14話 隊長との交渉
運が悪いのは自分がそういう星に生まれたからと諦めていたが、まさかここまで運が悪いとは思わなかった。
まぁ良い。助かったのは幸いなのだが、僕はどうすれば良いのか迷った。
このまま、じっとしているべきなのか。ここから逃げてトルトンさんの所に行くべきなのか。
「センセー、僕はどうするべきなのでしょうか?」
〔じっとして、レイ君が望む結果がそこにあるはずだから。あのアルカちゃんも、あのリック君も生き残るはずだから。レイ君はただそこにいるだけで死ぬはずだった子が生き残るから〕
なんだか、いつものセンセーの反応じゃないな。まるで、僕の考えを見透かしているみたいだ。もしかしてこれがセンセーのもう一つの力か?
先ほどから馬に背もたれして、周りの村を眺めている男は、自らコンラードと名乗った。
九条は依然、地面に体操すわりで鞄を見つめる。空気の通り具合が少々心配である。
「センセーは本当に何を知っているんですか?」
〔・・・・・・・・・・・・〕
鮎川は何も言わず、鞄の中でただジッとしていた。
九条は地面に座り、傍に置いていた鞄を眺めていた。
「おい、何と話してんだ?」
コンラードが九条に突然話かけた。
「え?いえ、誰とも話していませんが・・・」
「お前、変わった服装してんだな。ここらでそんな服は見たことがないぞ?」
なんだ?こいつ、あの時見たあのコンラードと同じ人間なのか?まぁ見たのほんの数分だけだし、人をそれだけで印象ずけるのはおかしいのだが、これはあまりにも人が変わりすぎだ。
「無詠唱か・・・・」
コンラードは腕を組み上の空でボソッと呟いた。
「俺も生まれて初めて見たが、お前は違うな」
「何がですか?」
「お前は、呪術者ってのを知ってるか?」
「いえ、その言葉を聞くのも初めてです」
九条は鞄を突きながらコンラードの顔を見上げた。
鞄はただの鞄を演じ、鮎川はジッとそこでボケーとしていた。
「で、何ですか?その呪術者って」
「んあ?あーーそれはな、その前に聞いておきたいんだが、お前『金の果実』ってのを知ってるよな?まぁ、呪術者も知らないんだからそれも知らないか」
金の果実?たしかそれって・・・センセーと僕が食べた物なんじゃないのか?
それと、その呪術者が何か関係しているのか?
「知らない・・・・・です」
「そうか。知らないか。それなら良いんだがな。ん?それよりその袋面白い形をしているな。何が入ってるんだ?」
げ、こいつもか?この世界の人間はなんでも興味があるんだな。あ、こっちも一緒か。
九条は、咄嗟に鞄を抱き寄せる。
「何だよ、何か見られたら不味い物でも入ってるのか?」
不味すぎて、此処で吐いてしまいそうなんだが。
「無理です。これだけは見せれません」
「おい、お前ら。こいつからこれをはぎ取れ」
おいおい、止めてくれよ。
近くにいた兵士は、九条から鞄をはぎ取ると逆さまにした。
すると、鞄から鮎川が落ちた。
〔今度は何?ホントに迷惑なんだ・・・・から・・・〕
鮎川は体を見て異常がないかを確かめると、九条を見たが、すぐにこれが九条の仕業でない事が分かった。
コンラードや兵士は鮎川を見ると「おぉーー!」と歓声を上げた。
「なんで、お前みたいなのがこんな希少種を持ってるんだ?」
「それには、ちょっとした事情がありまして・・・・」
九条は苦笑いして、鮎川を抱き寄せた。
鮎川は九条を見上げ、九条の足の上で丸まった。
「これから気を付けろよ。俺でさえ気を緩めば、そいつに手を伸ばしそうなんだから」
コンラードは出来るだけ鮎川の方を見ないように、村の子供を見た。
残念、その忠告、昨日聞きたかったな。
「なぁ。お前、これからどうするつもりなんだ?」
「別にここに居ても良いし、僕はセンセーの言うとおりにするつもりです」
九条はそう言うと鮎川の頭を撫でた。だが、半分飽き足らず口ばしや翼も触っていた。
だが、さすがにそこまでやられると嫌がるはずだ。鮎川は九条が翼を触ると翼を広げ、触るなとサインを送った。
〔私は別にこの人についてっても良いと思うよ〕
「え?」
どういう事なのか、もう訳が分からない。
〔彼は信用できる。あの未来は夢だと思って、彼について行きましょ〕
「でも・・・」
〔それなら、アルカちゃんを見て。でも、ちゃんと彼について行くと強くイメージして〕
九条は鮎川の言われる通り、アルカの姿を見た。が、そこには何にも起こらず、死の未来も見えなかった。
「これって、どういう事・・・・」
〔もういいでしょ。彼は安全よ。しばらくは何にも起きないはずだから〕
九条はコンラードを見た。
あんな未来を見せられては、信じるにも信じることができない。
しかし、現にもう死の未来は消えている。、あの火がコンラードによる物だとしたら、あのドラ息子も死ぬことはないだろう。
「・・・・・分かりました。すみませんコンラードさん」
「なんだ?」
「あの、あなたについて行ってもよろしいでしょうか?」
コンラードは九条の言葉を聞くと少し驚いた顔をした。しかし、しばらく考え事をすると、答えを出した。
「分かった。君は無詠唱で魔法を発動できる限りない逸材だ。俺たちもこういった存在はかき集めておきたい」
この魔法は僕の手によるものではない。それは事実なのだが、九条は黙っておこうと思った。
コンラードは腰を降ろし、九条と目線を合わせた。
「できれば、俺らについて来てくれないか?」
そして、手を差し伸べると、九条も戸惑いながら握手した。
「おい、お前ら。王都に戻るぞ。目的の奴はいなかったが、面白い奴は手に入れたぞ」
面白い奴って僕の事か?
九条はため息をつくと、鮎川を首だけ出し鞄に入れた。




