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第5話 私は

青年がクロードに頭を下げる。

「こんにちは。クロード様。こんなところでお会いできるとはとても光栄です」

「ああ」

「クロード様。失礼ですが、そのお嬢様は?」

「妹のエミリアだ」


青年は目を丸くする。

「妹君......?」


私は青年の言ったことは聞き取れなかったが、私を見て不思議そうな視線を向けていることは分かった。

(この人は私のことを知らない......?エミリアは知っている人と知らない人がいるの......?)


不安そうな顔をしていたのが分かったのか、クロードが私の顔を覗き込む。

「大丈夫か?今日は一旦帰るか?」

「え、あ!大丈夫です!」


クロードは青年と何かを話し、青年は去っていった。私とクロードはその後、露店を回り、美味しいものをいっぱい食べた。異世界の料理も前世の料理に引けを取らないくらい美味しかった。きっと、クロードと一緒に食べているからだろう。

 楽しい時間もあっという間。もう気づいたころには帰りの馬車の中だった。私はさっきクロードに買ってもらった焼き菓子の包みをじっと見ていた。

「どうした?」


向かい側に座っていたクロードが不思議そうに尋ねる。

「いえ、その......お菓子が美味しそうだなと思って」

「食べないのか?」


屋敷についてから推しに買ってもらった焼き菓子を味わって食べようと思っていたが、クロードの少し悲しそうな顔を見てしまうと食べざるをえない。

 一つを口に運ぶ。優しい味がした。

「美味しい......」


思わず独り言が出てしまうと、クロードは安心したかのように少し笑う。

「元気が出たようで何よりだ。今日のエミリアはずっと何かを気にしているようだったからな」

「そう、ですか?」


いけない。推しに気を遣わせるなんてオタク失敗だ。

「すみません。なんだかぼーっとしてしまっていて」

「謝ることはない。エミリアは昔からよくそういう顔をする。頑固だからな」

「私ってそんなに頑固だったのですか?」

「ああ。一度言い出したことは絶対に曲げないし、すぐ泣いてわがままを言っていた」


まただ。また私の知らないエミリアの話。なぜか胸がチクリとする。


 馬車が屋敷へと着く。使用人たちが頭を下げる中、私はさっきまでのことをぼんやり考えながらクロードの後ろを歩いていた。


その時。

「クロード様!急ぎでご報告が」

「分かった。すぐに向かう」


クロードは後ろにいる私をみた。

「エミリアは先に部屋に戻っていてくれ。すぐに終わらせる」


そう言って私の頭をポンっと撫でる。いつもなら心臓が爆発するくらいキュンキュンするのだが、その時は何も感じられなかった。私はクロードの背中を見送る。

(やっぱり忙しいよな......私も気持ちを切り替えないと)


私は自室に戻り、ベッドに倒れこむ。今日は推しとのお出かけ(デート)だった。しかし、あの青年の視線といえ、私の知らないエミリアについてだったり......色々と情報量が多すぎた。今日はもう休もう。そう思った時だった。

 自分の机の上に見覚えのない本があった。片付け忘れたのかなと思い、思い体を起こして机まで近づく。本を開くと、中には写真が挟まれていた。幼い女の子と男の子。

「クロードとエミリア......?」


私は転生者だ。エミリアのことは前世でも知らない。なのにどうしてだろう。少しだけ懐かしいと思ってしまったのは。

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