27 魔王の魔力
「これはすごいことです。
勇者と聖女、その両方に認定されていたという事実。
そして、それらを使えば魔王認定された人物を人間に戻すことができたという事例。
歴史的大発見です!」
リンは自分の両手を見た。
聖女の力が、アリサを救えるかもしれない。
アリサが、明日も笑顔でいられる未来が。リンの力で叶うかもしれない。
「ロイド、破魔の剣でも再現可能だと思う?」
カインが剣の柄に手をかけながら聞いた。
「再現は可能だと思います。ただ、力加減は難しいでしょうが……」
長剣は、戦うことに特化した武器だ。傷を最小限にするというのは想定にない。
「どこを刺すかも問題ですね。間違えば、ただ痛い思いをするだけで終わる可能性もあります」
「アリサが痛い思いをするのはいやだなぁ」
剣の柄を撫でながら、カインは眉尻を下げた。希望が見えたとはいえ、結果的にアリサに剣を向けるという構図にカインは複雑そうな顔をしていた。
「確かこの辺はマンドラゴラ生えてただろ? あれ、麻酔薬になるんだよな?」
「確かに麻酔薬の材料として使われることがあります。しかし、私には医術の知識がありません……」
カインの言葉を受けて、ヒューが提案する。しかし、ロイドは悔しそうに顔を歪めた。
「医術の心得がある者は、村におります」
声をあげたのは、メイド長だった。
「外で医術を学んだ者が。彼ならば、麻酔薬の調合ができるやもしれません」
いつも表情を崩さないメイド長の頬が紅潮していた。瞳に期待の色が宿っている。
「それはいいですね。協力を要請しましょう」
ロイドが頷く。
「急ぎ遣いを出します」
返事も待たず、メイド長が部屋から出ていった。常に礼節を崩さない彼女が。
「その間に、身体のどこに破魔の剣を刺すのが効率が良いのか考えましょう」
時間を無駄にしないよう、ロイドが提案する。
「あの、魔王の魔力自体を鑑定することってできるんですか?」
リンが手を挙げながらロイドに聞いた。
「魔王の魔力自体?」
「はい。昨夜、アリサ様と会った時に、こう、纏わりついているというか……。
とにかく、アリサ様自身から出ているものだとは思えなかったんです」
リンが昨夜のアリサの姿を思い出しながら答える。アリサ自身も、どこか魔王の魔力を自身の力ではないような、身体に住まわせている何かのような扱いをしていた。
「ああ、確かに。勇者の力も、俺自身の力って気がしない」
カインも自分の身体を見つめて、そう言った。
「なんだろう。使えば減って、気付くとどこからか補充されてる。そういう感じ」
自分の魔力は、使えば食事をしたり、休息したりしなければ回復しない。しかし、勇者の力は使った後、戦い続けていても少しずつ回復した。
「なるほど、強制的に付与されている外部の力ということでしょうか? アリサ殿はいかがですか?」
急に話を振られてアリサははっとした。まるで、夢から冷めたような顔だった。
「え? ええ、確かにそうね。
魔王の魔力は空っぽになっても倒れたりしないもの」
「空っぽになるほど、何に使ったんだよ」
「この城の建築」
魔王の魔力で建設事業……。全員が呆れ返った。
「アリサ様、勇者の力は?」
リンが聞いた。
「勇者の力は……回復しないわね。だから、最近は節約して使ってたの」
勇者の力を節約……。やはり、アリサはアリサなのだった。
ちなみに、マンドラゴラって実在する植物なんですね。
私は知らなくてびっくりしました。もちろん、現実のマンドラゴラは叫びません(笑)。




