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18話 少女

「フフ~ンフフフ~~ンンフフ~ン♪」


「あのーそれなんという歌なんですか?」


 コンラードが馬に跨りながら上の空で、鼻歌を歌っていたので九条は馬車から顔を出して聞いてみた。


「知らなーい。憶えてねーな~」


 知らない歌をよく歌えるもんだな。


 馬車は兵士の足にそろえるからめちゃくちゃ遅い。それに知らない歌を人の前で堂々と歌うこの歌は、僕の暇だと思う気持ちを掻きたてる。


「センセーしりとりをしませんか?」


〔いいねぇ。それじゃぁ私からいくね。りんご・・・〕


 床に置いていた鞄の上に鮎川が眠たそうにうつらうつらとしていた。

 センセーには悪いけど、僕の眠気覚ましに利用させてもらいます。


「ゴリラ・・・」〔ラッパ・・・〕「パキスタント・・・」〔トマト・・・〕「鳥・・・」


 ~30分後~


〔・・・・き・・・金魚・・・〕「余生・・・」〔い・・・い・・・イカダ〕「だるま・・・」


 ~2時間後~


「たまご・・・」〔ご・・ご・・ごりら?〕「はい、センセーの負けね」〔そう、それじゃぁ私は寝るね〕


 そう言うと、鮎川は寝てしまった。今のは、わざと間違えたのだろう。

 風景は、依然、森と空しかない。


「コンラードさん、あとどのくらいあるんですか?」


「あーー・・・多分2日くらい。あとさー俺の事、コンラードって呼べよ。そういうの、俺は好かねーな」


 コンラードは馬から馬車に歩いて乗り込んできた。

 いやいやいや、隊長さんとあろう人がそんなのでいいのか?


「なぁなぁ、前から思っていたんだが、お前のそのグリフォンどこで手名付けたんだ?おかしいだろ、普通そいつは悪魔ルシファーの使い魔だぞ?」


「ルシファーを知っているんですか?」


 意外なところで彼の名を聞いた。全ての元凶。奴がいなかったらセンセーだってこんな姿にはされなかったはず。


「知ってるも何も、そいつ、王都にいるぞ?」


「え?」


 王都に来て、一番最初にやるべき事が決まりました。

 とりあえず、ルシファーの居場所を聞き、会いに行きましょう。

 べっこう飴はその後ですね。


 九条は鮎川の体を撫でて、微笑んだ。


〔ねぇ、それセクハラだよ?〕


「え・・・・・」


 うかつだった。彼女が獣の姿に変えられていたせいで、そういう事はいっさい忘れていた。


「どうした?」


 コンラードが九条の顔を見る。


「いえ・・・なんでも・・・ありません」


「そうか・・・・」


 九条は顔を固まらせて、コンラードに返事した。

 にしてもビックリしたー。なんだ、センセー起きてんじゃないですか。


「センセー寝てますか?」


 返事はない。狸寝入りでもしているのだろうか?


「おい!お前、何処から来たんだ?!」


 前方の方から兵士の大声が聞こえた。

 何があったんだろうか?


「すまない、ちょっと見てくる!君は此処にいろよ!」


 コンラードは馬車から降りると、前の方に走って行った。

 九条は、周りの景色を見た。

 やはり、景色は先ほどとはあまり変わらず、森と太陽と空しかない。

 九条は暇臭く、大きくため息をついた。


「なんなんだ!お前は?!」


 コンラードが前方に着くと、先頭の兵士が向いている方向を見た。

 だが、何か恐ろしい何かがそこにいた訳ではなかった。


「なんだ?女の子じゃねーか」


「違います。周りをよく見てください」


 兵士の言われた通り、少女の周りをよく見た。すると、どういう事か、木、地面が球を描くようになくなっていた。いや、消滅していたが正解なのだろう。


「そこの君。少し話そうじゃないか。こんな森になんで君みたいな、あどけない少女がいるんだ?」


「私は・・・・だれ?あなたは・・・・・だれ?此処は・・・・・何処?」


 記憶喪失なのか?少女はこちらを見たり、周りを見たりと、挙動不審な感じだ。


「分からない物は・・・・分からない者は消さなきゃ・・・!!」


 その瞬間、強い突風と共に少女の姿が消えた。

 全員が上や下を見るがその姿は見えない。


「あなたは・・・・だれ?・・・パパは?・・・ママは?」


 いつの間にか、少女は一人の兵士の肩に乗っていた。

 周りの兵士はそいつを残して、後ずさりをした。


「止めろ!離せ!俺に触らないでくれ!」


 兵士は急いで少女から離れようとする、が、兵士の拳が足に当たろうとすれば足を上げ、体勢を変えれば、それに合わせ少女も兵士に乗る部位を変える。


「なんだ・・・・・いないのね・・・・かわいそうに・・・・・あなたも逝っちゃおっか」


 その瞬間、男の上半身は球を描くかのように、消滅した。

 あとに残ったのは、倒れた下半身だけの死体とそこから流れる血だけだった。


「呪術者だ。なんでこんな所に・・・だが対の者がいないぞ!」


「どこだ!探せ!奴は何者なんだ!」


 少女はにっこり笑うと、その上半身のない兵士を連れて消えて行った。

 このたった数分の出来事が、兵士やコンラードに与えた恐怖はとても大きなものだった。


「おい、お前ら!一刻も早く王都に急げ!、そして、呪術者の事も報告だ」


 凹んだ地面に気を付けながら、馬車と兵士は動き出した。

 気が付くと、兵士の歩幅は乱れていた。


「誰なんだ?いや、分からないのは当たり前か・・・・」


 コンラードは馬に跨り、空を眺めながら、九条にも目を向ける。

 あいつも、一応、無詠唱が使えた。だが、奴は対になるなる者と行動を共にしていない。離れているのか?いや、ありえない。もし離れたなどしたら・・・・・・いや、考えるのはよそう。


 コンラードはまた、馬車に乗り移った。

 いつの間にか九条も寝てしまっていた。


「今の騒動は言っておくべきなのか・・・・・?」  

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