11話 森の中にて
森の中を何十人と言う男たちが歩く。
全員兵士で、身に鎧を纏っている。何人かずつには旗を持ち、綺麗に整列して行進していく。
兵士の中心には馬に跨り、呆然としている男がいた。この中では一番偉いであろう男は、この中で一番だらけている。
「はぁーー・・・暇だ。俺は、暇だ!何か面白い事はないのか!」
男は足をバタつかせ馬の隣にいる兵士の頭を蹴る。
しかし、兵士は何も言わず、文句をいう訳でもなくただ黙って歩く。
何も言わない奴は、男にとってただの玩具でしかない。
「コンラード隊長!あそこに死体が!」
コンラードは馬から降りると、死体に近づいた。
「なんだ?仲間割れでも起こしたか?だが、おかしいな?なんでウサギなんて持ってんだ?」
その死体はいつか九条が命令した盗賊の死体だった。
死体の手には腐敗したウサギがあり、ハエが2体の死骸に集っていた。
「きったねーなー!おい!」
コンラードは盗賊の物だった頭を蹴った。すると、頭部は傾き、首の部位はブチブチッと千切れ、脊髄が丸出しになった。
「ったく!しっかり落ちちまえよ!どうせ死んでるくせに、おれのささいな願いも叶えれないんか?」
そして、腰の指している鞘から剣を持つと、剣を振り下ろした。
すんなり、頭部は切り落とされコンラードの足元に転がった。
「落ちろとはいったが、こっち来いとは言ってねーんだよ!ったく・・・・おい、お前!」
「はいなんでありましょうか!」
「此処から一番近い村は何処だ?!」
「は!此処からだと南東に位置する『バルヒー』であるかと・・・」
兵士は地図と方位磁針を手にし村の方角に指を指した。
コンラードはまた馬に跨り、一つ大きくあくびをした。
「あそこにはいるかなぁ~~?奴は?」
「奴とは?」
「忘れたのか?その為の遠征だろう?奴だよ。じゅーじゅーつーしゃ!」
コンラードは村の方向を睨んだ。
そして、かすかにこう言った。
「今度こそ見つけ出してやる・・・・・のために!」
***************************
森には、様々な動物や鳥がいる。彼らは全てを知っている。全てを悟っている。
鮎川は無理やり鞄から出てきた。
「ハァ・・・・ハァ・・・・・ハァ・・・・・」
九条はさっきまでの男の態度を未だずっと考えていた。
『我が商会に似つかわしくない・・・・それが分かっただけです。御方よ、お帰りにお気を・・・・』
九条のあの行動をとった瞬間に態度を変えた。パルデスの考えが分からないでいる。
そして、あの力・・・・
横を見ると真ん中の首がはじけ飛び、倒れているこの獣は両首はぐったりとしている。
「いけるか?・・・・・・・」
九条はこの獣に手をかざした。
「立ち上ってください」
真ん中の首を無くしたケルベロスは突然スクッと起き上がった。
そして、次の命令をくれと残った首は九条を見る。
「・・・・・・センセーどう命令すべきですかねーーー?」
九条は鮎川に照れくさそうに笑った。
〔何処からか杖の代わりになる物を持ってきて〕
しかし、ケルベロスは鮎川のいう事を聞かず、いや聞こえないかのような態度をとって九条を見る。
「杖の代わりになる物を持ってきてもらえませんか?」
すると、すんなりケルベロスはコクリと返事をすると、何処かに走って行ってしまった。
〔私の言葉は聞こえないのかな?〕
「センセーには言ってなかったっけ?ルシファーが言うにはあれは『金の果実』から得た力の一つだそうです」
九条は楽な姿勢で座ると、一つため息をついた。
鮎川も〔ふ~~ん〕と言うと体を伏せた。そして、首だけを九条に向けた。
〔夕べの私の言葉。憶えてる?〕
「はい。どうしますか?止めますか?しかし、この村の子供にばれた以上隠し通すのは困難だと思います」
九条は、視界に映るあの隠れ家を見た。
「あの子達にはちょっとやりすぎっちゃかな?」
九条は鮎川に問うが、期待できる答えは帰ってこなかった。
〔あれは取り消す・・・・・・・・私は・・・・・・最初から始めたい・・・・・〕
ふと、鮎川の言葉が頭をかすった。
「それはつまりどういう事ですか?」
〔ここから一番近くの村は何処だと思う?〕
あれ?今の言葉・・・どこかで聞いた事があるような・・・・・。いや気のせいか?
「どうして、いえ・・・・行くなら、王都に行ってみませんか?」
九条は気が付くと意見を変えてしまっていた。これが自分の意志であるはずなのに、誰かに支持されているような感じだ。しかもこの感覚以前にもあった。
〔やっと生きられる・・・・・〕
「何か言いましたか?」
〔んんん?何でもないよ?それじゃ今すぐ行こう!〕
「ちょっと・・・・いえあと7日待って頂けませんか?」
〔なんで?!もうこんなの嫌でしょ!〕
どうしたんだ?さっきまでと様子が違うぞ?
鮎川は落ち着かないのか、ずっとそわそわしている。
「何か知っているんですか?!知っているんなら教えてください!」
九条は両手を地面に押し付ける。
鮎川は顔を逸らすと、九条の問いには口を開けなかった。
「せめて・・・・話したくなったらその時にお願いします」
九条がそれを言い終わる頃、あのケルベロスがちょうど手頃の大きさの木の枝を持ってきた。
しかし、器用な物だ。あれだけ長い物を真ん中を対称に両側を咥えているため、落ちないでいる。
「ありがとうございます」
そういうと、ケルベロスは眠るように行動を停止した。
九条はその獣に手を合わせ拝んだ。
「鞄に入りますか?」
〔んん。いいよ。自分の足で行くよ・・・・・どうせ・・・・だし・・・〕
最後があまり聞き取れなかった。
彼女は何か隠している。それが九条の心に変に突き刺さる。




