第40話
馬車が王立学園の正門前に停まった。
広大な門をくぐると、敷地内はすでに新入生の馬車で溢れていた。
門を入ってすぐの広場には、制服姿の案内係の生徒たちが整列しており、それぞれ胸に異なる色のリボンを付けている。
案内係の一人が馬車に近づき、扉の家紋を一瞥した。
「……グランヴァルト家、そして王家の紋章。ご案内いたします」
案内係の声は丁寧だが、どこか緊張を帯びていた。
セレナが御者台から降り馬車の扉を開ける。
先に降りたルイスとヴィクトルが、同時に手を差し出す。
エリシアは両方の手を取って馬車から降りた。
ルイスがエリシアの鞄を受け取り、ヴィクトルが自然に周囲を警戒しながら一歩前に出る。
セレナはその後ろに控えめに続き、四人で歩き始めた。
周囲から、ざわめきが聞こえてくる。
「あれって……王家の紋章……」
「グランヴァルト家の令嬢だろ?」
「王子婚約者って噂、本当だったんだ……」
「でも、あの二人……」
「婚約者が三人って本当だったのか……」
エリシアの耳が、ぴくりと反応しそうになった。
その時、後ろからセレナの声。
「お嬢様」
短く、しかし確実に制止する一言。
エリシアは感情を抑え込むように眉間に力を込めた。
ここは王立学園。
小説なんかでは「貴族と平民は関係ない」「実力さえあれば誰でも上を目指せる」なんて定番だったが――
この世界では違う。
完全実力主義とはいえ、入学できるのは基本的に貴族の子たち。
一部平民の姿も見えるが、ほとんどが貴族だらけだった。
当然だ。
生まれが違えば教育も違う。
識字率すら違えば、基礎魔力の鍛え方すら違う。
実力差は、そう簡単にひっくり返せるものではない。
この学園は魔法・武術・学力・経済力――全てがモノを言う最高レベルの教育施設。
派閥も、実力も、血統も、すべてが絡み合う。
エリシアは胸元の二つの紋章に指を触れ、歩みを進めた。




