黒木駆除作戦 4
ガラードに事情説明も終わり昼食を済ませた後、モモが作戦決行にあたる騎士を連れてきた。
「ガラード、怪我なかったぁ?」
シュヴァルツァ同様にモモにも頭を撫でられるガラードだが、今度は振り払わなかった。
ん?と疑問に思った時にツェルクがこそっと、
「モモは強すぎて振り払えないからな。」
と呟いたので、あぁと笑みを浮かべて納得した。
騎士は数十人で、集落の出入口で見かけた顔もあった。
「火が得意な子たちをメインにしたわ。」
と語るモモに、びしっと敬礼で答える騎士達。思わず苦笑いして片手で合図するだけにした。
「いつでも行けるわ。」
「マルス、獣人族やマーシャット側からの連絡は来た?」
私はマルスを見ると、手元の文鳥を窓辺から離したところだった。
「あぁ、作戦ポイント付近には近づかないように伝えた。獣人族の集落にはすでにムーファ達、マーシャット冒険者ギルドメンバーが到着したらしい。」
「そうなの?早いね。」
「マーシャット冒険者ギルドはほとんどが獣人族で構成されてるからな。森を駆けるのは慣れてるはずだ。」
マルスはフードをかぶり直すと、私に近づいてきた。
「俺は獣人族側にいた方がいいだろう、途中寄っていけるか?」
「あぁ、なら僕が送ろう。そのまま獣人族の集落で待機してるよ。」
作戦に参加しないミーゲルが快く引き受けてくれた。それを小さく笑いながらマルスはすっと頭を下げた。
「すまない。」
「気にしないでいいよ。それよりムーファと知り合いなのかい?」
「あぁ。良くしてもらってる。」
おっと、意外な交友関係が広がった。
「アネモネちゃん。」
モモが私に話しかけてくる。
「私は騎士団長として指揮を執るから、一緒にはいけないけどごめんねぇ。」
「いえ、そちらを全部任せてしまうので。」
と言う私に、モモはそれをあまり気にしてなさそうに話を続ける。
「でねぇその代わりに、再従弟を同行させたいけどいい?」
「ん?再従弟、ですか?」
モモの再従弟、というとその人もシュヴァルツァのお孫ズの一人なのか。
私が聞いたところで、モモが騎士の中から一人を呼んだ。
ボブカットの群青色の髪に青色の龍眼を持ち、黒の鎧に短パンにブーツという出で立ちだが、キリッとした顔の少年だった。
目の前に来たシルトは私よりも身長が低く、サラ位の小ささで、それでも騎士なんだとしたら彼の実力はかなり高いのが分かる。
「この子が私達の再従弟のシルトよ。」
「初めまして、アネモネ様。ツェルクのお守りはお任せ下さい。」
ニコッと品のよい笑みを見せるシルト。その笑みはなんとなくシュヴァルツァに近い気がした。
「おい、シルト。お守りって何だ?」
聞こえていたようで、ツェルクがシルトの頭にぽんと手を置いた。それを気にすることなく、彼を見上げてシルトが話す。
「そのままの意味です。ツェルクはブラックトレントに取られないように"風雷の飛脚"に集中してください。」
「言われなくてもそのつもりだが、そのお守りってのはなぁ。」
苦笑いしながらツェルクはシルトの頭をくしゃくしゃさせるが、当の本人は嫌がる様子もなく撫でられ続けている。
「嫌ですか?」
「いやぁ、その見た目で言われるとなぁ。」
「見た目は関係ないです。」
シルトは髪型を整えなおし、キリッとした表情でツェルクを睨むように見上げた。
「複雑なんだよ。確かにシルトは強いが、チビッ子に任せてしまうのも、大人としてなぁ。」
「確かにツェルクは僕より年上ですが、それは関係ありません。」
ツェルクの気持ちがわかるよ、うんうん。
「はいはい、頼んだよ。」
「不満ですが、いいでしょう。」
シルトは改めて私に向き直り、きちんと敬礼する。
「改めて、よろしくお願い致します。」
「ええ、貴方もサラちゃん達同様に普通の友人として接してくれると嬉しい。」
「む、わかった。」
おお、柔軟性のある対応ができるいい子だね。
シルトは近くにいたサラにも声をかけ、仲良く話をしている。
視線を移せば、モモがガラードの頭をなでながら単独行動を控えるように話している。
私の隣にいるツェルクはミーゲルとマルスの身を案じて話している。
─────いいな、仲良しで。
私には兄弟達はいない、一人っ子だ。
親戚付き合いもあまりなく、田舎に住む祖父母だって年に一回会うか会わないか位だった。
この光景をみていると、羨ましくて仕方がない。
「アネモネ。」
ノインが申し訳なさそうに私に声をかける。多分、私の心の内を察したんだろう。
「ちょっと羨ましかっただけだよ。」
「何の話だ?」
隣にいたツェルクが私達の会話に割り込んできた。
「ツェルクさん達を見てると、仲良しで羨ましいという話をしていたんです。」
「ん?フツーだろ?家族なんだからな。」
悪気もなく当たり前のように語るツェルクに、サラと共に近づいてきたシルトはふと顔が曇った。
「お気持ちはわかります。」
シルトは再び笑みを浮かべて話し始める。
「私は生まれてからずっと父と共に旅をしていて、モモ団長達に会ったのは随分後だったんです。」
「あぁ、そうだったね。もう随分と昔のことのようだよ。」
ミーゲルが懐かしそうに目を細めた。
うん、その言い方だと、軽く100年くらい経ってそうな気がする。
「ドラゴンズキャッスルに来た時はビックリしましたが、今は優しい兄弟に会えて嬉しいです。」
シルトの言葉に、モモ達はそれぞれ笑みを浮かべた。ガラードはすぐにプイッとそっぽを向いたが、笑ったのは見逃さなかった。
ぐへへ、仏頂面なイケメンの微笑は心のカメラに撮影済みだぜ。
「そうだ!ならアネモネ、私の妹になってよ!」
良いことを思い付いた!と、サラが私に抱きついてそんな提案をした。
「えっ?」
確かに嬉しい提案なんだけど、見た目的には私のがお姉ちゃんなんだけどなぁ。
「私にはシルトって弟がいるけど、妹は居なかったんだ!ねぇねぇ、妹になってよ!」
「えっ、えーっと。」
気安く"はい"と言えないと思って、ノインやモモ達を見るが、ノインは小さく笑いながら頷いたし、モモ達はぱあぁっと笑顔が咲いた。
「あらぁ、私は大歓迎よぉ?」
「うん、僕も嬉しいかな。」
「賛成するぜ!見た目も娘、というよりは本当に妹っぽいしな!」
モモ、ミーゲル、ツェルクが続けて歓迎してくれた。サラも嬉しそうに頷き続け、隣のシルトもにっこりと品のよい笑みを浮かべている。
「おい、ガラード。お前はどうなんだ?」
「巻き込むな。」
「連れないなぁ、こんなに可愛い妹が増えるんだぞ?」
ガラードは私をチラ見して、すぐそっぽを向いた。
「勝手にしろ。」
「よし!あとは、モリスだけだがあいつならオッケーするだろ!?」
ツェルクが私の手を取ると、まるで合図のようにモモ達が次々と手を重ねてくる。
「改めてよろしくな、アネモネ。」
「────はい。」
一気にこんなに、兄姉が増えると思わなかった。
でも、今なんだがたまらなく嬉しくなって笑って頷いた。
近くにいた騎士達から拍手があがり、歓迎されたことを実感すると、また嬉しくなってしまった。
この後、話し合いの結果。
私はサラやシルトよりも下の末っ子となり、まだ会ってないお孫ズのモリスを含む姉三人、兄四人、そして龍人族の長というお祖父ちゃんまで出来た。
黒木「イチャコラしてねぇではよ来いや!」
作者「やりたかった。反省してない。」
黒木「おこだよっ!」




