確かな絆と 6
カフスとイヤーカフを勘違いしていたので修正しました。
調べろよ、私!
アッシャルダで人気のない場所に下りて、マルスがいる魔法士ギルドへ向かう。
裏門から入り、マルスの部屋のドアを叩くと、すぐに本人が顔をのぞかせた。
「あれ?起きてたの?」
「少し前に目が覚めた。ノインがくれた飲み物が効いてるのか、だいぶ調子がいい。」
そう言いながら、マルスは優しく笑ってみせた。昼間の顔とは全然違うのを見て、体力がちゃんと回復してるようで心の中でホッとした。
「ごめん、ちょっと相談があるの。まだ時間あるなら、中で話せるかな?」
「ああ、大丈夫だ。何かあったのか?」
マルスが私達を中に招き入れ、椅子を勧めた。
「うん。御使いとしての仕事が出来てね。マルス、魔帝王の証ってどうなってる?」
「さすがは御使い様だな。そんなことまで知ってるのか。前王である父上しか魔法金庫が解錠できなくて、ジェルドが困り果ててる。」
「でしょうね。さっき別件で天界エレルドに行ってたんだけど、生命の属神様と一緒に前王が会いに来てね、預かったものがあるの。」
と腕輪から黄金の鍵と巻物をテーブルに置いた。マルスは唖然としたが、すぐに持ち直したようで巻物に手を伸ばした。
飲み込みが早くて助かります。さすマル。
「なるほど、これは複雑だな。それもだが、代々使う者の魔力で封印を上書きしているようだな。今回の場合は、父上の魔力を上回らないといけないのか。」
「アイズ様なら出来そう?」
「うーん、おそらくは問題ないだろう。」
マルスはそう言うも若干心配になってきたのか、顔が曇った。
私はノインを見ると、ノインは少し考えた後に頷いた。
「問題ないみたいだから、大丈夫でしょ?」
「そうか。なら、これを一体どうやって渡すか、だな。」
あっさりしてるな。慣れたね、マルス。
「御使いのことは隠す気はないから、それを明かしてもいいけど、マルスみたいには信じてもらえないでしょうね。」
「俺の場合は、アネモネ達の人間離れした能力を知ったからだからな。同じように見せてみるのもアリだが、今の状況で見せたら魔帝王に担ぎ上げられるのは目に見えてるな。」
「うーん、何か良い方法ないかな?」
と私が問いかけると、マルスは考えを巡らせた後に、何かを閃いたのかすっごく意地悪な笑みを浮かべた。
────ホント、その笑みだけアイズそっくりなんだよね。
「博打に近いが、乗るか?」
この意味深な笑みのマルスの提案に、私達は乗ることになったのだ。
前夜祭の運営の為に、マルスと会場付近で別れると、アレックスがこっそりと私を呼んだ。
「これはお礼だ。楽しんでくれ。」
右手で謝りながら、左手を私に差し出す。何かと思い受け取ろうとすると、銀貨2枚がちゃらんと落ちたのが見えた。
見えてすぐにぎゅっと私の手を握り、アレックスがこそっと耳打ちする。
「マルスをよろしくな。」
イケボに囁かれ、ぎゅっと手を握れて、私は惚けかけたが、なんとか平静を装って笑った。
「じゃ、また明日。」
アレックスが手をふりながら見送られた私達は、会場付近に立ち並ぶ、出店を見て回ることにした。
食べ物だけでなく、アッシャルダならではの魔法道具や武具、洋服までもあった。
「うわぁ、結構あるね。まるで日本の祭りみたいだね。」
「うん。」
時間帯はまだ夜にならず、夕陽が差し込む頃。ある程度の人混みはあるが、まだ歩ける範囲なのでゆっくりと出店を見て回る。
武具や魔法道具を扱う出店が多くあったが、日用品や魔法付与がされた武具が並ぶ為、今の私には必要がなさそうだった。
まぁ、武具の属神ダンガや服飾の属神シュリアが加護をつけて作り上げた傑作を、わざわざ手放すなんてあり得ないし、日用品もノインが万能すぎて必要なかったりする。
なので、チラチラ見るだけでそれらの店はスルーしていく。
そんな中で最初に立ち寄ったのは、ドレス姿の美女が立つアクセサリーの出店だった。
「いらっしゃい、可愛らしいお嬢さん。試着もいいわよ。見ていって。」
優しく囁くように話す店主に、笑みを見せた後にじっくりと眺めていく。
並ぶアクセサリーは、可愛いものから気品のある高そうなものまで多彩で、値札を見ると銀貨1枚から金貨10枚と幅広い。
気になるものを手に取ったり、アクセサリーの合間に立つ鏡をのぞきこむと、店主は営業トークを始めた。
「それは月光石をメインに、純金で細工したネックレスね。月光石には暗闇でも見えるように"暗視"の付与がついてるわ。」
試着も良いと言われたので、首元のジャボとボタンを外して、ネックレスをつけてみる。
半月の純金に月光石が満月になるように細工されたデザインは、首元で照明にあたってきらめいた。
ノインに見せると、可愛いと微かに笑って返してくれたので、キープしてもらった。
他にも、聴覚が鋭くなる薔薇の柄に彫られたイヤーカフや、筋力をあげてくれる太陽をモチーフにした指輪、店主にオススメと言われた波型でのブーツ留めを選んだ。
試着も終わったので首元のボタンとジャボを元に戻しておく中で、ふと店主がノインや足元にいたライガを見て、妖艶に笑った。
「お仲間さんも、お嬢さんが選んだイヤーカフと柄違いがあるわよ。お揃いでいかが?」
と隣にいたノインにも勧める店主。呼ばれたノインがピタッと動きが止まった。ライガはにゃあ、と一鳴きして賛同しているようだ。
おお!店主、ナイスアイディア!
確かにノインとお揃いは欲しい!!
「どれですか?」
私が聞くと、店主は並べた展示からいくつか取って、私達の目の前に並べ直してくれた。他にも花の柄がたくさんあったんだね。
「──────これと、これを。」
いつの間に動き出したノインが藤と百合を選び、私の分もまとめて会計を済ませる。
「お買い上げありがとう。仲良くね。」
と店主が妖艶な笑みで手をふる店から離れながら、買ってもらったアクセサリーを受け取る。
「ありがと、ノイン。お揃い、嬉しい!」
「ううん。自分もお揃いは嬉しい。アネモネ、そのイヤーカフは加工していい?」
ノインがそう言うので、イヤーカフだけ一旦預ける。それをノインはパッとしまったのを見て、何をするか気になって聞いてみる。
「どうするの?」
「念話ができるようにする。」
「なにそれ!?便利すぎ!」
私が飛び上がる位に驚いていると、ノインはライガを抱き上げて私に向けた。
「ライガからもお願いされた。」
「えっ、まさか、ライガとも会話できるようになるの!?」
「うん。」
「ノインマジ神!」
「属神だよ?」
この流れるような会話が楽しいのと、イヤーカフの効果にこれからの楽しみも増えて、私はライガを抱き上げて頬擦りした。
「ライガと話したかったんだよ!なんとなく気持ちは伝わるけど、細かいことはわからなくて困ってたんだよね!」
「ライガもそう思ってる。」
「ノイン、本当にありがとう!」
嬉しくて両手をつかんで上下に振り回すと、ノインは困った顔をしつつも、微かに笑ってくれた。
ぶんぶん、ぶんぶん、ぶんぶん。
ノイン「アネモネ、興奮しすぎ。」
アネモネ「あ、ごめん。」
ノイン「────────。」
アネモネ「ん?どうしたの、手を見て?」
ノイン「何でもない。」
アネモネと握手した上でぶんぶん振り回され、笑顔で見つめられて嬉しくて手を眺めてるノインの図。




