↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貞操逆転令嬢  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/50

第32話

 会議室へと続く中庭の奥。


 敵の背中が、壁に向かって何かを仕掛けようとしているのが見えた。

 指先から青白い魔力が渦を巻き、壁面に複雑な魔法陣を刻み始めている――おそらく爆破か、貫通か。


 会議室まであと少しの距離だ。


 エリシアは体を乗り出し、魔力を集めた。

「ファイヤ――」


 だが、敵の気配が鋭く反応した。

 殺意が突き刺さるように押し寄せ、雷光が閃いた。


 ズドンッ!

 青白い雷が一直線にエリシアを狙い、廊下の空気を焼き裂く。


「アース・ウォール!」


 反射的に唱えた土壁が地面から隆起し、雷を真正面から受け止めた。

 衝撃で壁面がひび割れ、土埃が舞い上がる。


 雷の余波が皮膚の表面をひりつくようにかすめ、髪の毛が逆立つ。


「……早くしろ!」


 低く、苛立った敵の声が煙の向こうから響いた。


 エリシアの心臓が、激しく鳴った。

(怖い怖い怖い怖い)


 初めての、人間相手の接敵。

 純粋な殺意が、肌を刺すように感じられる。

 魔獣のそれとは違う。

 明確に、自分を「殺す」ための意志。


 膝が支えを失いかける。


 心を足元に落ち着けると、胸元のブローチが光っていた。

「……嫌だよ、お父さん……お母さん……」


 声は自分でも驚くほど小さかった。


 体を、淡い神聖な光が包み込んだ。

 温かく、両親に守られているような感覚。


 心の奥にあった恐怖が、少しだけ和らぐ。


 指先に、奔流のような魔力が集まるのを感じた。

 使徒の力。

 守りたい人たちのために与えられた力。


 エリシアは土壁の陰から体を出し、息を吸った。

「ファイヤ・アロー」


 十本の火の矢が、朱い軌跡を描いて放たれる。


 敵の集団を襲い、煙と爆炎が上がる。

 当たった。


 同時に、次の十本を展開。

 以前の百本同時制御は頭が割れそうだったが、十本を連発するだけなら――距離も近く、訓練の積み重ねが生きて、手癖のようにスムーズに魔力が流れた。


 煙の向こうで、敵の一人が炎の直撃を食らって倒れた。

 苦悶の呻きが漏れる。


 だが、別の敵が巨大な魔力盾を生成し、矢を全て弾き返していた。

 そして、その盾を構えたまま、猛然と突進してきた。


 エリシアは風魔法を足に纏い、体を宙に浮かせる。

「ウィンド・ステップ!」


 足下から吹き上がる風が体を持ち上げ、盾兵の上を取る。


「サンダー・ボルト」


 雷が縦に盾を貫いた。

 ゴロゴロと空気を震わせる轟音。


 盾が弾け飛び、雷は盾兵の体を焦がしながら昏倒させた。

 黒いマントが焦げ、倒れ伏す。


 息が、少し乱れた。

(よし……いけるかも……)


 焦げた肉の匂いが鼻を突き、エリシアの喉が鳴った。


 倒れた敵の体が、微かに痙攣しているのが見える。


 一瞬、視界が揺れた。

(……ごめん……でも……)


 ほんの一瞬、強い痛みが内側を刺した。


 だが、エリシアは唇を噛み、煙の向こうに残る気配を睨んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。