確かな絆と 3
アイズとの話が終わり、アッシャルダ城から城門を出た。
昼の時間をとっくに過ぎてるが、私達はようやくエンジンがかかる頃だ。
城門から出た後、ローブ型にしたマントをロングカーディガンに変えた。気分転換でやってみたが、チラッと見えた店のガラスに映る姿に問題なかった。
「とりあえず、メリルさんの宿に戻ってお詫びしつつ、アレックスさんとこにお手伝いにいこっか。」
この後の予定をノインとライガに伝わると、それぞれが頷きと一鳴きで了解を得ると、早速歩き出した。
街の中は、出店の準備や祭りに備えて動き回る多くの人達が忙しなく動き回っていた。
「──魔帝王と──様がお亡くなりに──。」
その忙しく動く中で、訃報が流れて聞こえた。
驚いたことに街灯のところにスピーカーがついていて、そこから流れていたことだ。
「すごい。こっちにもあったんだね。」
「アッシャルダだけ。けど広まるかも。」
とノインと話しながら人の波を避けていくと、ようやく陽風屋にたどり着いた。
そこには私達を待っていたかのように、メリルが出入口で立っていたのだ。
「まぁ、アネモネ様、ノイン様。」
「メリルさん、せっかく宿を借りたのに夜に戻れなくて申し訳ないです。」
「いいえ。先程、マルス坊っちゃまが来られて、話は伺ってますよ。さ、中へどうぞ。」
とメリルは温かな笑みで迎え入れてくれた。中に入り、大広間に向かうとバイキング形式の昼食が並んでいた。
少し量が減ってたりしてるのは、他の客も食事したからか。
「余り物ですが、よかったら召し上がってください。」
「いただきます。」
私が何かを言うよりも先に、ノインがすでにお皿を持ってスタンバってた。
「サンドイッチと紅茶をお願い。」
とノインに頼むと、私とメリルはソファに座った。
「マルス坊っちゃまから話を聞きました。私からもお礼を言わせてください。」
すっと頭を下げるメリルに、私は両手で制止ながら話を続ける。
「いえ、私達の目的と重なっただけですから。」
「それも聞いています。それでも感謝しきれません。マルス坊っちゃまを守って下さり、ありがとうございました。」
そう言ってメリルは、心からこもった感謝を私に向けてくれた。
なんか恥ずかしいなぁ。
「大切な友人ですから。えっと、どのくらいの事情を聞いてますか?」
話しちゃいけない内容もあるだろうし、と思って聞いたが、メリルは察してくれたのか寂しげな笑みを見せた。
「私は元々、マルス坊っちゃまの専属メイドでした。ダルク様の魔法のことも存じてましたし、何度もお会いしたことがあります。」
私があぁ、と納得してると、徐々にメリルは悲しげな笑みに変わっていく。
「ダルク様も大変な身の上でした。このアッシャルダでは、魔力を行使出来ない、ということは恥とされていました。魔帝王様はダルク様を守る為に、余程のことがない限り、城からは出さないようにしてました。」
それが親の心子知らず、になっちゃったわけか。
「ダルク様は城の中で様々な研究をして、わずかな魔力でも扱える道具や日用品を開発しました。勿論、このアッシャルダでは相手にされませんでしたが、他国や年老いた王族には好評で、ダルク様の名前はこの都市よりも、他国の方が有名だったりします。」
魔帝王の息子は秀才揃いだったんだね。
「その事が、ダルク様を苦しめる結果になったのかもしれません。そんな中で、魔帝王や王妃様すら望んでお生まれになった、マルス坊っちゃまが羨ましかったんだと思います。」
「王妃も?」
「ええ。実は王妃様と側室であるマルス坊っちゃまのお母様は、親友同士だったんです。王妃様にとって最愛の魔帝王様と大好きな親友の子供を、本人達以上に楽しみにしていらしたんです。」
すごっ、普通なら妬んだりするもんなのに。
「誰からも祝福されたマルス坊っちゃまは、側室の子でありますが、才能が秀でていました。遠見鏡や魔力壁はマルス坊っちゃまが研究に携わり、完成したと言っても過言ではありません。」
「あぁ、マルスもそんなこと言ってたな。」
あれは確か、アッシャルダに入る辺りだったかな。
「そうでしたか。どちらも未だに他国から製作依頼が来るくらいですよ。」
「あっ!それで思い出した!」
私はぽんと手を叩くと、メリルは不思議そうな顔で私を見た。
「メリルさん。マルスがヴァーレデルド王国の魔法研究所からスカウトされてるのはご存知でしたか?」
「ハイ、ずっとお断りしていらっしゃいましたね。」
メリルはマルスの専属メイドだったから、やっぱり知ってたか。
「祭りが終わったら、そのスカウトを受けてヴァーレデルド王国に行くことになったの。」
「まぁ!ようやく決心されたんですね!先程はそんな話をしてませんでした。」
あ、もしかしてサプライズする気だったかな?なら悪いコトしたかも。
「あ、そうでしたか。しまったな、先走って言っちゃったな。」
「きっと言い出せなかったんですわ。良かった、ようやくアッシャルダに縛られずに、新しい一歩を踏み出せたんですね。」
踏み出せなかったのは、実はダルクの邪法の影響かもしれないけどね。
「それで道中の護衛を頼まれまして、メリルさんに聞きたいことが。」
「なんでしょうか?」
私は頬をかきながら、メリルに聞く。
「マルスが嫌いなこととか、食べれないものとかありますか?」
「えっ?」
「あ、いや。ほら、一緒に旅をすることになるから、知っときたいなと。本人は言いたがらないだろうから。」
メリルはきょとんとしたあと、クスッと笑った。
「さすがはご友人ですね。よくご存知です。」
その笑みは嬉しさから悲しげな、寂しげな笑みに変わっていった。
「会えなくなるのは寂しいですが、マルス坊っちゃまの新しい一歩に、私がお力添え出来るなら。」
そう言うメリルから、私はマルスの好き嫌い等を詳しく聞き取った。
うへへーイケメンの秘密、ゲットだぜ☆ミ
マルス「っ(ぞわわ)」
アレックス「どうした?マルス。」
マルス「嫌な予感がした。」




