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暗闇は足音なく 2

ちょっと長いです。

区切りが見つからなくて読みにくかったら、ご指摘ください。

コンコン、とノックの音が響いた。


ドアから現れたのは少し疲れた顔のアレックスで、私達が和やかにフルーツをつついてるのを見て、少し驚いている。


フルーツが美味しかったのか、まるまる一つ食べ終わったマルスはアレックスにいつもよりもやや優しい笑みを浮かべて挨拶する。


「起きたんだな、マルス。」


アレックスも優しい笑みを返していたのを見て、この二人には家族という絆がしっかりあるのに気づいた。


「体調はどうだ?」


「だいぶよくなった。」


アレックスはマルスに近づくと、良かったと呟いた。


「彼女達が見つけてくれたらしい。感謝しなさい。」


「アネモネ、ありがとう。」


自虐的なことを言うこともなく、マルスは持ち前のイケメンスマイルで礼を言った。


はい!私、邪法の根絶に尽力したいと思います!


「何があったのか、覚えているか?」


アレックスがマルスに問いかけると、マルスは頷いた。


「ああ、あいつに邪法を使われた。効果はなかったようで助かった。」


「いや、マルス。それは違う。」


二人の会話に割り込むのは悪いと思いつつ、私は先程ノインから聞いた話を伝える。


「貴方は打ち破ったんだよ、邪法を。」


「─────俺が?」


信じられない、と愕然としているマルスに、アレックスはそうなのか!と喜んでいる。


「良かったな、マルス!邪法は一度破れば、二度はかからないはすだ。」


マルスの無意識による健闘を称えて、アレックスはホッとした様子だった。


だが、そうも簡単に話は終わらなかった。


「いや、かかる。」


そう、アレックスの言葉をあっさりと否定したノイン。


「力量次第で何度でもかかる。」


「そ、そうなのか?」


ノインの言葉にアレックスは私を見る。私はノインの言葉には全面的な信用を置いているので、頷いて肯定した。


「そ、それならもし、」


震える声でアレックスが私達を見て話す。


「一度かかった相手に、それ以上の力で邪法を使ったら、影響を受けるのか?」


「受ける。」


ノインの言葉に真っ青な顔になるアレックス。


「では、まさか。いや、しかし。」


そして、そのまま思考の海に沈みこんだまましばらく帰ってくる気配がなくなった。

私は首をかしげてノインを見ると、肩をすくめただけだった。


さすがのノインでも、他人の思考までは読めないのかな?


「アレックス。」


マルスが心配そうに声をかけたので、ようやくアレックスはハッと我に返った。


「すまない、私はとんだ勘違いしていたようだ。」


「何故そんなに動揺したんだ?その勘違いでマズイことがあるのか?」


いつも見せない反応なのか、マルスはしきりにアレックスに問いかける。

真っ青な顔になりつつも、アレックスはマルスの問いに答える。


「ああ、非常にマズイ状態かもしれない。」


私達にも視線を向けてから、アレックスは話を続ける。


「もしかしたら、魔帝王が邪法の影響を受けているかもしれない。」


「えっ?」


私はここで魔帝王の名前を聞くとは思わず、固まっている間もアレックスは頭を抱えながら話す。


「以前、魔帝王は側室────つまり私の姉だが、彼女をかばって邪法を受けたことがあったんだ。当時の王子はまだ幼く威力がなかったせいか、魔帝王はあっさり打ち破った。我々も検査をしたが、問題なかったんだ。」


「そうだったんですか。」


「魔法士ギルドに残ってる文献では、邪法は一度打ち破れば二度目はかからないと記されていた。私達はそれを鵜呑みにしていたんだ。」


アレックスは真っ青な顔のまま落ち着かなくなってきた様子だ。その落ち着かない態度に私は先程のことを思い出した。


「の、ノイン。」


「うん?」


「さっき、マルス以外にも邪法が使われたって言ったよね?」


私のこの発言に、アレックスだけでなくマルスもバッと私達を見る。

ノインはこの場の空気がなかったかのようにそれを読まないまま答えた。


「うん。」


「誰か、わかる?」


「───────魔帝王。」


「ッッ!」


もう見なくてもわかるほど、アレックスとマルスが卒倒しかねないほど真っ青な顔になっていた。


「なんてことだ!魔帝王でも王子を止められなかったのかッ!」


「っ。」


アレックスは何かを思案しているのか、ぶつぶつとこちらも見ずに呟いている。

私がマルスの顔をうかがうと、マルスは顔を真っ赤にして震えている。


「アイツは、家族を、なんだと!?」


その怒りに染まるマルスを見て、私は顔を歪めてしまう。せっかくのイケメンも、怒りに歪むと気分が悪い。


「マルス、気持ちはわかるから、一度落ち着いて。」


「っ、お前に何がわかる!?」


「他人の私が、わかるわけがない。」


私がきっぱりと言い切ると、予想外だったのかマルスは唖然として私を凝視する。


「でも、家族が大事なのはわかる。だから、今は冷静になって。」


マルスの気持ちを一度突き放すような言い方だけど、この方が冷静になりやすいかな、と敢えていってみた。


すると、真っ赤だったマルスが落ち着いてきたのかいつもの無愛想な顔に戻ってきた。


「私にも、家族はいるよ。もう、二度と会えないけど。」


そう言いつつも、心の中では異世界にいますからね、と若干開き直った言葉で寂しさを誤魔化した。


「そう、なのか。すまない。」


「ううん。私のことは気にしないで。今いるマルスの家族のことを考えて。」


マルスはそうだな、と気持ちが切り替わったのかフードをかぶり直した。








アレックスも落ち着いて話が出来るまで数分待ち、ようやく話が進められた。


聞けば、邪法使いの王子────名前はダルクというらしいが、彼が邪法を使い出したのは幼少の頃で、危険と判断した魔帝王が制約をさせていた。


そのせいか、ダルクは幼少からしょっちゅう癇癪を起こし、メイドや大臣達に怪我人が出るほど、すごいものだったそうだ。


「マルスが産まれた時もかなり荒れて、よく姉さんとマルスに危害を加えようとするから、ほとんどこの屋敷で過ごしていたんだ。」


アレックスがそう語ると、マルスは少し懐かしく感じたのか、目を細めていた。

そんなマルスを見ながら、私は話の続きを聞く。


その後、側室であるマルスの母親が病死すると、次はマルスへの虐めに変わり、恐らくその辺りで制約を破って邪法でマルスをかけていた。


今までどれだけマルスに注意をしても、ダルクに逆らえなかったのは、その邪法の影響だったのだろう───アレックスが語る。


マルスは仕方がない、逆らってはいけないという強迫観念がまとわりついていたそうで、打ち破った今でも胸が苦しくなるのか、話している間も胸元を押さえていた。


「俺の腕の怪我だが、以前、剣術の稽古中にダルクがわざと切りつけたものだ。当時の師匠であるベナルドはその責をとって退役したんだ。」


「そうだったんだ。」


マルスは腕を握ると、辛そうな顔になった。私はそっと見ることしかできなかった。


「まぁ、事情はおおまかにこんなところだ。」


アレックスは頭をかきながら難しそうな顔に歪めてる。


「それでだが、ダルクが先程、魔帝王に邪法を使った理由は、恐らくなんだが。」


一度言葉を切って、マルスを見たあとに噛み締めるようにアレックスは呟いた。


「今年の祭りで新たな魔帝王がでなかったら、君主制度に改正しようという動きがある。」


アレックスが祭りとは別に、魔帝王の側近や大臣達のいつもと違う様子からそんな話がある、と聞いたそうだ。


「ダルクは恐らく、今年の祭りで自分も参加し、有力者はマルスに排除させ、最後に邪法で洗脳した魔帝王にわざと負けるようにしてあるのだろう。」


「なるほど、君主制度になったら確実に自分は継げない状態だし。」


私がそう言うと、アレックスは頷いた。ふと、マルスを見てそういえば、と質問する。


「でも、なんでマルスに排除させようと?」


それに答えてくれたのは、私の隣のベッドで座るマルス自身だった。


「俺が今年の祭りを主催する魔法士ギルドのサブマスターだからというのと、アレックスの甥だからだろうな。」


「正直、マルスから進言されたら私も信用してしまうだろうし、そこも狙ってだろうな。」


二人の間にある絆が確固たるものだ、とダルクは知っていたのだろう。それすら利用するとは、ホントにクソ王子様だわ。


「魔帝王が邪法の影響を受けているなら、明日にでも証拠を掴んで制約を課さないと、大変なことになるわね。」


私の言葉に、この場の全員が頷いた。


「なら、作戦会議しましょうか。」

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