第41話
広場を抜け、案内係の生徒に導かれてエリシアたちは本館へと向かった。
受付棟の前で、案内係はぴたりと足を止め、腰を折って見送った。
「こちらがクラス分け試験の受付でございます。付き添いの方々は、ここまでとさせていただきます」
ルイスが舌打ちしそうになったが、ヴィクトルが肘で制した。
エリシアは振り返り、三人を見上げた。
「……待ってて」
ルイスが明るい声で応じた。
「おう、行ってこい」
ヴィクトルは続けた。
「お茶の準備でもしておくよ」
セレナは無言で頭を下げ、まなざしだけで「ご武運を」と語った。
エリシアはその想いを静かに受け止めるように目を細め、強い支えを感じた。
(みんな……ありがとう)
案内係に促され、通されたのは広い待機室だった。
そこには、すでに十数人の貴族の子たちが座っていた。
全員が――デビュタントパーティで見たことのある顔ぶれだった。
(そりゃそうよね)
視線が一斉にエリシアへ集中した。
誰もがエリシアを認識している。
それでも、誰も口を開かない。
ただ、貴族然と無言の認識を交わすだけ。
挨拶も、驚きも、好奇心すら表に出さない。
完璧なまでの「貴族の顔」だった。
エリシアは指定された席に腰を下ろした。
時間が経つにつれ、貴族の数は徐々に増えていき、最終的に三十名ほどになった。
全員が「上流貴族」の子息女たち。
やがて、扉が開き、試験監督が入ってきた。
黒を基調とした厳格な軍服に身を包んだ中年女性だった。
胸元には学園の最高位教官を示す金色の紋章。
彼女は教壇に立ち、全員を見渡した。
「私は王立学園最高位教官、エレーナ・フォン・ヴァイスである。諸君、ここに集まった者は全員、特待クラス生である」
ざわめきは一切起きない。
全員が監督の言葉を待つ。
「この後の実技試験では、魔力と剣技の測定のみを行う」
監督の声は淡々と部屋全体に響き渡る。
監督は手を上げた。
「では、移動する。実技試験会場へ」
三十名の貴族の子弟たちは、誰一人として乱れることなく、席を立った。
自然と二列縦隊になり、軍隊さながらの整然とした動きで監督の後について移動を始める。
足音がぴたりと揃い、廊下に響く。
(さすが貴族ね……こりゃ平民が入る余地ないわ)
エリシアは内心で言葉を漏らしつつ、列に加わった。
胸元のブローチを指で触れ、息を吸う。
(加減、加減よ。目立ちすぎない程度に……)




