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09話 子供の悪事と彼の怒り

 森の空気と言うのは他の空気より澄んでいて気持ちいい。


 シャルルは今朝、いつか自分の事を信じなかったアルト、リック、デボラ、マリエルの4人を隠れ家に呼び出した。


「なぁ、俺らを呼んだからには、そうとうな理由があるんだろうな?」


 リックはシャルルに拳を振りかざして脅す。歳はシャルルより2つ上で、いつも何かしらある度、シャルルをいじめようとする。


「だ、大丈夫!さっきも言ったでしょ!?すごい生き物を見つけたんだ!絶対お、お前ら腰を抜かすぞ!」


 シャルルは少し怯えながら、彼らにそう告げる。

 そして、例の物をが入った袋を4人に見せた。


「で、結局、何が入ってるんだ?!」


「いいか~?見てろよ?」


 シャルルは全員の意識をこちらに集中させる。

 そして、とうとうその生き物は袋から机に転がり落とされた。


〔ん?ここは?あれ?!レイ君!何処!〕


 落とされた衝撃で鮎川は起きたが、彼女を見下ろしていたのは、好奇心旺盛な子供達だった。


「すっげー!何処にいたんだ!幻獣だ・・・・・・初めて見た!」


 リックは3人を履けのき、机に両手をついた。


「ちょっと!私たちにも見せてよ!リックだけずるい!」


 少し小柄なデボラは背の高いリックの後ろに立たされ、その獣の姿を見ることができないでいる。

 シャルルはまるで自分が捕まえてきたかのように鼻を天狗にした。


「すごいだろー!捕まえた方法や場所までは教えてあげないけど、数時間したら元の場所に返すつもりなんだ」


 シャルルは鮎川を持ち上げた。すると、


「何言ってんだ。俺らの使い魔にしちまおーぜ!」


 リックがシャルルの手を掴んだ。シャルルの顔は真っ青になる。

 最初は、あんなに自分のいう事を否定したくせに、いざ目にした途端、自分の物にしたくなる。

 独占欲という物はとても恐ろしい物だと9歳ながらにしてシャルルは思い知った。


「リック、ちょっと待ってよ。僕の話を聞いて。もっと良い事があるからさ」


 後ろから、アルトが声を掛ける。


「なんだ?良い事って・・・・」


「こっちに来て!」


 リックがアルトに質問を投げかけようとすると、アルトは誰かを呼んだ。


「今回のご依頼主はアルト様でよろしいですかな?」


「あぁ・・・」


「さようで。それでは、このフェイク商会を選びいただき誠にありがとうございます。今回の品は・・・・・・・・なんと!グリフォンの子供ではありませんか!・・・・これをどこで!なんとうっつくしい!」


 突然、暗闇から現れた男はベタベタとその綺麗な羽を触り出した。


「おい、アルトどういう事だ!まさか、こいつを売り飛ばそうって根端か?それは俺が許さねーな!」


 今のリックの発言には心底シャルルも同感である。だが、少なくとも二人の考えは違う。一方は元の持ち主に返したい。もう一方は、自分の支配下に置いておきたい。だった。


「話を最後まで聞いてよ。このフェイク商会は自分の利益の2倍3倍の物だと思う商品が出てきた場合、依頼主が商会から、魔獣を1匹どれでも選んで交換してくれるらしいんだ」


 アルトはクスクス笑いながら話を続ける。


「もし、うまくいけば・・・ドラゴンさえ手に入るかもしれないんだぞ!」


ドラゴン・・・・アルトの口からその言葉だけは出してほしくなかった。

なぜなら、今リックが心の底から欲しがっている物、それがドラゴンなのだから。


「なんと!このグリフォン。メスではありませんか!これはもはや値段の付けようがありません!」


 男が興奮しているのは、こちらから見ても断然わかる。


「一応、聞くんですが・・・オスだったらどのくらい・・・」


「5億カストルくらいですかね」


 あたりはその大金の言葉で静まり返った。

 シャルルは事の重大さに気が付きながらにも、4人のこの期待を裏切ってはいけないという気持ちが心を圧迫する。

 そして4人はグリフォンに近づき、こう言った。


「「「「このグリフォン売ります!」」」」 


「止めてーーーー!」


 遅かった・・・・・気が付いた時にはもう言ってはならない言葉を、シャルルにとって呪いの言葉を4人は言ってしまった。


「それでは、御商談は交s・・・・・」


 ギギギギギギギ・・・・・・・ギギギギギギ・・・バタン!


 ドアの軋みながら開き閉じた。あのドアは傾き引っかかっているため、風邪で開くわけがない。

 玄関は、向こうの壁を挟んでいるため分からない。


「誰だ?」


 アルトはドアの方に近づき、玄関へ向かった。


 ・・・・・・ドン!


 壁に誰かが叩きつけられる音が聞こえた。

 鮎川もかろうじて見れる片目だけで玄関の方を見る。


 ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・。


 4人の目の前にその正体は現れた。


「センセーを・・・・・返してください・・・」


 九条だった。すると、鮎川は体を必死にねじらしたりして暴れ出す。

 しかし、男は翼と足を無理やり掴み逃がさない。


「おい・・・あんた誰だよ!何だ?あんたもあのグリフォン欲しさに来たのか?」


 リックは九条の前に立ちはだかるが、11歳と18歳の身長の差は圧倒的である。

 だが、リックは身長など関係ないといわんばかりに九条の腹に拳を何度も食らわせる。


「もう一度言います・・・・・センセーを返してください!」


 九条は下を向き、そう言う。

 だが、全員彼の言葉をあざ笑う。


「センセー?誰の事を言ってんだ?あのグリフォンか?あれはな俺の物だ。誰の物でもない、あんたの物でもなぁ!」


 そう言うと、逆上したリックは九条の顔面に向かって拳を振りかざす。

 しかし、九条はそれをあっさり避け、リックの足を踏みつける。


「イッテーーー!何すんだ!・・・・・・!!!」


 今度はリックがしゃがみ込んだ瞬間、顔面に思いっきり蹴りを入れた。


 反りかえって倒れたリックの顔から鼻血がドバドバ流れ出す。


〔それくらいにして!レイ君!〕


「ですが!・・・・・・・・わかりました。今すぐ帰りましょう」


 九条は鮎川の顔を見ると、自分の6人に対する憎しみを押し殺し、鮎川と帰ることを最優先にした。


 そして、次の標的に選んだのはあの男だった。


「残念ですね・・・もう交渉は成立したんですよ!これはもう我が商会の物です」


 男は鮎川を袋の中に入れると玄関に走り出した。


〔レイ君!〕


 九条はその言葉を聞き逃さなかった。

 男がドアを開けるのに手間取ってる数秒間の内に九条は男の後ろに立った。


 そして、九条は男の襟を掴むと、後ろに押し倒した。

 その瞬間に九条は袋を奪い返すと、袋の中から鮎川を出す。


「これで、僕はもう用はありません。お騒がせしてすみませんでした」


 それだけを言うと、九条は家から出ていく。

 家の中には、倒れる少年と鼻血を出し貧血を起こしている少年、あと、この状況に怯える二人の少女とシャルルだけだった。


「契約は絶対・・・あれは我が商会の物・・・・・許さない・・・絶対!」


 家の外からそんな声が聞こえる気がした。

 男の姿はもうない・・・。

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