25話
「やっほー!」
「はぁぁぁぁぁ…」
「そのため息はなによ」
「なんでもない」
如月さんのとこの車が来たと思ったら既にみかが中にいた。
天にはお金だけ渡しておいた。
完全に寿司の口になっていたみたいで俺が今から出るって言ったらブチギレられたんだよな。
「みかがまたモンスターと戦いたいと思うなんて思わなかったよ」
「私もまたモンスターと戦うなんて思ってなかった」
「バカだろ」
「それなら翔琉はもっとバカだね。もう毎日戦ってるじゃん」
「頼まれたんだからしょうがないだろ?」
車に乗ってみかと話していると運転手が気まずそうにしていた。
「すみません、ウチの会社のせいで…」
「お金ももらったんで気にしないでください」
「そう言っていただけると助かります。今から空港に行って、そこから飛行機で東京に向かいます。時間がかかりますので寝ていただいても大丈夫ですよ」
「わかりました」
カゲツが眠そうにしている。
お風呂に入ったあとにご飯も食べてたし眠いんだろ。
「寝ちゃった。その子がカゲツ?可愛いね」
「知ってるのか」
カゲツのほっぺをつついているが全く起きる気配がない。
「動画サイトでも配信されてたからね。そういえば日本以外でもボスを倒すところが出てきてるみたいだよ」
「そうなんだ」
「興味なさそうだね」
そりゃあ興味ない。
海外なんて行く予定もないしな。
「そうだ。これやるよ」
「なにこれ。え!?知能プラス20!?」
響華が使っていた杖を渡した。
「これ響華って人が使ってたやつでしょ?いいの?」
「俺は使わないからな」
「それならもらっておくけどさ」
「俺は寝るから」
「暇なんだけど」
「疲れてるんだよ」
「むぅー。肩貸してあげようか?」
「おやすみ」
「無視した!」
カゲツがいい感じに温かいのですごく眠い。
目を瞑るとすぐに寝てしまった。
「翔琉ー!起きて!もうすぐつくよ!」
「……ん?」
「起きた?」
「どれだけ寝てた?」
「3時間ぐらいかな、覚醒者の人が翔琉のことを起こさずに飛行機の席まで運んでたのは凄かったよ」
「どうやって運んでたんだよ…」
「重力系のスキルみたい。便利すぎて仕事が楽になったって喜びながら話してくれたよ」
重力系のスキルか。たしかに便利そうでいいな。
「あとカゲツが飛行機を気に入ったみたいだね」
「カゲツが?」
カゲツのことを見るとずっと外を見ている。
「気に入ったのか?」
「ワンッ!」
「ずーっと大人しくしてたんだよね〜、偉いね」
みかに頭を撫でられて嬉しそうにしている。
完全に犬だな。
飛行機が着陸するときは怖いのか俺に抱きついているが、外のことは気になるのかずっと見ていた。
「久しぶりに飛行機に乗ったわ」
飛行機から降りて首を回したり身体を伸ばすとバキバキと音が鳴った。
「わーすごい音」
「気持ちいいぞ」
「おじさんみたい」
酷いな。
「お待ちしておりました。燈黒さん」
「どうも。娘さんも来たんですか?」
「助けに来ていただいたのに失礼な態度をとってしまい申し訳ございませんでした」
母親の前だから猫でも被ってんのか?
それにしても高校生ぐらいなのにしっかりしてるな。
「お金目的で助けに来たのではないと母から聞きました」
「そうか。生きててよかったな」
「今回は私も同行します。よろしくお願いします」
「来なくていい。それで場所は?ここから近いんですか?」
「え…あぁ、場所ですか?ここから車で10分ほどです」
俺が彩葉のことをあっさり断ったのに驚いたのか一瞬驚いてたな。
それにしてもまた車で移動か。
できるだけ乗りたくないんだよな。
「どうして断るんですか!?私がいれば貴方達のことを守れるんですよ?」
「いらないから」
「ごめんね?この人、口下手なの。ずっと災厄の中にいて疲れてるだろうから家で休んでって言ってるんだよ」
「おい、なに変なこと言ってんだよ」
「あってるでしょ?」
うるさい奴だな。
「だから言ったでしょ?今日は帰って休みなさい」
「だって、お母さんの会社の人達が危険な状況なのに私だけ寝てなんていられない!」
正義感の強い子だな。
俺だったら速攻帰って寝てるぞ。
「ガキはさっさと帰って寝ろ。もし来たいなら明日来い」
「でも!」
「でもじゃありません。私が許しません」
「お母さん…」
如月ママの圧がすごくて黙ってしまった。
「それでは行きましょうか」
如月ママに連れられて車に乗った。
今回の運転手はあの斉藤とかいうゴリラじゃなくて安心した。
彩葉は車に乗った後も大人しくしている。
大人しくしていたら普通に可愛い女の子だな。
「ワンッ!」
「どうした?」
カゲツが彩葉に興味津々なんだけど…
「あとでな」
「ワフン…」
「じゃあ私が抱っこしてあげるからおいで」
「ワンッワンッ!」
女だったら誰でもいいのか?
カゲツはオスだし、男の俺よりも女の子に抱かれた方が嬉しいんだな。
災厄の現場にはすぐについた。
「人が多いな」
「見世物ではないんですけどね。どうしても集まってきてしまうんです。差し入れを持ってきてくれる方も多いので追い返しにくくて…」
「差し入れねぇ…」
エントランスの中には人がたくさんいる。
普通の人間は出入りが自由なので、入口周辺のモンスターを倒してセーフゾーンにして、食料などを持ってきてもらっているらしい。
それにしても怪我人が多いな。
「ここに覚醒者が全員集まってるんですか?」
「いいえ、まだ上に何名かいるはずです」
「そうですか。じゃあ行ってきます」
「もう行くの!?」
「本当にありがとうございます。お願いします」
中に入ろうとすると入口の前に立っていたカメラマンに目をつけられた。
「おや、もしや…日本の災厄を2つも退けた救世主、燈黒 翔琉さんではないですか?」
「人違いです」
「はははっ!ご冗談を!少し話を聞かせてくださいよ。そこのお嬢さんは桜井みかさんじゃないですか?これはすごい!もしやこの場所の災厄も払っていただけるのでしょうか?」
面倒だ。
撮れ高のことしか考えていなさそうな男のリポーターとカメラマン。
勘弁してほしいな…。
「どいてくれ」
「1時間ほど私の質問に答えていただけるなら構いませんよ?」
「そうか、悪いな」
リポーター達を無視して進もうとすると腕を掴まれた。
「ちょ、ちょっと、話を聞いてますか?私の質問に…」
「離せ」
声に怒気をにじませ睨みつけると、一瞬怯んだようにしたがまだ腕を離さなかった。
「い、今は生放送中です。そのような態度をとられますと、今見ている方々に悪い印象を与えますよ?」
「関係ないな。中にまだ生きている人がいるのに1時間も質問に答えろだ?ふざけるなよ」
「ひぃ…そ、そんなことを言うなら何故すぐにここに来なかったのですか?人の命を大切にしているならすぐに来るべきでは?」
「最後のチャンスだ。離せ」
なかなか頑固だな。
全く離す気配がない。
腕を払いのけると大袈裟に転んだ。
「い…痛い!なぜこんなことをするのですか、救世主様!」
「行くぞ」
「う、うん」
「ガルルッ!」
「カゲツ。気にするな」
「グルルッ…ワン」
俺がムカついていたのをカゲツもわかっていたんだろう。
今にも噛みつきそうだったが、我慢してくれた。
「よく我慢できたな。あとで肉食べような」
「ワンッ!」
エントランスに入ると社員の人達が俺達のことを見てきた。
怪我が酷そうな人から順番に治していこう。
「まずはあなたから」
「え?」
「水よ」
頭と腕に包帯を巻いている男の人を水で包み込んだ。
「あなた!なにしてるの!?」
「ちょ、ちょっと!翔琉!?」
30代ぐらいの女性が剣を俺の首に当ててきた。
「はやくこの水を解きなさい!」
「怪我を治してるんだよ。それとも治さなくていいのか?」
「怪我を治す?」
めちゃくちゃ疑ってるな。
一声かけてからすればよかった。
あのリポーターのせいでイライラしていてはやまってしまった。
「そんなこともできるようになったの!?」
「まぁな」
「じゃあ私も皆を回復させていくね!」
「ワンッ!」
「カゲツはみかの護衛な」
「ワンワンッ!」
みかも回復系のスキルを覚えていたのか。
パーティになっておいたのでみかのスキルをみてると、リジェネレイトというスキルが増えていた。継続回復系のスキルか。
ゴブリンジェネラル戦で覚えたのか?
そろそろ怪我もよくなったか?
水で包んだ人を見ると口を手で覆い、呼吸をしないようにしており苦しそうにしていた。
「言い忘れてたけど、呼吸しても溺れたりしないよ」
「…あれ?本当だ。なんだ、驚かせないでくれよ」
「すぐに怪我を治したほうがいいと思ってな」
「ありがとう。痛みが消えるどころかむしろ気持ちよくなってきたよ」
「それはよかった」
水は治癒効果もあるし防御にも使えて便利でいいな。
「風呂には入ったりしていたのか?」
「いいや。シャワー室はあるにはあるんだけど、モンスターが大量にいて行けないんだよ」
「それならちょうどいいな。お湯に変えるから汗や血が流れるまでゆっくりしてるといいよ。服も濡れないようにしてるから気にしなくていい」
「凄いスキルだな…羨ましいよ」
お湯に変えるとめちゃくちゃ気持ちよさそうにしている。
約3日間お風呂に入らなかったら気持ち悪いもんな。
「あの、私達も水無瀬くんと同じようにお湯で包んでくれませんか!?何日もお風呂に入っていなくて辛くて…」
うんうん!と激しく頷く女性の社員が6名いる。
この怪我人の名前が多分水無瀬なんだろう。。
いくつも同時に出すのは難しいな…
頑張って3つが限界だ。
「2人ずつなら用意できるよ。それでもいいなら…」
「「「「「「お願いします!!!!!!」」」」」」
「わ、わかった」
迫力が凄い…。
どれだけ我慢してたんだ?
2人ずつお湯で包むと2人とも気持ちよさそうにしていた。
「お兄さん、後で俺達も頼む!」
この場にいる全員、お風呂を我慢してたんだな。よく耐えたよ…。
その後、全員に順番ずつお風呂替わりの水を用意することになったが、皆の顔色も空気も明るくなったので良しとするか。




