↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貞操逆転令嬢  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/50

第15話

 王都から自領への帰路は、行きよりも長く感じられた。


 馬車の中で母はほとんど口を開かず、窓の外を眺め続けていた。

 あの執事から受け取った手紙は一度も開かれず、懐にしまわれたままだった。


 エリシアはそれが気にかかったが、聞けなかった。

 母の横顔に浮かぶ決意が、言葉を塞いでいた。


 領主邸に着いたのは、到着予定より半日早い、朝の薄闇の中だった。


 馬車が門をくぐると、すでに灯りがともり、使用人たちが慌ただしく動いている。

 ライルが玄関で出迎えた。


「お帰りなさいませ、アリシエッタ様、エリシアお嬢様。お疲れのところ恐縮ですが、すぐに前線基地へ向かっていただきます。馬車は別のものを用意してございます」


 母はエリシアの手を握った。

「慌ただしくてごめんなさいね」


 エリシアは首を振る。

「いえ。お母様にもお考えがあると思いますので」


 母の表情が一瞬、驚いたように揺れた。

 それから柔らかく細められた。

「あなたは本当に聡いわね」


 母の手が、エリシアの頭を撫でた。


 新しい馬車は軍用で、窓は、外壁は鉄板で補強されていた。

 セレナが護衛として同乗し、ライルは邸に残る。

 馬車はすぐに動き出し、領内を北へ、北へ。



 馬車は前線基地の門をくぐった。


 エリシアが馬車を降りると、父が待っていた。

 黒を基調とした補佐官の正装に身を包んでいる。


「お帰り、エリシア。無事だったかい?」

「はい、お父様」


 エリシアは自然と顔立ちがふっと明るくほどけ、父の胸に勢いよく飛び込み、その衣に顔を埋めた。


 母が後ろから降りてきた。

「ずいぶんいい子だったわよ。少し緊張していたみたいだけれど」


 エリシアは頬を膨らませる。

「もう、おやめくださいお母様」


 母がふふふと口元を綻ばせた。

 その笑い声に、周囲の軍人たちが顔を綻ばせる。

 辺境軍の兵士たちは、総指揮官のこんな柔らかな表情を滅多に見ない。


 母はすぐに表情を引き締め、父に向き直った。

「アルフォンス、会議室の準備を」


 父は即座に短く応じた。

「分かった。例の件だな。準備は終えてある」


 そういうと父は踵を返し、早足で基地の奥へと走っていった。

 母がその後を追い、エリシアも母に手を引かれて連れられる。


 基地の廊下を歩きながら、周囲の女性軍人たちが関心を帯びた様子でこちらを眺めてくる。

「あれが噂の……可愛らしい」

「補佐官殿も嬉しそうだったな」

「将来が楽しみだな」


 囁き声が聞こえて、エリシアは表情の端にほのかな熱をにじませた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。