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20話 夢と逃走

 少女は夢から覚めた。

 そこは、誰もいなかった。何もなかった。暗い・・・暗い・・・闇の中だった。


「ここは・・・・どこ?」


 少女はドアを開けた。

 足元には、自分より少し大きめの足跡がある。

 少女は首を90度に傾げ、その足跡について行った。


「分からない・・・・私の・・・かわいそーな友達・・・何処ー?」


 森は進む度に暗くなっていく一方だ。しかし、目はすぐに慣れ、少女は足跡について行く。

 自分が誰とも分からない。たまに襲われる訳の分からない恐怖。家族がいた、いない、それもたまにあやふやになってしまう。


 自分の手をふと見る。


「また・・・居なくなってる。私の・・・・これで・・・何人?ねぇ!何人!私から!逃げてく!なんで?!」


 少女の恐怖心はさらにひどくなっていく。

 周りの木や地面が突然、消えた。


「私は・・・・いったい誰?」


 木は何もしないから好き。動物は動くから嫌い。私に何かしてくるから嫌い。人間は好き。私の友達が沢山いるから。でも気が付いたら消えてる。居なくなってる。

 少女は黙って、足跡をついて行く。


「待て!誰かいるのか!教えてくれ!あんたはまともな人間なのか!教えてくれ!」


 誰かの声が聞こえた。この声には聴き覚えがある、誰だっけ・・・・あ、お兄ちゃんだ。

 何処?お兄ちゃん?・・・私の友達・・・・返して・・・。


「違う!俺はやってない!妹・・・・そう、俺の妹が!!」


 お兄ちゃん・・・・何を言ってるの?誰と話してるの?・・・・・?

 二人のいる・・・。一人は私が見知った・・・・私の知っている人。もう一人は・・・・弱そうで、でも、あれより大きくて・・・立派・・・立派?・・・・・あれ?じゃあ私は弱いの?


 少女は九条の体から自分の体に視線を変えた。


 ・・・・・弱い弱い・・・・あれ?この体何?あれ?じゃあ私は・・・何?


「此処は・・・・何処?お兄ちゃーーん・・・何処ーー・・・・・私は・・・・だれーー?」


 少女は少年を見てニッコリ笑った。だが、少年は少女を見ると、傍にいた九条にしがみ付き、助けを請い始めた。


「止めろ!逃げろ!助けてくれ・・・あの狂った妹から俺を連れて逃げてくれ!」


 逃げる?・・・・・なんで?・・・・お兄ちゃん・・・・

 ふと、少年の傍に落ちているスコップが目に入った。


「お兄ちゃん・・・だったの?・・・私の友達を・・・・持って行ってたの・・・・全部・・・・私から奪ってたの?」


「違うんだ!これはお前の為なんだ!信じてくれ!」


 少年は急いで少女の説得したが、聞く耳を持たない。

 そして、少女の周りに小さい無数の半透明な球が現れた。


「許さない・・・。友達・・・返してよ・・・・全部!返して!」


 その瞬間、少女の周りにある1個が九条の下に飛んで行った。

 九条は何とか避け、少女を見た。その瞬間、後ろから凄まじい爆発音が聞こえた。


「何ですか!・・・・・これは・・・・・」


 音のする方を見ると、それが当たったのは木だと分かったが、九条が驚いたのはその状況だった。

 木の幹に円い穴が出来ており、今にも倒れそうな感じだ。


「とりあえずこっちです!逃げましょう!」


 九条は少年の腕を掴むと、急いで後ろに走り始めた。

 なんで、こうも面倒な事が降りかかるのか?さすがにここまで来ると、説明のしようがない。


「何なんですか!あの少女は!変な丸い奴で木が!」


「ごめん・・・だけど!頼む!今は妹から逃げることだけを考えてくれ!」


 二人は走って少女から逃げる。

 後ろからは少女から奇声を上げながら追いかけてくる。


 球は少女と同じように動くため、木にダンッ!ダンッ!と当たり、横に倒れていく。


「待って!・・・・・逃げないでー!・・・友達を返して・・・・私を一人にしないで!」


 光が見えてきた。

 森が開けてくる。

 九条は少年の手を握りながら、森を出た。


「コンラードさん!助けてください!」


 すると、今に走り出そうとする馬車の姿があった。


「おーい!遅かったじゃねえーか!もう出るから・・・・・て、何を連れてきてんだ!」


 九条と少年の後ろには少女が未だ追いかけてくる。

 そして、何発も半透明な球を打ち込んでくる。


「早く走れ!乗り込め!」


 コンラードは九条に手を差し伸べる。

 しかし、さっきから走っていた九条は今から走り出す馬車に届かない。

 やっとで届く!ってところまで行くのに、手がずれて掴むことができない。


「クソ!ジッとしてろ!」


 コンラードは九条の手首を掴むと、馬車に引きずり込んだ。


「返せぇーーー!!返せぇーーー!!」


 もう、兵士も馬も馬車も規則もクソもない。全員さっきまで休んでいてよかった。

 少女の体力が彼らについて行くわけがない。

 ついに、少女は走る事を止めた。


「ハァ・・・・ハァ・・・・逃げれた!」


「何を連れてきてんだ!お前は!ふざけてんのか!」


 コンラードは九条の胸倉を掴むと、殴ろうとした。


「ちょっと待ってください!俺が悪いです。俺が・・・・」


 少年が間に割り入った。

 コンラードは胸倉をしばらく握ると、目を閉じ九条を離した。


「それより、お前は何者なんだ?」


「はい、僕はアルと言います。今の・・・襲ってきた女の兄貴です」


 アルはそう言うと、頭を下げた。

 九条は急いで、アルに頭を上げるよう言った。


「こうなった原因・・・いや、あの妹は何なんだ?お前が対の存在なのか?」


 対の存在?

 また新しい言葉に九条は疑問を隠しきれないであった。

 そして、アルは口を開いた。


「僕らは、ある者達に実験されたんです」

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