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13話 少年の謝罪と王都からの来客

『熱い・・・・・熱い!助けて!誰かあぁぁ!』


 あの少年だ。二階の窓から叫んでいる。

 二階かぁ。よく見ると建物は3,4階くらいある。

 あれがドラ息子の家か?デカいなぁ。


『おい!お前、助けろ!俺を今すぐ助けろ!』


 誰が助けるか、この人さらいが!

 すると、九条は自分の意志と真逆に建物へと走り出した。


 ガチャガチャッ・・・ガチャッ!・・・・・!!!


『なんで・・・今日なんだ!・・・・俺が何をしたっていうんだ。グリフォンを欲して何が悪い?金持ちが人をいびって何が悪い?』


 リックは窓の縁に掴まり膝をついた。ここからでは見えないが、指の先しか見えないのでそういう体勢になっているのだろう。


 ・・・・・・・ジュウウウゥウウウ!!!

 手が熱いと思ったら、ひどく火傷を負っていた。


『ックソ!・・・・・・リック!聞こえますか?!』


 何で僕はこんな事をしているんだ?今さっきセンセーを自分の物にしようとした男だぞ?


『聞こえる!聞こえる!聞こえるから、早く、助けk・・・・・』


 リックのいる窓から横に火柱がが飛び出した。

 炎の燃え盛る中、リックの叫び声がかすかに聞こえた。

 そして、いつの間にか声は消えてなくなった。


「・・・・・・あ!」


 あぁ・・・なるほど、彼は今日死ぬのか。さっきはこいつの顔を見ても、何ともなかったのに。あ、そうか。あの時、僕が自分の未来を変えたから、こいつの未来が変わってしまったのか。


〔大丈夫?また、死の未来を見ちゃったの?〕


「はい。ですが、今回はどうでも良いので放っときましょう」


〔ホントにいいの?未来を変えない事で人が一人死んじゃうんだよ?〕


「良いんです!あいつが死んだところで僕らに損はありませんし・・・・」


 九条は鮎川の目を見ると、頭をポンポンと叩いた。

 触り心地は悪くない。むしろこんな枕があったら良いなとさえ思えるものだった。


〔あの、レイ君。本来なら私が君にするはずなんだけどなーー〕


 鮎川は九条にニコッと笑った。


〔でもね、死んじゃうと分かってて見捨てる事は、卑怯と変わらないんだよ?私たちが差別をしちゃいけないはず〕


 分かっている。それがいけない事だって分かっているのに自分たちがそれをやってしまっては自分たちがこの世界にいる理由に反してしまう。センセーの意見はもっともだ。


「時間は夜でした。それまで考えさせてください」


〔いい答えを待ってますから。というよりいい答えしか待ってませんから〕


 鮎川はそう言うと、その小さい足を動かした。

 九条も鮎川の後ろをついていく。


〔あと、一ついい?べっこう飴はまだ?〕


 その質問に九条は何言わず笑って無視した。


 トルトンの家に着くと、シャルルが一番に謝罪してきた。


「ごめんなさい!最初は軽はずみだったんだ。『皆に信じてほしい』それだけだったんだ」


「許さない」


 シャルルの精一杯の謝罪に九条は一言それだけを言い放った。


「そんな、なんで・・・・・・」


「僕は連れ去られていないからね。君が謝るべきなのはセンセーなんだよ?」


 シャルルは鮎川の方を向いた。

 そして、深く土下座をした。


「ホントにすみませんでした!あなたに怖い思いをさせてしまって!僕は人としてやってはいけない事をしました!」


 この綺麗な土下座ときたら、日本男児にもこれを見せてやりたいものだ。って、あれ?土下座って日本だけのものだと思ったがこの世界でも通用するんだな。


〔もう二度とこんな事はしないと言える?〕


「はい!言えます!もう!二度・・・・と・・・え?」


 シャルルが前を向くと、鮎川がニコッと笑っていた。


〔ならよろしい。許しましょう〕


「言葉が頭の中に流れ込んで来る・・・・これってこのグリフォンの?」


 鮎川は黙って笑いながら頷いた。


「さて、謝罪も反省も終わりましたし、どうしましょうか?」


〔そうだね~?あっちでは出来てもこっちでは出来ない事が多すぎるからね~〕

 

 三人はボケ~と考え事をしていたその時、


 ・・・・・バンッ!!


「トルトンはいるか?!王兵が来てるぞ!全員呼んで来い!」


 王兵?なんだそれ?


「すまない、王都に用はない。俺以外だけでもやってくれ」


「いや、今回は違うらしい。なんて言うんだ?無詠唱魔法ができる奴を探しているらしいんだが・・・知らないか?」


『無詠唱・・・・』

 そういえば、今朝あの商人が似たような事を言っていたような・・・。


〔レイ君?〕


「すみません。ちょっと僕興味があるので行ってきて良いですか?」


 鮎川の許可が下りると、九条と鮎川は家から飛び出た。

 向こうを驚かせ、また面倒なことになるのはこっちも面倒なので、鮎川には鞄の中に居て貰った。


「どこだっけ?・・・・・・・・あ、あった!」


 森の入り口付近に村人が密集しており、そこから、無駄にデカい声が聞こえる。

 なんだ?選挙の演説でもしてるのか?

 まぁ、冗談はさておき、九条は村人の間をすり抜けて行った。


「この村には!無詠唱魔法を使えるものはいないのか?!」


 馬に乗ったこの兵士?はやけに立派な装飾を施されている。

 そして、九条は思い出した。彼がこの村に火の海をつくる張本人であったと。


「ん?なんだ、お前。俺に文句でもあんのか?!えー?!」


 しまった。思っていたことが顔に出てしまっていたらしい。


「俺はなー!王の命令でこんなへんぴな村に来てんだよ。分かるか?俺に背くという事は、一国の王に逆らうって事なんだぞ?!」


 あんたらの国王の事なんか知ったこっちゃない、そもそもあっちでも総理とか官僚にも興味なかったしなぁ~。


「俺はな、お前みたいなのが嫌いなんだよ。死ね!」


 男は馬から降りると、剣を抜いた。

 大丈夫。今回は僕は死なない。剣のに映る自分を見ても死の未来が見えなかったからな。

 しかし、この状況で、死ぬという未来は、事実よりも予想の方が上回っている。


 男は剣を構えると、九条を睨んだ。

「死ね」男はそう言い、ほくそ笑んだ。


 あ、死んだわ。


 剣は横から大きく円を描き、九条に切りかかる。その瞬間!


「アブソルタ ディフェンシオ!」


 あれだ、これで三度目だった。見えない力に助けられたのは。

 男の剣はその半透明なバリアで九条を包み込み、弾き返した。

 ガキンッ!・・・・・


「なんだよ・・・お前がそうだったんじゃねーか、だが違う、お前じゃない」


 男はそう言うと、馬に背をもたれた。

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