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心は素直に 6

大通りに入ってすぐに気になる店を見つけた。

店先のショーウインドウには、獣らしきマネキンのようなものが、着飾ってあった。


お、ここはもしかして、従魔用のグッズがあったりするかも!


私はライガと共に、ドアを開ける。


「いらっしゃいませー。」


カウンターのところにいる女性の声が聞こえて、愛想のよい笑みで迎え入れてくれた。


「あら、フォレストキャットですか。」


女性はおいでおいで、とライガを呼んでいる。一旦私を見上げたライガに頷いてみせると、ライガはぴょんとカウンターに乗った。


どこから取り出したのか、女性はブラシを手にしてライガにブラッシングを始めた。


気持ち良さそうにライガは喉をならしている。


「ありがとうございます。」


私が礼をすると、彼女はいえいえ、と嬉しそうにブラッシングを続ける。


「この子のブラッシング中に、良かったら店内をご覧になっててください。あ、ブラッシングは料金取りませんからね。」


「気遣いありがとうございます。」


早速、店内の商品を見て回る。


多種多様な従魔用にアクセサリーだったり、洋服だったりは勿論、鎧や爪保護用の手袋などが様々で、しかも種類が豊富で驚いた。


四足歩行の獣用ブースはかなり充実していた。鎧は勿論、洋服やアクセサリーがかなりのエリアを占めていた。


「にゃあぁ。」


ライガが足元まで戻ってきた。気になったらしく、飾られている服や鎧に見入っている。


「大人しくて賢い子ですね。」


ブラッシングをやってくれた店員の女性が声をかけてくれた。


「良かったね、ライガ。」


私がそう声をかけると、ライガは一鳴きしてすぐに商品とにらめっこを始めた。


「カッコいい名前ですね。」


「オスなのでカッコいい方がいいかと思って。ここの商品は充実していてますね。」


私は気になる商品を手にとってみた。女性はええ、と笑顔で頷いた。


「色んなところから集めた自信のあるものばかりですよ。実際に従魔に関する商品はなかなか少なくて、私が作ったものが多いですが。」


「えっ、店員さんの手作り?」


「服とかアクセサリーがメインですが、鎧も一部は私が作ったものです。」


今さっき手に取ったアクセサリーを見る。細やかな細工が施された鎖の形の首輪なのだが、魔力も感じ、見た目もお洒落だった。


近くの服も手に取ってみる。四足歩行の動物特有の前開きタイプの服で、普段着みたいなものならタキシードやドレスタイプもある。

日本のペットショップ並に充実しているのだ。


「ライガ、気になるものある?」


着たいのかわからないので、本人に聞いてみるが、ライガはそれよりも鎧や爪保護用の手袋から目を離さない。


すると、ドアが開いて誰かが店に入ってくる音がした。


「いらっしゃいませー。」


女性の声に入り口をみれば、そこにはノインの姿だった。


「あ、ノイン。ごめん、迎えにきてくれたの?」


「うん。早く終わったから。」


ノインが近づきながら、私に微かに笑って見せる。


「見てみて、ライガ用に何か買ってあげたくてさ、見てるところだったの。」


手に取った洋服を戻すと、ノインと一緒にライガ用のアイテムを見て回るが、やはり、ライガは鎧の前で動かずに見ていた。


それを見ていたノインはライガと、鎧と爪保護用の手袋を見あっていた。


やがて、いくつかの商品を手に取って、カウンターに向かった。


「これ、ください。あと、あそこの鎧も。」


どうやらノインはライガ用に買ってあげるようで、足元でライガがすり寄っていた。


「お買い上げありがとうございました!」


全て袋に入れてもらい、私達は店からでた。ライガは嬉しそうにノインの肩に掴まっている。


「私からもありがとう、ノイン。」


「ライガは戦力になる。」


にゃあぁ、と嬉しそうに鳴くライガ。


確かにマッシュカウとの戦いでバレないように移動してたし、きちんとトドメを刺してくれてたし。


しかも、きちんと言葉を理解してくれるし、で大切な仲間の一人になりつつある。

なら、確かに一緒に旅するなら、ライガ用に鎧や爪保護用の手袋があってもいいね。


ノインが袋から革で出来た首輪を取り出して、それを私に差し出す。


「つけてあげて。」


その首輪には従魔の証拠の首飾りと同じものがついていて、革も青の染色と飾りがとても私の好みだったから、ライガに見せた首輪だ。


「これ、さっきライガに見せたのだ。」


「アネモネが選んだのがいい。って。」


そうか。ちゃんと見ていて、これがいいとノインに伝えてくれてたんだ。


「はい、ライガ。」


兵士からもらった飾りをはずし、革の首輪に変える。サイズを調整し、手を離すと確かに首輪がよく映えて似合っていた。


「にゃあぁ、にゃあぁ。」


ホントに嬉しかったのか、ノインにも私にも一鳴きしたライガ。気に入ってもらえてよかった!


「これ、返さなきゃね。」


「うん。」


大通りから門へ向かい、すぐ近くにいた兵士に話して返却し、Uターンして月猫亭へ向かう形になったが、それでもまだ夜にはならない程度だった。


月猫亭の前では、ローレンスが誰かと話していたが私達を見つけて、その人と話を切り上げて近づいてきた。


「お待ちしておりました。ご無事で何よりです。」


「持ってきた。」


「助かります、ではこちらへ。」


ローレンスの案内で中に入り、レストランを通って厨房に入った。


厨房にはシェフを含めた何人かが待っていたようで、私達を歓迎してくれた。


ノインが指示されたキッチンの上に手をかざして、マッシュカウの肉とキノコを出すとローレンスたちがおおぉ、と驚きの声を上げた。


「お客様がまさか、空間魔法をお使いとは。」


「すごいぞ、このマッシュカウの肉とキノコの量!」


「解体したばかりなのか?今すぐ冷却魔法を!」


ざわざわとシェフたちが動き出したので、ローレンスが私達をレストランへ避難させてくれた。


「本当に助かりました。ありがとうございます。」


ローレンスはすっと頭を下げ、私達に礼を言った。


「いえ、私達もマッシュカウの調査のついでみたいなものですし。」


「本日の宿はお決まりでしたか?もしよろしければ、今夜もお泊まりください。お代は昨日の分を含めて頂きませんので。」


その言葉に私達は互いに見合ってから、遠慮することなく甘えることにした。





贅沢な肉料理のディナーを満喫した私達は、各部屋に戻ってきた。


お風呂は夕食前に済ませたおかげで、ライガはすぐにベッドの枕元に潜って寝てしまった。


私は服の洗濯を済ませて、洗面所から戻るとテーブルに何か光るものを見つけた。


窓辺のテーブルに近づくと、そこには白と青を基調とした便箋セットと飛ばないように押さえられていた青い宝石が付いた銀細工のバレッタだった。


そして、小さなメモも挟まっていてこう書かれていた。


"手紙書いてもらうのに便箋渡し忘れてた!これを使って!このバレッタはシュリアから。こちらもぜひ!ウィリアより"


「わざわざエレルドから送ってくれたんだ。」


バレッタを手に取って見てみる。


キレイな青い宝石が月明かりに煌めき、魔力を感じるところから、また何かしらの付与をつけてくれたみたいだった。銀細工の形が波をイメージさせるデザインが細かく、手間がかかってるのがよく分かる。


「これは明日つけよっと。」


腕輪にバレッタをしまい、次に便箋を手に取ってみる。

シンプルなデザインで、封筒と封をするための蝋と印がついていた。

印を見ると、アネモネの花を中心に据えた華紋だった。


「うわ、オシャレ。こっちの文字覚えてないけど、辞書見ながら書いてみるかな。」


私は腕輪から羽ペンと辞書を取り出して、早速手紙を書き始めた。


『主神さんへ。』


慣れない文字に悪戦苦闘しながら、手紙を書き進めていく。


『まずは、私をこの世界に招いてくださり、ありがとうございます!』


辞書の例文を元に、私の今の気持ちを書き綴る。


『私は新しい人生を、満喫させてもらってます。最初は戦うのが怖かったけど、今はようやく飲み込めた気がします。』


静かな窓辺で、インク補充いらずの魔法の羽ペンを紙に滑らせていく。


『ノインの同行をさせてくれてありがとうございます!右も左もわからないままファレンジアに来るよりも、本当に心強くて助かっています。ライガも小さいながらも頼もしく、私にはもったいない位に頼もしい仲間です!』


書いててわかったけど、べた褒めすぎかな?事実だからいっか。


『これから色んなことがたくさんあると思いますが、なるべく合間を見て手紙を書きますね!世界がすぐには変えられないかもしれませんが、頑張って見ようと思います。』


最後に感謝の言葉で締めて、便箋に封蝋する。アネモネの花の華紋を押すと、突然ふわっと手紙が浮いて、パッと消えてしまった。


これで届いた、のかな?


次にウィリアにも感謝の手紙を綴り、同じく封蝋すると、ふわっと手紙が浮いて消えた。


「あはは、これは楽しい。」


と調子にのって手紙をかくと寝るのが遅くなりそうだったので、ささっとテーブルに広げたものをしまった。


うーん、と背伸びをすると、ベッドの枕元にいるライガを一撫でしてからベッドに潜り込む。


やがて、ゆっくりと眠気に襲われ、私はその眠気に静かに身を委ねた。

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