黒木駆除作戦 1
ばふっ!
「ぐぉっ!」
とあまりにも女子ぽくない声をあげて、寝ていた私のベッドに衝撃がきた。その衝撃に寝起きどっきりか!と、かなりビックリして飛び起きようとしたが、
「アネモネおはよー!」
そこにはベッド一杯の大きさの青い龍がいた。とても大きいトカゲに羽と角があるものが、こんな近距離にいるとこうも圧力感があるのか。
百科事典で見たには見たけど、こうも迫力が違うとは思わなかった。
驚きのあまりに起き上がったままで固まる私が楽しいのか、目の前の龍は笑っているようだった。
「───あ、サラちゃんか。」
ようやく落ち着いた私が、冷静に声と体毛などで判断した結果。
寝起きどっきりを仕掛けたのはサラだったことに気づいた。
まさか龍形態で来るとは想像すらしなかったな。
「あはは、ビックリした?」
と龍形態から可愛らしい寝間着に人化したサラに、私は笑って頷いた。
「うん、すっごく。でもサラちゃん重くないんだね。」
「それは魔法で軽くしてるよ?使わなかったらアネモネ潰しちゃうじゃん。」
ごもっとも。
「あれ?ノイン達は?」
ゲストルームは同室だがベッドは別室だったので、ノインもマルスもいるはず。
「しらなーい。窓から入ってきたから。」
サラの言葉を聞いて窓をみれば、朝の日差しと風に揺れるカーテンがみえた。
あ、なるほど。そっちか。
「私にはやっていいけど、マルスはダメだよ?」
「えっ?」
「うわああああっ!!!」
窓からマルスの叫びが聞こえ、時すでにお寿司。
「あっちはツェルクがいったよ?」
「万全な布陣、痛み入ります。」
「えへへ。」
うん、誉めたつもりはないよ?
「実験台になりにきたとはな!!その命絞り尽くすまで使ってやるから安心しろ!"光鎖"!!!」
「うおっ!待て待て!ちょっとご子息にもイタズラしたかっただけだぜ!ルドルフは笑ってくれたから気に入るとあああああ!!!」
「ああぁ、マルスさん!そのまま捕まえててください!すぐに行きますからぁ!鍵!鍵どれぇ!?」
あちらの騒ぎに廊下側からも、ミーゲルの悲鳴が聞こえる始末。
「─────賑やかだね。」
「うん!」
「なんかごめんね?あんまりビックリしなくて。つい固まっちゃったよ。」
なんとなくそうやって詫びると、サラちゃんはううん、と首をふった。
「起きるまでアネモネの寝顔見てて退屈しなかったから大丈夫!」
「ッ!」
無意識にバッと顔を両手で覆った。そのあとすぐに我に返って、サラを見た。
悪いことした自覚があるらしく、しゅんとした表情に変わっていた。
「ごめん、嫌だったの?」
「────ううん、昔からの癖なの。顔が不細工だったから、隠す癖があってね。」
「そんな!アネモネが不細工なワケないじゃん!とっても幸せそうな寝顔だったよ!」
サラにそう言われて、私は苦笑いしながらそうだよね、と呟いた。
「───"この顔"ならそう言われないよね。」
心の中で折り合いをつけ、今度はちゃんと笑う。
「サラちゃんも可愛いから、負けちゃうなぁ。」
「えへへ。」
隣のマルス達の騒ぎも落ち着いた頃に、ふわぁっと欠伸をしてライガが呑気に起き出した。
サラを連れて部屋を出るとリビングのような広間になり、そこには光の鎖です巻きになったツェルクと説教をするミーゲル、マルスがいた。
まだ寝てるのかノインの姿はない。
「あぁ、アネモネさん───ってサラちゃん!なんでいるの?まさか!」
「いえ、私が事前に頼んであったんですよ。ね?サラちゃん。」
私はサラにそう言うと、きょとんとした後にサラはうん!と大きく頷いた。
なんか咄嗟にかばっちゃった。
「あっははははは!そう言うことか!」
ツェルクはす巻きにされながら笑った。ごめん、そっちはフォロー出来ません。
「ツェルク?」
「マルス、悪かったな。おふざけが過ぎた。」
「────次はないぞ。」
素直に謝るツェルクに、マルスはぷいっとそっぽ向いた。
「じゃ、まずは朝食だね。ボクが用意したから着替えてきてね。」
ようやく丸く収まったのを確認して、ミーゲルが手を叩いた。
そういえば、と見ればミーゲル以外全員寝間着のままだったので各自部屋に戻って、着替えることになった。
今日の服装は昨日のうちに決めていた、魔法士スタイルにする。
盛り袖やフリルを使ったワイシャツに、首に黄色の水晶がついたジャボと、濃い紫のスラックスにサイハイブーツをはいた。
ワイシャツの上に、背中にベルトがついた黒茶のベストでしめると腰回りがキレイになった。
マントを腰の辺りまでの丈にし、いつものように短剣を身につける。
今回は長剣を腕輪にしまって、短杖を腰に下げる。
髪型は帽子をかぶるので、髪型は髪の先にカラフルなビーズがついたゴムで軽くまとめた。
イヤーカフとイヤリングは忘れない。イヤーカフだけはずっと付けっぱなしにしている。ライガと念話するのに付けてないと聞き取れないからだ。
そして、最後に。
「うん、やっぱこれよね!」
鏡を見ながら私は決めポーズをする。
かぶっている帽子は、魔法使いならでは鍔の広いとんがり帽子だ。
色は青紫で、かぶっていてもズレもなくピッタリと頭にフィットしている。
「あー朝食食べるなら今は、はずしておこうかな。」
と、マントと帽子を一旦腕輪にしまってからタンスをしまうと、コンコンとノックが聞こえた。
「はーい。」
ドアを開けるとノインだった。私を見てほっこりしたような、安心した顔になった。
「おはよう、ノイン。珍しく寝坊したね。」
「ううん、天界にいた。」
「あれ?なんかあったの?」
チラッとノインは後ろを見るので、肩越しに見ればミーゲル達が私達を待ってるようだった。
「後で話そうか。」
「うん。」
「ここの料理、美味しいから早くいかないとなくなっちゃいそうだね。」
料理、ときいてノインは目を輝かせたのをみて、私は部屋を出た。
「アネモネ。」
隣に立ったノインが名前を呼ぶ。振り返ると、ノインは少し口角をあげて優しく呟いた。
「魔法士も似合うね。」




