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第10話:漆黒の衝撃(後編)

ドガシィィンッ!


高架下に轟く激しい金属音。

追走してきたピックアップトラック型の『パイル・ビークル』が、サイドのアームを展開し、高速で並走しようと力任せに迫ってくる。


「アニキ、敵のアーム先端が打撃態勢に入ったよ! 直撃コースだ!」

モバイル・ラボの運転席で、純平が叫ぶ。


「リュウ、タイミングを合わせて! 打撃直前のプレッシャー・ゲージが限界値に達するわ!」

その隣でマナがハンチングのツバをグッと押し下げ、画面の波形を直視しながら指示を出した。


「分かってんだよ、マナ! 黙って見てな!」

リュウがギヤを急シフトダウン。クーペのタイヤが悲鳴を上げ、瞬時に車体後部を流す猛烈なブレーキング・ドリフトを敢行した。


ドッッガァァァンッ!!


クーペがいた空間を、爆風のような空気振動とともに極太の鋼鉄杭が突き抜ける。

あまりの打撃圧力に、高架下のコンクリート柱の表面が爆ぜ、破片が飛び散った。だが、クーペのフロントスカートに微かな擦り傷すらついていない。


「空振りだ! リュウ、ナイス回避!」

純平が歓声を上げる。


「ジョウ、今よ! シリンダーが収縮するまで、あと1.8秒!」

マナの声が響く。


「逃がさん……!」

ジョウはツインレバーを前方に倒し、クーペのアームを最大速で突き出した。


パイルアームが次の打ち込みのために油圧を再充填し、鋼鉄杭を引き込もうとする一瞬の空白。

ジョウの操作する補強アームの爪が、精密に敵の主シリンダーの油圧配管の接続部(カプラー)へと喰らいついた。


バキィンッ!


「なっ……何ィ!?」

敵ドライバーの悲鳴。

高圧油圧ラインが断ち切られ、大量の作動油が夜の街路へ噴き出した。充填エネルギーを失った極太の杭が、無惨にだらりと垂れ下がる。


「アーム機能……完全停止! 敵ビークルの攻撃能力、消失よ!」

マナが確信に満ちた声で告げた。


「仕上げだ、リュウ」

「おうよ、ジョウ!」


クーペが加速し、絡めたアームで敵ビークルの進路を強引に押し戻す。

バランスを崩したピックアップトラックはそのままスライドし、路肩のフェンスに押し付けられる形で沈黙した。


「やあ、桐生探偵事務所の諸君。今夜も迅速な解決、感服するよ」


サイレンの音とともに現れたのは、トレンチコートの風見(バード)だ。

警察隊が拘束された犯人を引き立てていく中、バードはタバコを一口吸ってジョウへ視線を送る。


「街を脅かしていたパイル・ビークルの確保、これで治安維持課の面目も保たれた。……約束通り、特別協力手当と機材消耗費は君たちの口座へ送らせてもらう」


「フン、相変わらず手柄を横取りしていくのが上手ぇ警察官様だこと」

リュウが呆れたように鼻で笑う。


「助かるよ、バード。これで次のメンテナンス代も確保できた」

ジョウが静かに頷くと、モバイル・ラボから純平とマナが降りてきた。


「アニキ! 今夜の連携、完璧だったね!」

「うん。リュウの回避のタイミングと、ジョウのツインレバー捌きがパパの計算データ通りで最高だったわ」


「へっ、マナ姉と純平のナビのおかげでもあるけどな。……さあ、ガレージに戻ってクーペのチェックだ」


夜明けの気配が漂う街を、漆黒のクーペと装甲ワンボックスが寄り添うように走り去っていく。


(第10話・後編 終わり)

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