24話
「満足したか?」
「ワンッ!」
魔獣肉は1つがかなり大きかった。
アニメとかででてくる骨付き肉みたいだった。
「行くか」
「ワンワンッ!」
「おっと」
カゲツが抱っこしてほしかったのか飛びこんできた。
「甘えん坊だなぁ」
抱っこはいいけど顔をペロペロ舐めるのはやめてほしいな。かわいいけどさ。
来た道を戻る。
如月さんの娘や他の人達はもう帰ったのか。
響華が死んだ場所、俺が初めて人を殺した場所に戻ってきた。
「やっぱり最悪な気分だな」
「ワフ?」
「お前は気にしなくていいよ」
頭を撫でると気持ちよさそうにしている。
今回は精神的に疲れたな。
帰って寝よう。
歩いて戻ると時間がかかるし、ステータスを上げておくか。
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名前:燈黒 翔琉 レベル:25
職業:忍
HP:825 MP:350
筋力:59 防御力:1
速度:40 知能:2
感覚:30 運:1
スキルポイント:0
<スキル>
隠密 煙幕 風 空蝉 まきびし 水
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知能も上げておいた方がいいのかな?
運も気になるしどうしよう。
これからのことを考えながら歩いていると気がつけば1階まで来ていた。
入口の前には警察官の早乙女さんがいた。
「お疲れ様です、燈黒さん」
「俺のことを捕まえにきたんですか?」
「いいえ、今回のことは正当防衛として処理しております。お気になさらず。ですが、世間では良い行いとは言えない行動ですので、何か言われる可能性があります」
「そうですか」
捕まるかもと考えていたからよかった。
「外は騒がしいので、今回も私達が家までお送りいたします」
「助かります」
ここからでも外の声が聞こえる。
ものすごくうるさい。
「ではこちらへ」
早乙女さんに案内されたのは俺が入ってきた道とは違う道だった。
「非常用出口ってやつですか?」
「そうですね。此方からなら人が少ないです」
少なからず人はいるんだな。
まぁ少ないならいいか。
そのまま早乙女さんに案内され、車に乗り込んだ。
「今回も家に着くまで質問の方よろしいですか?」
「はい」
「それでは、まずその子犬はなんですか?モンスターですよね?」
カゲツに名前をつけると、頭の上のモンスター名が消えたから完全にただの子犬に見える。
鑑定士である早乙女さんだからすぐにモンスターということがわかったんだろう。
「魔獣の卵というものを手に入れたんです。それを孵化させたら産まれました」
「ワンッ!」
「どうやって手に入れたんですか?」
「ボスを倒したときの特別報酬です」
「なるほど」
早乙女さんは素直にメモをとっている。
「俺が嘘を言っていると思わないんですか?」
「思わないですね。嘘を言うメリットがないでしょう?」
「まぁそうなんですけど…」
「燈黒さんだから信じているんですよ」
真正面からそういうことを言われるのは苦手だな。
どういう反応をすればいいかわからない。
「それでは2つめの質問です。今回のボスと前回のボスはどちらが強かったですか?」
「前回ですね。知性があって戦うのになれた戦士が相手だとかなりしんどかったです」
「逆に知性のない獣の方が戦いやすいと?」
「はい」
もう一度戦うなら絶対にキメラがいいしな。
「なるほど。それでは最後の質問です。もう一度、人を殺したいと思いましたか?」
「思うわけないだろ…!」
「失礼しました。そうですよね」
運転手の人がチラチラ後ろを見てきている。
目が合うと慌てて前を向いて運転を再開した。
「人を殺すことに喜びを感じる方がたまにいるんですよ」
「あの感触を好むなんてイカれてる…」
「実際いるんです。覚醒者になってそういった方が増える可能性もあります」
「狂った世界になりましたね」
「困りましたよ。本当に」
空気が重くなったな。
「ワンッ!ワンッ!」
「どうした?」
さっきまで外を見ていたのにいきなり吠えだしたと思ったら早乙女さんに飛びついた。
「え、あ、イタッ!」
「おい、噛むな!」
「グゥゥッ」
「威嚇もするな。」
「ワンッ!」
「おい」
「…ッ!クゥン…」
「人を襲うな。わかったか?」
「ワフ…」
躾って大変だな。
うちの猫はたいして躾もしてないのに色々覚えたからこういうのは初めてで困る。
「あはは…完全に飼い主ですね」
「すみません」
「いえいえ、大丈夫ですよ」
そんなことを話していると家についた。
「ありがとうございました」
「いえ、こちらもありがとうございました。またよろしくお願いしますね」
「また?」
「東京と北海道の災厄もお願いする可能性があります」
「聞かなかったことにしますね。さようなら」
「あ!ちょっと!」
やだやだ。休みたい。辛い。
ほとんど3日間連続でモンスターと戦ってるんだぞ。
「ただいま」
「おかえりー。あ!もしかしてカゲツ!?」
「なんで知ってるんだよ」
「ずっとテレビ見てたもーん。お疲れ様、お兄ちゃん」
「ありがと」
天がカゲツを抱っこしたそうに見てたから渡すと、ペロペロしたりして仲良くしている。
「あ、お兄ちゃん先にお風呂入ってね。臭いから」
「酷すぎだろ」
「事実でーす」
「おじさんには効くんだよ」
「そういえばもうすぐアラサーかぁ。そのわりに老けないよね」
「今更フォローいらねぇよ」
「事実でーす」
生意気な妹だな。
「お風呂場に着替えとタオル置いてるから入ってね」
「はいはい」
「それじゃあカゲツは私と行こっか」
「待て。カゲツも風呂で洗う」
「あぁそっか。わかったー」
意外と物分かりがいいときもあるんだよな。
お風呂場まで連れて行くが大人しい。
シャワーからお湯をだしても怖がらない。
「怖くないからなー」
「ワンッ!」
「熱くないか?」
「ワォン!」
「気持ちよさそうだな」
カゲツはお風呂が好きみたいだな。
動物用のシャンプーがあるのでそれを使って身体を洗ってやる。
「飲んじゃダメだからな」
「ワフッ」
「えらいぞー」
カゲツの身体を洗い終わったあと、湯船の中にいれてあげた。
めちゃくちゃ気持ちよさそうにしている。
満足してるならいいか。
風呂からあがったあとは念のため湯を張り替えておいた。
俺のスキルの水をいれたので治癒効果もあるし綺麗なはずだ。
カゲツを抱いてリビングに行くと飼い猫のランが足元まで寄ってきた。
「この子が気になるか?」
『気になるわ。その子はだれ?』
「え?誰の声だ?」
龍と天が笑っている。
「なに笑ってんだよ」
「実は、ランも覚醒者になったみたいなんだよ」
「え?マジで?」
「大マジ!覚醒者にしか声が届かないみたいだからお母さんは何言ってるかわかんないみたい」
ランのことを見るが、見た目はいつも通りなんだよな。
『翔琉。その子はだれって聞いてるんだけど?』
「カゲツだよ。今日産まれた赤ちゃんだから優しくしてやってくれ」
『ふーん』
「ワ、ワフ?」
カゲツが警戒している。
ランの声が聞こえるようになっただけで急に圧を感じるな。
『まぁいいわ。おかえりなさい、翔琉。他の猫には手をだしてないわよね?』
「え?だしてないけど…」
『そ。ならいいわ』
ランってこんな話し方なのか。
もともと姫みたいな性格だとは思ってたけど、本当に姫みたいな奴だな。
可愛いからいいんだけどさ。
カゲツがビビってる。
お前、魔獣だよな?しかも狼。なにビビってんだよ…。
ランは母親の近くで丸まっている。
「ランはなんて言ってたの?」
「お兄ちゃんにおかえりってことと、カゲツに誰だー!って聞いてた」
「そうなのね。カゲツも話せるの?」
「話せないよ」
「そう。おいで、カゲツ」
「ワンッ」
母さんがカゲツに手を伸ばすと歩いていった。
『止まりなさい』
「ワンッ!」
『お利口ね。ママは弱いから守ってあげないといけないの。わかった?』
「ワンッワン!」
『わかったなら近付いていいわ。そのかわりに、怪我でもさせたら許さないから』
「ワフン…」
動物同士で会話している…。
ランにカゲツの躾も任せようかな。
この感じなら言うこともしっかり聞くだろ。
「ふふふっ、2人とも仲良しね」
「まぁ仲良しと言えば仲良しか?」
『仲良しじゃないわよ』
「そうですか…」
「なんて?」
「仲良しじゃないってさ」
「あらあら」
母さんがカゲツのことを撫でてもランは怒らないし、少しは気を許してるだろう。
「そうだ、翔琉。如月さんからお金をもらっておいたわよ」
「いくらぐらい?」
「ふふふ、いくらだと思う?」
「100万ぐらい?」
「残念、1000万円よ。翔琉の口座に振り込んでもらっておいたから」
「マジで…?」
「わざわざ嘘なんてつかないわよ」
1000万…1000万!?
わぁおわぁお!
何買おっかなー?
とりあえず新しいpcでも買おうかな?
「お兄様!私はお寿司が食べたいです!」
「俺はなんでもいいな」
「じゃあママもお寿司が食べたいなー」
「父さんが帰ってきたら食べに行くか」
「やったー!お兄様大好き!」
「はいはい」
龍は食べれたらなんでもよさそうだもんな。
それから父さんが帰ってくるのを待っていたら電話がかかってきた。
見たことない電話番号だな。
「もしもし」
『出てくれてよかった。如月風夏です。覚えていますか?』
「覚えていますよ。大金をありがとうございます」
『娘を助けに行ってくださったんですから当然です。むしろ少ないぐらいです。もう少しお渡ししたかったのですが、葵さんに止められまして…』
「母さんに?」
もっともらっとけよ!
『あまり大金を渡しすぎると仕事を辞めるかもしれないからと』
「あー、なるほど」
『ご理解頂けて助かります。今回は本当にありがとうございました。貴方のおかげで娘が無事に帰ってくることができました。それなのに、娘が失礼な態度をとってしまい申し訳ございません』
「テレビを見ていたんですね。気にしていないのでかまわないですよ」
あのときはムカついていたが、もう割り切ることができたからどうでもいい。
『それでまた、お話があるんですが…』
「まさかまた災厄関係じゃないですよね?」
『言いにくいのですが、災厄のことで…』
東京?北海道?どっちだ?
「ちなみに場所は?」
『東京です』
東京かぁ…。
どちらかと言えば北海道がよかった。
帰りに海鮮とか食べて帰りたかったなー…。
「また家族が取り残されたんですか?」
『取り残されたのは社員です』
「もしかして、如月さんの会社で災厄が起きたってことですか?」
『そうなります。また助けていただけませんか?報酬は今回の倍払います!』
「災厄が発生して3日ですよ?生きてる人がいるとは思えないですが…」
『生きてます!社内に覚醒者が20名ほどいるみたいで、弱いモンスターの場所で待機させてるんです!それに、まだ違う階で動けない人もいるみたいで…』
なるほど…。
生きてる覚醒者が最低でも20名か。
「その20名でボスを倒したらいいじゃないですか」
『貴方みたいに戦える人ばかりじゃないんです!』
それもそうか。
そういえば響華は災厄の中を自由に出入りできたよな。
「外には出られないんですか?」
『覚醒者は全員試したそうですが、出られる人は1人もいなかったそうです』
なら響華ってめちゃくちゃ特別な人間だったんじゃないか?
本当に残念だ…。
「如月さん、忘れてると思うんですけど、俺は3日間連続でモンスター達と戦っているんですよ」
『…はい』
「それなのにまだ戦えと言うんですか?」
『…申し訳ございません。燈黒さんが行くなら同行すると言ってくれている方がいるんです。ですが、燈黒さんが行かないなら行かないと言っていまして…』
「もしかして桜井みかですか?」
『はい、そうです』
なにやってんだよアイツ…
行くのか?
メリットは金と経験値。
デメリットは死ぬ可能性。
…はぁ、もう。
俺が行かなくて社員の人達が死んだら見殺しにしたみたいじゃん…。
「わかりました。行きます」
『本当ですか!?ありがとうございます!今すぐ迎えに行かせます!』
「はい…わかりました」
『それでは準備しますので失礼します』
「はい。わかりました」
やっちゃったなぁ…。
とりあえずみかにメッセージを送ろう。
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翔琉:おい、なにやってんだお前
みか:風夏さんから連絡きたんだね。ちゃんと断った?
翔琉:断ってねーよ
みか:え?うそでしょ!?翔琉ずっと戦ってるじゃん!
翔琉:断ったら見捨てるみたいだろ。そんなことできねーよ
みか:ごめん、翔琉なら断ると思ってた。でも一緒なら大丈夫だよね!会えるの楽しみにしてるから!
翔琉:楽観的だなぁ…
みか:また後でね!
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みかと一緒ならなんとかなるだろ。
それにカゲツもいるしな。
カゲツのレベルを上げながら進めば大丈夫だろ。
天に言ったら怒られそうだな…。
リビングに行ってさっきあったことを話すと案の定、
「お兄ちゃんのバーカ!アラサー加齢臭!」
酷い言い草だ…




