。あぁーー。今回で何回目っすかねーー?」
「さぁーー?成功よりも失敗の方が多くて憶えてないわ」
「ちょっとーー!ちゃんとしてよ!先代も含めたら、75934回目だって!憶えておいてよ!」
部屋の中に、知らない男の人2人と女の人が入って来た。男はどちらも先ほどの男ではなかった。
どいつも、目を金属の板で打ちつけられていて、どうして前が見えるのか不思議なほどだった。
「今回の実験体はこいつらよ」
「うぃっす!」「へーーい」「はいはーーい!!」
園長と女の人は俺の傍に寄ってきました。そして、ルカには男の人が。
3人は、園長にこの果実の事を聞いていたが、ここについて憶えていません。
「あなたは・・・・だれ?私をどうするの!やめて!来ないで!いやぁあああああああ!」
「ルカ!!おい!お前ら、俺の妹に何をしてる!やめろ!」
「お兄ちゃん!助けて!何処にいるの!?」
男の人の陰に隠れてルカの姿は見えない。
「さぁーー。口を開けてーー。おいしいおいしい果実だよーー」
女の人は、そう言い俺の口をこじ開けました。
そして、コップから口にそれを流し込み、無理やり口を閉じました。
「さぁーー。あなたは成功してくれるかなぁーー?」
女の人がそう言ったその瞬間、突然眩暈がしました。その後に、吐き気がして、気持ち悪くなって、力が抜けていきました。
そして、意識が消えるように僕は死にました。
最後に聞きたかったのは、こんな言葉じゃなくて、ルカの言葉が良かったなぁ。




