第20話
前線基地の屋内訓練場。
朝の演習が一段落した一角で、ルイスとヴィクトルは木製のベンチに腰を下ろし、頭を抱えていた。
「どうするよ……あんな威力じゃ、普通の訓練じゃ意味ないだろ。木剣でも死ぬ自信ある」
「魔法も尋常じゃないぞ。英雄級の女性軍人に頼めば指導はできるだろうけど……せっかく俺たちが任命されたのに、それじゃ格好つかない」
二人は顔を見合わせ、言葉を交わさず互いの顔を見つめ合った。
ヴィクトルがぽつりと口を開く。
「……魔獣狩り、なら」
ルイスの顔が明るくなった。
「それだ! 外出許可取ってくる!」
ルイスは勢いよく立ち上がると、訓練場の出口へ向かって走り出した。
エリシアは残されたヴィクトルに首を傾げた。
「魔獣狩りって?」
ヴィクトルは少しだけ得意げに説明を始めた。
「この近辺には魔獣って呼ばれる、普通の動植物とは違う生体がいるんだ。普段は軍の持ち回りで討伐しているんだけど……エリシアの力を活かすなら、訓練より実践の方がいいかなと思ってさ」
そう言いながらも、ヴィクトルのおでこに薄く汗が浮かんでいた。
エリシアはそれに気づいた。
「何か隠してる?」
「……いや、その」
「お母様の前で、つい口が滑っちゃうかも?」
ヴィクトルは観念したように肩を落とした。
「わかったわかった、ごめんって! ……魔獣を討伐すると、少しばかり報奨金が出るんだ。大した額じゃないけど」
「二人とも貴族でしょ? そんなにお金が大事?」
ヴィクトルは少し苦笑いを浮かべた。
「貴族でも男だからな……結婚するとなると持参金とかいろいろ金がかかる。うちは兄弟も多いし、少しでも貯めておきたいんだよ」
エリシアは少し驚いた顔でヴィクトルを見つめた。
「そうなんだ……」
ヴィクトルは照れ隠しのように手を振った。
「エリシアがもらってくれてもいいけど?」
「決めかねます。お互いをもっと知ってからね」
「お堅いんだな」
そんな話をしていると、遠くから足音が近づいてきた。
ルイスが戻ってきた――その後ろに、セレナが付いてきていた。
「二時間だけ外出許可が出たぞ! セレナさんが護衛として同伴ならって条件でな! 今日は焼肉だ!」
エリシアとヴィクトルは顔を見合わせて、吹き出した。
ルイスが怪訝な顔で首を傾げる。
「なんだ? 俺がいない間に仲良くなったのかよ?」
セレナは少し離れたところで一礼した。
「お嬢様、お供いたします」
四人で森へと向かった。




