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19話 アルとルカ

「おーい!ルカ!何をしてたんだ・・・・・・おい!お前何を持ってるんだよ・・・」


「あ、・・・・・あなたはだれ?」


「いい加減にしてくれ、お前の兄貴にそういう事言うな。それよりそれは何だ。どこで殺したんだ」


「これね・・・・かわいそうな人なの・・・・・」


 アルは森の一軒家でルカと暮らしている。アルは気が付いていた。彼女の危険性を。

 だから、アルは兄貴の責任として妹と森の中で暮らしていた。というのに・・・。


「これは・・・・王兵じゃないか。ここの近くを通ったという事なのか?」


「これね・・・・私たちと一緒なんだよ・・・・パパもーママもーいないんだよ・・・」


 狂っている。本当はこいつを置いて自分だけ逃げ出したい。だけど、駄目だった。


「なぁ、お前はなんで・・・・・物を壊すんだ?人を殺すんだ?」


 アルはいつも通り、ルカから死体を取ると、森の奥へ歩く。


「どこへ持っていくの?・・・・・・私の、私たちの友達を・・・・・また捨てるの?」


「なぁ!気が付いてくれ!昔はそんなじゃなかっただろ!思い出してくれ!」


 アルはルカの両肩を掴んだ。

 しかし、彼の言葉は彼女に届かない。彼女の視線の合わない目がそう言っている。


「あなたは・・・・だれ?私をどうするの!やめて!来ないで!いやぁあああああああ!」


 やばい、こうなってしまっては手の施しようがない。

 彼女の周りには半透明な球が見えてきた。


「落ち着け!あいつらはもういない!だから!ルカァ!」


 彼女は頭を抱え、少女とはおもえないほどの悲鳴を上げる。

 球は次第に大きくなり、とうとう家まで食い尽くしていく。


「来ないでぇぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!」


 彼女が最後の雄叫びを上げると、球は自然に消えた。

 あとに残ったのは、一部が崩れてしまった家と、倒れて意識を失っている妹がいた。


「これから、どうする・・・・・逃げるか・・・・でも人に会ったらこいつが何をしでかすか分からない」


 アルは家に触った。

 すると、家の破壊された部位はアルの触った所からみるみる元の形へと戻っていった。


「いつになったら記憶が戻ってくるんだ・・・・・」


 アルはルカの頬を触った。

 そして、家の中に入るとルカをベッドに寝かした。


 外に落ちている下半身だけの死体を見た。


「すまない。あんたの顔を知らないんだ。俺にあんたを元に戻すことはできない」


 死体を脇にかかえると、森の奥へと消えた。

 

***************************


「センセー、休憩だそ・・・・・・あ、寝かしといていいか」


 九条は鮎川を起こそうと思ったが、寝るための休憩だ。起こすのはよした。


「おい、川はあっちだから、飲みたきゃ急いどけよ」


 コンラードはあくびしながら馬車に顔を乗り出し、九条にそう告げた。

 九条は馬車から降りると、近くの兵士に川の場所を聞いた。


「あぁ、川は少し歩けばある。ちょっと、森の奥だから気を付けろよ」


「分かりました。ありがとうございます」


 九条は兵士に礼を言うと、兵士の指指した方に歩き出した。


「おい、こんな所で休んでていいのか?今すぐ俺は帰りたいんだが」

「黙ってろ、ここなら奴が現れてもすぐに逃げられる。でも、置いてかれた奴は残念ながらさよならだな」


 九条が兵士からかなり離れたところで、兵士はそうこそこそとしゃべっていた。

 一方、九条は太陽の光からほとんど拒まれた森を歩いていた。


「あっれー?川ないけど・・・・・・方向間違えたかな?」


 耳を澄ましても、川と流れる音は聞こえない。

 仕方がない。戻るとしますか。まぁ元々喉は渇いていないんだけど。


「どっちだっけ・・・・行く方向が分からないから、戻る方向も分からない・・・どうしよぅ」


 ガッシュ!・・・ザザー・・・ガッシュ!・・・ザザー・・・・


 何の音だ?地面を掘る音だろうか?

 もう一度だけ耳を澄ますと、音は右後方からの物だった。


「なんだろう・・・・・ここに人がいるとは思えないけど・・・」


 九条は音のする方へ歩き出した。

 音はそちらへ行く度に音は次第に大きくなっていく。

 やはり、森は木が多いな。邪魔で仕方がない。


「ごめんな・・・・妹にも悪気はなかったんだ・・・・・」


 声が聞こえた。そして、その正体も分かった。そして、その言葉の意味も分かってしまった。


「し、死体」


 ・・・・・・カツンッ!


 しまった!なんでこんな所に石なんてあるんだ?!


「誰だ!」


 九条は急いで、木の陰に隠れた。森で暗いのもあって隠れやすい。

 ゆっくり・・・ゆっくりと木から木へと移りながら逃げていく。


「待て!誰かいるのか!教えてくれ!あんたはまともな人間なのか!教えてくれ!」


 声の主は、助けを求めていた。だが、何かおかしい。


「まともな人間ってどういう事ですか?・・・・・」


 九条は木陰から声の主の前に現れた。


「やった・・・・やったー!俺は・・・まだまともなんだ!」


 声は男の声で、歳は15歳位だろうか。

 少年は九条の下に走って来た。


「あんたは何者・・・・いや、この世界はどうなってしまったんだ!」


「ちょっと待ってください!あなたは・・・・・・どうして此処にいるんですか?・・・どうして、死体を地面に埋めてるんですか?」


「それは・・・・」


 駄目だ。俺がまともじゃないと思われる。そしたら俺は・・・・また見捨てられる・・・。


 少年は九条にしがみ付き、跪いた。


「違う!俺はやってない!妹・・・・そう、俺の妹が!!」


「此処は・・・・何処?お兄ちゃーーん・・・何処ーー・・・・・私は・・・・だれーー?」


 森の奥から少女の声が聞こえた。


「止めろ!逃げろ!助けてくれ・・・あの狂った妹から俺を連れて逃げてくれ!」 

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