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新たな旅路は 4

ノインのオススメの食堂で夕飯となり、マーシャットにある冒険者ギルドに向かう。


「この時間が一番混まないからな。」


というマルスの言葉を聞いて、私達はマーシャットの冒険者ギルドへ入る。


建物はイズリールの冒険者ギルド位でやはりどこも内装は同じらしい。

なんか、決まりでもあるのかな?


人は少なく、カウンターには一人の受付がいた。私達が近づくと、受付の男性はニコッと笑った。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。アネモネ様、ノイン様。マルス様はお久しぶりですね。」


名乗ってもいないのに私達の名前を呼び、マルスのことは久しぶりと口にした男性。


「あぁ、あの調査依頼だな。あいつはいるか?」


「はい、ギルドマスターですね。執務室におりますよ。」


わかった、といって私達に目配せするマルスについていく。階段を登り廊下を進みながら、私はマルスに先程のことを聞く。


「ここのギルドマスターも知り合いなの?」


「あぁ。さっき話したよな、獣人族の知り合いがいる話を。」


「うん。まさか、その人がギルドマスターだったの?」


マルスはあぁ、とやや自慢げに笑った。


「喧しいが人情に厚い良い奴なんだ。さ、着いたぞ。」


執務室、と書かれたドアの前につき、マルスがノックをすると中からバタバタと近づいてくる音が聞こえた。


「マルスか?!」


「あぁ、入って良いか?」


「待ってたぞ!」


と声と同時にドアが開く。


出てきたのは、黄色の虎の顔を持つ男性だった。黒髪は毛並み同様にフワフワしていて、両手は虎の前足と同じなんだが、とても器用にドアノブを開けた。

服はタンクトップにスラックスだが、肩に上着を羽織った姿だった。


────一瞬ぎょっとしたけど、獣人族ってこんな感じなんだね。


「ん?なんだ、マルス。ついにお前にも番が出来たか!?」


「ち、違うッ!彼女は友人だ!」


「何だよ、真っ赤な顔して言うなよ。照れ隠しにもならんぞ。」


がっはっはっ!と豪快に笑いながら、マルスの頭をガシガシと撫でる獣人の男性。


「とりあえず入れ入れ!」


マルスも特にいやがることなく、頭をくしゃくしゃにしつつも部屋に入るので、私達もつられてるように中に入った。


中はアッシャルダの冒険者ギルドマスターと同じ内装の部屋で、机にはたくさんの書類にソファがいくつかある位だ。


獣人の男性はどかっとソファに座ると、私達もいくつかあるソファにそれぞれ座った。


「アンタは祭りの最終戦参加者だったか?んー、確かア、アネ──。」


「アネモネと申します。こちらが仲間のノイン、従魔のライガです。」


「おぅ。俺は"黒雷の虎"ムーファ、この冒険者ギルドのマスターだ。よろしくな。」


ニカッと笑うムーファ。虎が笑うとこんなに威圧感あったんだね。


「で、どうしたんだ?マルス。」


「あぁ、実はヴァーレデルド王国の魔法研究所にスカウトされたんだ。」


「おぉ!良かったなー、お前の魔法研究が認められたんだな。」


ムーファに言われて、マルスはやや照れた様子だった。


「手ぶらで行くのは気が引けるから、ブラックトレントの研究記録と資料を持っていこうかと思ってな。」


「ブラックトレントぉ?こりゃまた危険なものに手を出すなぁ。」


ムーファの言葉に私はえっとした顔でマルスを見るが、彼は何事もなく話を続ける。


「拡大し続ける"魔の森"の問題は放置できないだろう。これはアッシャルダだけじゃない、この大陸に住む者達全体の問題だ。勿論、危険は百も承知だ。」


マルスはそう話すと、ムーファは豪快に笑った。


「あんまし無理すんなよ?」


「あぁ、自分の力量はわきまえてる。それに俺には天使様がついてるからな。」


そう言って私をチラ見したので、それに私が軽く睨むとニヤニヤと笑うマルス。


「天使って───おいおい、昔話を持ち出すなんて、冗談にもほどがあるぞ?」


ムーファは呆れているが、概ね事実なので私は黙っていることにした。マルスはすぐ真面目な顔つきに戻すと、話を続ける。


「最近のブラックトレントは変わらずか?」


「あぁ、変わらずだ。現地調査したら海の岸まで到達してたぜ。」


「海にまでかッ!」


思わずマルスが声を上げた。


さっき街道で見た地図では、大陸の端まで魔の森の表記になってたから、きっとそういうデカさなんだろうと思ってたけど、実際にあそこまで広がったのね。


「早いな。前回俺達が調査したのが2ヶ月前だったか?」


「あぁ、間違いない。たった2ヶ月であそこまでいっちまった。」


ムーファは頭をくしゃくしゃしながらため息をこぼした。


「そろそろ獣人族だけじゃ無理だ。龍人族や魔人族とも話し合いを持たねぇとマズイな。書簡は出してあるが、どっちも今のところ何も返答がねぇんだわ。」


「そうか、だろうな。どちらも魔の森の問題は重大だが、別の問題を抱えてる。手が回らないだろうな。」


ん?別の問題?


なんだろうと聞こうとしたけど、今は関係なさそうなのでノインに念話で聞く。


『別の問題って?』


『魔王の足を龍人族と魔人族が封印してる。』


『封印?!そ、そんなにスゴかったの?』


私はビックリしたが、顔に出すとマルス達にバレるので何とか平静を保つ。


『現段階で最強。』


『うわぁ、倒されてて良かったぁ。会いたくないわぁ。』


とノインの言葉を聞いて、私は嫌だと口にしつつも魔王のことを知る必要があるな、と思った。


ウィリアのくれた百科事典に載ってるかな?


「状況はわかった。ムーファ、助かった。後はこちらで出来ることをする。」


「あぁ、協力出来なくてわりぃな。あ、そういえや新しい魔帝王にアイズがなったんだったな。」


ムーファは目を細めてマルスを見る。


「譲っちまってよかったのか?」


その言葉に私は彼がマルスのことをよく知ってるのを察する。ムーファもちらりと私を見たので黙って頷いた。


「ムーファ、俺はそんな器じゃない。知ってるだろう?」


「はは、違いねぇ!こーんなへっぽこが魔帝王になっちまったら、俺らが困っちまうな!」


豪快に笑うムーファを見て、マルスははぁとため息をついた。


「それがなければ、アンタもモテるんだがな。」

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