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いざ、未来に紡げ 1

アッシャルダ城内、広い廊下を歩く私達。


あれから数十分後に呼ばれ、多くの人たちから激励や歓声を受けながら、アッシャルダ城に入った。


門を潜り抜け、真っ直ぐな廊下を歩き続ける。祭りの飾り付けがされているも、緊張感と厳かな空気に満ちていた。


「アネモネ、ルールを再確認しておこう。」


マルスは先頭を歩きながら、私に話しかける。


「先程の試合とは変わらないが、違いだけ説明しておく。」


違うのは、魔力壁に触れても負けにならないことと、腕輪型の魔法道具に魔力残量が表示されないものに変わること、らしい。


「後は一緒だ。それから─────例の作戦のタイミングは任せる。」


マルスはニヤリ、と意地悪な笑みで言った。私も似た笑みで返した。


「任せて。ちょっと派手な演出になるけど、別にいいでしょ?」


「派手な方がインパクトがあるからな。」


そんな会話の中、ライガが私の肩から頬擦りして念話を飛ばす。


『朝のやつか?』


『そうそう。やる時は言うから離れてね?』


『分かってるよ!』


私はライガの頭を撫でると、ご機嫌よく喉をならした。


「そろそろ着くぞ。ノイン、アンタは俺についてきてくれ。」


「ああ。」


玉座の間に繋がる大きなドアの前に立つ私達。


「じゃ、入るぞ。」


その重たいドアを両手で開けると、中にはすでに数十人が一部のエリアに固まって立っていた。

そして、玉座の前にはアイズの姿が見えた。


「最終戦の参加者をつれてきました。」


マルスの声が玉座の間に響くと、一斉に視線が集まったが、それぞれに視線を変えていく。

ふと、視線のひとつに気づいて見返すと、車イスに黒ドレスをまとったクロイアだった。


「マルス、まだ時間はあるかな?」


「ああ、開始まではまだあるが。」


「クロイアさんと話したくて。いい?」


マルスが頷いたのを見てから、私はクロイアに近づく。あちらも気づいたようで、傍にいたローブを着た少年に声をかけて、車イスを押させて近づく。


「クロイアさん、お身体は大丈夫ですか?」


「ええ、そちらの彼に助けてもらってね。貴女の仲間だったのね。」


クロイアは軽く手をふると、ノインは会釈を返すだけだったので、私はかまわず話を続ける。


「無事で良かったです。大体のことはアレックスさんから聞きました。」


「そう、助けてくれて感謝するわ。」


笑みを浮かべたクロイアが、舞台上で見た彼女よりも弱々しくみえるのは、車イスに乗ってるからか。


「で、何か用かしら?」


「あ、いや、ただ心配で声をかけただけで、特別用事があったわけではないです。」


私の言葉にクロイアはきょとんとした後に、先程よりもやや軟化した優しい笑みを見せた。


「あら、優しいのね。そんなお人好しに、魔帝王が勤まるかしら?」


「もしかするかもしれませんよ。」


と意地悪な笑みで返すと、クロイアは真剣な顔つきに変わった。


「貴女、本気なのね?」


「さぁ?アイズ様次第、と言っときますか。」


「────そう、それなら問題ないわね。」


クロイアはあっさりとした態度で言い切った。


「一つ、聞いてもいいですか?」


「何かしら?」


「私情抜きで、アイズ様は魔帝王にふさわしい方だと思いますか?」


私の質問にクロイアは少しの間のあとに、自信ありげに妖艶な笑みを見せた。


「思うわ。誰よりも市民を想い、誰よりもアッシャルダを想うアイズ様だから。」


クロイアの答えを聞けたので、私は満足げに笑った。


「ありがとうございます。聞けて良かったです。じゃ、私はこれで。」


「貴女、変わってるわね。」


「よく言われます。」


意地悪な笑みを浮かべて私は、クロイアに一礼して立ち去った。


次はどうしようか、と悩んでた時。


「アネモネさん。」


立ち止まっていた私達に、エイルとジェルドが揃って近づいてきた。


「エイル様、ジェルドさん。」


「よしてください、アネモネさん。もう私は王子ではありませんなら。」


エイルは照れ臭そうに笑って話してくれた。その後ろにいたジェルドは深々と頭を下げた。


「先日はご尽力感謝申し上げます。」


「いえ、お気になさらず。それよりも魔帝王代行は大変ではありませんか?」


私は会釈を返しつつも、ジェルドに世間話のように話しかける。


「いやいや、亡き親友の代行となれば苦ではありません。」


あら、魔帝王の周りって友人だらけだね。まぁ、そうかもな。急に王様やれ、って言われたら信頼できる人で固めたいか。


「それよりも、貴女が最終戦の参加者と聞いた時は驚きましたよ。何やら、運命的なものを感じますな。」


ジェルドは髭をさわりながら感慨深げに目を伏せた。


「前魔帝王であるルドルフも、アッシャルダの危機を救った英雄に名を連ねてから、魔帝王になりましたからな。」


「そうなんですか。」


そんな逸話があったとは知らなかった。ジェルドは懐かしいようで目を細めた。


「ジェルドさん、一つ聞いてもいいですか?」


「何ですかな?」


「私情抜きで、アイズ様は魔帝王にふさわしい方だと思いますか?」


クロイアと同じ質問を投げ掛けた。ジェルドは自信ありげに即答した。


「当然ですな。」


きっと他の側近や大臣も同じ思いなんだな、と納得できる答えだったので、私は笑って頷いた。


「ちなみに、私はダメですか?」


「それはどうでしょうな?」


ジェルドは苦々しく笑って濁した。前魔帝王を支えた彼ならド素人が王政をやらせた苦労をよく知ってるだろう。


そんなことを察すると、私も同じ顔になった。


「アネモネさんが魔帝王になっても、私もお手伝いしますね!」


エイルがキラキラスマイルで応えてくれた。イケショタにそんなこと言われたら可愛いの何の。


「ありがとうございます、エイルさん。」


「でも、アイズ兄様は負けませんから!」


そんな言葉が返ってきて、私はきょとんとした後に笑った。


「そうだと、いいですね。」


「あ、申し訳ありません!アネモネさんに負けろと言ってるようなものでした!」


「いえ、当然ですよ。私も精一杯頑張るつもりです。その上で負けるなら本望です。」


エイルの肩をそっと触ると、片手でガッツポーズをしてみせると、彼はパアッと笑った。


「そろそろ始めますので、あちらへ。」


ジェルドが私にアイズの近くへ誘導されると、そのまま玉座の前に立った。アレックスやマルスの方を見てから、ごほんと咳払いする。


「これより、祭りの最終戦を執り行う。」


厳かな低い声が響くと、シンと静まり返った。


私はすぐ隣にいるアイズをチラッと見ると、アイズは集中してるのか、真っ直ぐとジェルドを、玉座を見つめていた。


「アイズ・フォラレ・ルーデルダント、その力を持って魔帝王の玉座を望むか?」


「はい。」


ジェルドはアイズにそう語りかけ、それを受けてアイズは当たり前のように応え、ひざまづいた。

それを見てから、ジェルドは私に視線を移す。


「アネモネ、その力を持って魔帝王の玉座を望むか?」


「はい。」


私も同じようにひざまづいた。ジェルドは周囲を見回して、両手を広げた。


「この者達から新たな魔帝王が誕生する。我々は新たな歴史の証言者である。これから起こることを事実と受け止めようぞ。」


周囲からも膝を下ろした音が続き、ジェルドが立ちなさい、と言われてから一斉に立ち上がる音が玉座の間に響いた。


「では、始めよう。」


ジェルドがそう告げると一歩下がった。すぐに魔力壁に囲まれ、準備が整ったのかアレックスがジェルドに合図を送った。


「アイズ様、アネモネ様。」


ジェルドは柔らかな優しい笑みを見せた後に、私達を見つめて話す。


「悔いの残らぬように。」


少し重みのある言葉を残して、ジェルドは背後にあった玉座に近づき、私達に向き直る。


「両者、位置に付け。」


アイズは私に視線を向けて、こちらへと誘導してくれた。先程よりもやや離れた位置に、魔法陣が張られた床があった。

柔道のスタート位置と同じような配置にある魔法陣で、アイズは左へ向かったので、私は右に向かう。


魔法陣に入ると、光を増してから消えた。腕輪型の魔法道具が光りだして見れば、起動したのか腕輪が放つ光が脈動していた。


「二人とも、よろしいですかな?」


ジェルドにそう問われて、アイズと私は頷いた。


「では、最終戦開始ッ!」


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