15話 変わらぬ未来
「もう夜だ、出発は明日の明朝だな」
コンラードは夕日を見ながらそう言った。
そして、九条の肩をポンポンと叩くと、他の兵士が建てたテントの中に入って行った。
実際、九条は鮎川の言葉を、半分信じきっていた。そう半分だけ。
『もういいでしょ。彼は安全よ。しばらくは何にも起きないはずだから』
たしかに、コンラードについて行くと考えながらアルカを見ると、死の未来は消えていた。この事実は変わらない。
しかし、できる事なら今夜から動いて欲しかった。なぜなら事件は今夜だ。突然、奴の心が変わるかもしれない。
だから九条は今晩、アルカの傍を離れない事にした。
〔レイ君は、まだ彼の事を信じれないの?〕
「はい。すみませんが、半分信じられません」
トルトンの家で、絨毯に寝転がりながら鮎川と話していた。
他の兄弟には、今夜起こるかもしれない事を教えない。もし、起きなかったら笑いものだ。
ふと兄弟を見ると、二人は何やらカードらしき物で遊んでいる。
「何をして、遊んでいるの?」
「タックワン」
「二人で手持ちのカードを見せて、強いカードを見せた方が勝ちっていうゲーム」
「なぜ、そんな名前なのかは伏せておいて、結構難しそうな感じだね」
見た感じ、あっちの世界でも似たような遊びはあった。でもせいぜい13かジョーカーを含んだ14枚程度。これは30枚近くあるぞ?
「これって、数字じゃなくて絵が描かれているんだね」
「そうだよ。お兄ちゃんって何も知らないんだね。一番強いのが国王で、一番弱いのが奴隷」
なんだそれ、これじゃぁ貧富の差や差別を肯定しているようなもんだろ。
「でもね、ある一定の2枚~10枚のカードを出すとね、復讐、内乱、上手くいくとね王殺しってのも出来るんだ」
面白いのか難しいのか、九条には理解しがたかった。
だが、ゲームには必ずしも、作った者によるメッセージが隠されているものだ。これを作ったのは奴隷とかの地位の者が作ったのだろうか。さすがに、上の者が王殺しなんてものを作らないだろう。
九条は、窓越しに空を眺めた。夕日が沈み、空がうっすら黑に近づいていた。
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テントで泊まる頻度は、最近増してきた。
遠征の寄り道に、その村に行ってはやはりいないのかと、苦を感じながらテントで眠り、また別の方向に進む。
「王の命令でも、こればかりはキツイな。見つけるまで帰って来るなって」
まぁ良い。今回は連れて帰ってきても叱られことはまずないはずだ。数百年前に絶滅されたと言われる無詠唱で魔法を発動できる者達。彼は末裔なのだろうか。
「まぁ、帰れれば俺はそれで十分なんだが」
最初はそこまで苦ではなかった。だが、ここまで来ると、精神的にも狂ってしまいそうだった。
コンラードはテントの中で椅子に座りながら九条の事を思い出した。
「文献にはあのような服装で描かれてはいなかった。見た感じ王都でもあんな物は見た事がない。それに、あのグリフォンもどこで・・・・」
口に拳を添えると、唸って考える。
「コンラード隊長!何やら村人が用があるようでして・・・」
「そうか、お前が対応しろ。俺は死んでいないってなwww」
「いやいやいや、それはさすがに通じませんよ。出てください」
「めんどくせーなー。ったく、まぁ良い。入れてやれ」
兵士は、コンラードの返事を聞くと村人をテントの中に入れた。
村人は「それじゃぁ」と中に入ると、コンラードから2~3メートル離れて床に座る。
「で、何のようだ?俺はお前に用はないんだが」
「いえいえ、用は一瞬で終わりますので、少し耳をお貸し頂ければ・・・」
村人はそう言うと、コンラードの傍に寄った。
コンラードも気になり、村人の方に耳を傾けた。
「何だ?」
「いえ、用というのは・・・・・あなたではなくあなたの印象それだけです」
「は?」
その瞬間、村人はコンラードの耳に向かってボソッと呟いた。
すると、村人とコンラードはその場に倒れた。
しばらく経つと、コンラードは立ち上り、不敵な笑みをした。
「ようやく手に入れた・・・ぶっ殺すぜ。クソ坊主!」
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その頃、九条は兄弟やトルトンと夕飯を食っていた。ついでに鮎川も飯に参加できた。
「良かったですね。空腹で死にそうにならなくて」
〔うるさいなー。あの時は、レイ君が忘れていたのが悪かったんでしょ〕
「そうですね。すみません」
九条はそう言うと、パンに似たそれを口に運ぶ。
「なー。レイ君、君はそのグリフォンと話しているように見えるんだが、どういった仕組みなんだ?」
そういえば、そうだ。センセーの言葉が僕の頭に流れてくると言えばそれまでだが、仕組みまでは分からない。
「さぁ、分かりませんね」
「そうか」
兄弟はというと、さっきから鮎川の姿を見ては「おぉーー!」と珍しい物を見る目で見る。あ、珍しいんだった。
「ねぇーねぇーこの子、名前なんて言うの?」
へっ。この子だってさ。御年24歳がこの子だってww
鮎川の方を見たが、私はグリフォンです。人間の言葉は分かりませんって感じだ。
「えーと、僕はセンセーと呼んでいます」
「へぇーー。センセーかぁ。なんで?」
「僕のセンセーだからです」
他から見たら、言っている意味が分からないだろう。
見てみろ、あの顔を。実際先生というのは多くは目上の人だ。
「お金、取るの?」
「取りませんし、取られませんね」
子供たちは「ふーん」と言うと、鮎川の方に目を向けた。
「おい、そのグリフォンも食べにくいだろう。お前たち自分の方に戻りなさい」
トルトンは飯を食いながら。子供達に注意を促した。
〔ねぇ、なんか焦げ臭くない?〕
「そうですか?・・・・あ、ホントですね。なんか熱くなってきましたし・・・・・え・・・」
九条は、外に飛び出た。
「なんで・・・・・未来が変わってないじゃないか・・・」
村は、火の地獄に変わっていた。




