暗闇は足音なく 3
色々書いてたら、長くなりました。
読みにくかったり、誤字があればご指摘ください。
作戦会議は同じ部屋で、テーブルと軽食を囲みながら行われた。
深夜に行われているこの会議は、今まさに危機的状態であることを証明している。
「今のままでダルクを取り押さえたとしても、恐らく誤魔化されるだけだ。何としても証拠を見つけなければ。」
「何を以て証拠とするんですか?」
私がアレックスに問うと、彼はそうだな、と呟いて考えてから答える。
「まずは邪法にかかっていれば、検査すればきちんと判明する。が、この方法は半日かかる。時間がかかってしまうが、マルスには後で検査を受けてもらう。」
「ああ。」
「これでも充分証拠だが、間に合わない可能性もあるし、何より────魔法士ギルドにもダルクの息がかかっている者もいるんだ。」
アレックスは申し訳なさそうに項垂れた。
「検査をするとなれば、恐らく察知されてダルクに伝わってしまうだろう。この手は状況次第では使えない証拠になる。」
「なるほど、厳しいですね。」
私は何かないか、顎に手を当てて考えてみる。
「後は、ダルクが邪法を実際に使うところをおさえるしかないか。」
「現行犯ですね。」
アレックスは頷いたが、あまりいい顔をしない。確かにいい手段ではないからだ。
「こちらで出来ることは、私達がアッシャルダ城に潜入して、ダルクに制約を課せる位ですね。」
「ッ!可能なのかい?」
「まぁ、確実に出来るとは言えませんけど。」
と濁したものの、こっちには万能属神のノインがいるから、多分出来ると思うけどね。
「私達は邪法の根絶が目的ですから、制約が課せれなかった場合は────わかってもらえますよね?」
私も選びたくないが、最悪な事態を容認してもらおうと、アレックスとマルスをきちんと見て言う。
彼らは顔を伏せたが、仕方がないという諦め顔で頷いた。
「無論、私達だって邪法を根絶するからといって人を殺したいわけじゃないですから。」
「わかっているよ。君達の崇高な目的のために、致し方ないと理解できる。もし、そうなればその責は私が負うよ。」
「アレックス!」
マルスが立ち上がって反論しようとしたが、アレックスがまぁまぁと制する。
「もしもの時に、だから。」
「アレックスはこの魔法士ギルドマスターだ!責を取るなら、動機がある俺が適任だ。」
「待った、待った!私はまだ最悪な事態、と言ったでしょ。マルスに負わせる位なら、行きずりの冒険者である私達が負うから。」
ともうダルクを暗殺する話に刷り変わってしまっていた所に、黙っていたノインが私の肩を叩き、裏口側の扉を指差した。
「誰か来る。」
その言葉に、アレックスとマルスが首をかしげたが私はノインを見ながら、右手を剣の柄に手を置いた。
「誰かわかる?」
「─────マルス、にだ。」
「えっ?」
その場の全員がノインの言葉に、頭にハテナマークを浮かべた直後。
「マルス兄様ッ!マルス兄様はいらっしゃいますか!?」
少し強めのノックと共に、そのドアから悲痛な声が響いた。
マルスは声を聞いて誰か分かったのか、慌ててドアに近づいて開け放った。
そこには長い黒髪を後ろに縛り、愛らしい顔、黒いローブを羽織った子供が震えて立っていた。
「エイル!?何故、お前がここに!?」
マルスがエイルと呼ばれた子供に近づくと、エイルはガバッとマルスに抱きつくようにすがりついた。
「兄様が、ダルク兄様が!」
この一言から、私達の作戦会議が大きく変わるきっかけになるのだ。
エイルと呼ばれた子供は、アッシャルダ魔帝王の息子でマルスの弟だった。
「さぁ、紅茶を。」
ノインに淹れてもらった紅茶を差し出すと、エイルは震える手で受け取った。
改めて照明の元でエイルを見ると、低学年の小学生位の見た目であるが、未だに震えているのを見るとさらに幼く見えた。
何とか口にして、大きくため息をついたエイルがカップをテーブルに置いた。
「ありがとうございます。」
ニコッと小さく笑った顔は、その幼さや愛らしさは将来有望なのがわかる。
「エイル、一体どうしてここに?」
マルスが私の反対側の椅子に座ると、エイルは未だに震えているが、何とか話し始める。
「ダルク兄様が、謀反を起こしました。」
「ッ!!」
エイルの言葉はかなりの衝撃をもって、全員に受け入れられた。アレックスが口を押さえて真っ青な顔になる。
「まさか、さっきの邪法は。」
「──?」
「いや、構わず続けてくれ。」
アレックスを制して、マルスがエイルに話の続きを促した。
「はい。先程の夕食の際に、ダルク兄様が父上に君主制度の話をしていたんです。」
エイル自身は寝耳に水だった、と一言添えた。その言葉を聞いて、エイルがかなりの教養があるのを察する。
エイルの話とアレックスの予想は合致した。
魔帝王が君主制度の後、次の王が誰になるのかという話が及ぶと、ダルクには継承権を与えないと言い切ったのだ。
それを聞いたダルクは怒り狂いながら、魔帝王に食って掛かったらしい。
普通なら止めに入るのを想像するが、いつも魔帝王が魔法であしらうので誰もがその後の顛末は分かりきっていた。
だが、今回は違った────ダルクは邪法を使って魔帝王を洗脳してしまったのだ。
「やはり、そうだったか。」
「その後、私達兄弟と大臣を集めて、ダルク兄様は今年の祭りで自分を魔帝王になるようにしろ、と命令されました。」
実質、ダルクは次の魔帝王になれる実力は証明されたが、その方法が邪法だったのが一番許されなかった。
当然、エイルを含めた王子達も大臣達も、口には出さないものの、反対だった。
「何とか説得しようとした父上の側近と、立ち向かったシェルト兄様が、ダルク兄様の邪法で、自決させられました。うっ、ダルク兄様は、それも笑い、ながら、ううっ。」
途中から泣き始め、最後には言葉をつまらせて泣き出したエイル。
そりゃ、血の繋がった兄がもう一人の兄を無理矢理自決させて、笑いながら楽しむ姿は見たくはなかっただろう。
私が優しく背中をさすると、エイルは私に飛びついて泣き続ける。
本来は母親なりがしてあげることなんだが、エイルは誰でもいいからすがりたかったのだろう。
その姿は、王子ではない。まだ幼い子供なのだと実感するほどに震えていた。
あと全然関係ないけど、エイル"ちゃん"だと思ってたけど、王子っていうことはエイル"くん"なんだね。ずっと女の子だと思ってましたごめんなさい。
「クソッ!予想してたが、最悪だ!」
マルスは拳を握りしめて、吐き捨てるように唸った。
「緊急事態だ。今からアッシャルダ城へ向かおう。」
アレックスは椅子から立ち上がり、準備をしてくると私達に告げてから部屋を出た。
それを見たマルスも、部屋に置かれた棚から何かを出しながら支度を始める。
「エイル、アイズ兄上は無事か?」
マルスの言葉にようやく落ち着いてきたエイルが、涙をぬぐいながら答える。
「はい、私と同様にダルク兄様に従ったふりをして、大臣を集めて会議をしたいと今は会議室で話し合いをしております。」
「会議室、ああ、あの部屋か。」
場所を把握したマルスは杖をローブにしまった。
「アイズ兄様はマルス兄様に状況を伝えて助けてもらうように、と私を抜け道から逃がしてくださいました。」
「その抜け道、まだ使えるか?」
「ダルク兄様も知らないはずです。大丈夫だと思います。」
エイルは案内します!と気合いをいれて立ち上がった。気持ちは切り替わったのか、赤くなった目が不釣り合いなほど、凛々しくなっていた。
そこでようやく私達を見て、あっと顔を緩ませた。
「先程は失礼しました。えっと、」
「ああ、自己紹介がまだでしたね。私はアネモネと申します。こちらが仲間のノイン、足元にいるのが従魔のライガです。」
「ご丁寧にありがとうございます。私は現アッシャルダ魔帝王の息子、第五王子のエイル・フォラレ・ルーデルダントです。」
優雅な作法で一礼をするエイル。私も立ち上がって一礼を返すと、すぐ隣に移動してきたマルスを見る。
その視線に気づいたマルスが、咳払いをしてエイルに説明し始めた。
「彼女らは俺の友人だ。邪法に詳しくて、ダルクのことを相談していた。」
「そうでしたか!邪法の研究者までお知り合いとは、マルス兄様は交友関係がお広いのですね!」
たまたま偶然に出会って訳ありな関係です、とは言えずに私とマルスは苦笑いで誤魔化した。
「アネモネ、ノイン。」
マルスはキリッと真面目な顔つきに変わり、私達に向き直る。
「改めて、ダルクを止めるために、力を貸してほしい。」
少し王子っぽく差し出された手。私は迷うことなく掴んで握り返した。
「当然よ。私達の目的でもあるし。」
ね?っとノインに振るも、彼は静かにうなずくだけだった。
エイル王子の見た目の説明をしてませんが、
後に改めて描写します。




