黒木駆除作戦 2
本当に美味しい朝食を食べ終わり、私達はシュヴァルツァ達龍人族とブラックトレントの駆除について話し合っている。
勿論、ツェルクも参加してもらっている。
「アネモネ様、作戦があるとは?」
昨日の晩餐会の時に私に考えがあると伝えていたので、シュヴァルツァ達は気になっていたようだ。
「出来るかわからないですが、まずは色々と確認したいことが。」
そう言って私はノインを見る。
「我らが偉大なる主神から、"風雷の飛脚"を借りれたかしら?」
「うん。」
私の言葉にその場にいた全員がざわついた。
「なら、私の作戦は。」
大きなテーブルに広げられた魔の森の詳細な地図を指差しながら、私が考えていたことを伝える。
「─────なるほどな。」
真っ先に反応したのはツェルクだった。
「確かにこれなら一網打尽、かつ被害は少ない。ですが、良いのですか?」
シュヴァルツァは顎に手を当て、ツェルクの方を向く。
「あぁ、大丈夫だ。何せ、天使様が二人もつくんだろう?」
「勿論。私達はツェルクさんから離れられませんから、そちらの負担のが多くなるのですが。」
私が申し訳なく呟くと、シュヴァルツァのみならず聞いていたモモやミーゲルが逆に申し訳ない、と謝罪する。
「重要な役割を貴女に任せてしまうのは、我々としても辛い。」
「構いません、ブラックトレントの掃討はお任せしました。」
思ったよりもあっさりオッケーを頂けた私の作戦に向かって、それぞれが動き出し始めた。
そのまま席に残ったツェルクとミーゲルの姿を見てから、私は口を開く。
「本当にいいの?ツェルクさん。」
「あぁ、今動けるのは俺だけだ。」
その瞳には決意が秘めていた。これ以上の念押しは不要だろう。私は頷いた後にノインを向く。
「じゃあ、きちんと話を詰めようか。」
私の作戦は単純なことだ。
ツェルクに"風雷の飛脚"を持ってもらい、海岸近くの集落等がない場所に居て貰う。
そこにブラックトレントがきっと寄ってくるから、龍人騎士団と協力しながら掃討していく。
場所や掃討にあたる騎士等をシュヴァルツァとモモで探してくれることになった。
「マーシャットの方には俺から文鳥を送った。ムーファから魔の森の獣人族に話を付けてくれるはずだ。」
マルスは窓辺から紙で出来た鳥を放つと、私達の席に戻ってきた。
「あとはアイズ兄上に連絡だな。」
「お願い。」
名前を聞いてドキッとしたが何事もなかったようにマルスに伝えると、彼は気にすることなく席を立って部屋から出ていった。
「さっき聞いたが、跡継ぎはあいつのアニキだってな。」
ツェルクがマルスの背中を追ってか、ドアを見つめている。
「ええ。」
アイズの顔がちらついて気持ちが反れかけたので、心の中でそれを払う。
「ブラックトレントの問題が落ち着いたら、今度は魔人族の方ですね。本当は先に何とかしたいところですけど。」
「あぁ、気にするな。親父達はヴァーレデルド王国から離れる気がない様子だし、ここに逃げてきた魔人族は、元々龍人族と仲がいいやつらだからしばらく置かせて貰える話がついてる。」
ツェルクは置かれた紅茶を一気飲みした。
「それに、亡くなった同胞を弔ってやれてない。やつらがいなくなれば、それも出来る。」
苦々しい表情でツェルクは呟いた。私はそうだよね、と心の中で思った。
襲われた魔人族の集落には、未だにブラックトレントが魔人族の魔力の残り香にひかれて、そこから離れていない。
かなりの数がそこにいるため、彼一人では太刀打ちできなかったらしい。
「この作戦が成功したら、集落の方も行うように話してみましょう。」
「あぁ、頼む。俺からよりも、御使いであるアネモネのほうが聞いてくれそうだからな。」
ツェルクは近くにいた龍人族のメイドに紅茶をお代わりし、再び紅茶を口にした。
さりげなくラムネを一粒食べてたのは見逃さなかった。
シュヴァルツァだけ戻ってきた時に、先程の話をしたところ。
「勿論です、彼ら魔人族は我々の同胞と同じ。アネモネ様にこちらからお願いしようと思っていたところでした。」
とあっさりオッケーが出た。隣で聞いていたツェルクもミーゲルもホッとしていた。
「ミーゲル、ガラードはどうした?」
そんな中シュヴァルツァがミーゲルに話しかける。ミーゲルはきょとんとした顔に変わる。
「昨日、魔の森の見張りで出た以降、私のところに報告しに来てないんだが知らないか?」
シュヴァルツァの言葉に、さぁっと顔が青ざめるミーゲルとツェルク。
「まさか。」
「あぁ。そのまさか、な気がするぜ。」
二人は顔を見合わせて話す。それが気になって私が問いかけた。
「何かあったの?」
「シュヴァルツァ様、外出許可を下さい。」
「俺も。ミーゲルが一緒ならいいだろ?」
シュヴァルツァに食って掛かるように二人は話すも、シュヴァルツァ本人も慌てて二人を落ち着かせる。
「二人とも、話が見えません。何を焦っているのですか?」
二人の焦り方は尋常じゃないほどだ。私も気になって話を黙って耳を澄ませる。
「もしかしてですが、ガラードが単独で魔人族の集落にいるかもしれないのです。」
「何故そんなことを?一人では到底太刀打ち出来ない数がいるんですよ。」
シュヴァルツァの意見に、二人は首をふった。
「あいつなら単独でも取り返しにいくさ。なにせ、あそこはあいつの故郷でもある。」
ん?その言い方だとそのガラードって人は魔人族なのかな?
「しかし、騎士団に所属してる以上勝手な行動は慎めと命じたはず。」
「シュヴァルツァ様なら、ガラードの生い立ちをよくご存じのはずです。」
ミーゲルの言葉に黙ってしまうシュヴァルツァ。
「シュヴァルツァ様。」
ようやく話の腰を折れそうなタイミングで、私が声をかける。
「これから魔人族の集落の状況を偵察に行こうと思っていたところです。私達も同行させていただきます。」
「アネモネ様!」
「私がいれば大丈夫。必ず二人を、ガラードさんという方もお守りしますから。」
私はシュヴァルツァに微笑むと、彼は考えこんだ後諦めた顔で頭を下げた。
「こんなお願いは申し訳ないですが、私の孫達をどうぞよろしくお願いします。」
────ん?孫達?
とツェルクやミーゲルを見ると、二人は口々と感謝を言った。
「ありがとな、アネモネ!」
「さ、ツェルク!支度しよう!」
二人は私の疑問にも答えず、さっさと部屋を出ていた。シュヴァルツァも苦笑しながら見送っていた。
「あの、シュヴァルツァ様。」
「はい?」
「シュヴァルツァ様は、お孫さん何人いらっしゃるんですか?」
私の問いにシュヴァルツァは笑顔で答えた。
「アネモネ様が会った中ではモモ・ツェルク・ミーゲル・ガラード・サラですね。それとあとは2人いますね。」
「ん?ツェルクは魔人族では?」
「あぁ、ツェルクとガラードの母親は私の最初の娘で魔人族の長と結婚しましてね。彼らはハーフになります。」
マジかよ、龍人族と魔人族のハーフってむしろ子供出来るんだ!
「モモとサラが二番目の娘、ミーゲルは長男の息子なんですよ。」
なんとも子沢山、いや孫たくさんなお祖父様だ。確かに言われれば雰囲気は似ていたけど、まさかミーゲルまで孫だったとは。
「なら、余計に急いだ方がいいですね。お孫さんが心配でしょう?」
「長と言う立場がなかったら、私が行くところでしたが本当に申し訳ない。アネモネ様、どうぞよろしくお願いいたします。」
シュヴァルツァに笑みを見せてから、私達もミーゲル達の後を追った。
孫なのか、ひ孫なのかわからん台詞になっていた。
ちゃんと見直そうな?私。




