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世界を滅ぼしたい勇者✕世界を救いたい魔王~勇者様、ちゃんと魔王を倒してください!~  作者: よし はるか


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21/22

21 認定の条件

 ロイドが帰還してきたのは、一か月ほど経った頃だった。

 帰還してすぐ、ロイドは三日寝込んだ。


「移動時間を六日に短縮しました。新記録です」


「そうじゃない」


 頑張る方向を間違えていると、アリサがツッコんでいた。隣でリンがうんうんと頷いている。


 寝込んでいる間もロイドは、魔王城のシェフが用意した料理を、食べながら咽び泣いていた。

 王都へ帰還する道中に食べていた携帯食が恋しくなって、思わず無理をして転移魔法を使用したと漏らした。


「食いしん坊か」


 とヒューがツッコんだ。

 ロイドがアリサに携帯食の作り方を聞いて、「ロイドの魔力なら、作れるかも?」と返され愕然とした。

 ロイドは勇者パーティに選ばれる最高峰の魔道士。その自分が、ようやく携帯食作りの最低条件を満たす程度だなんて……。以前に、魔族が「体力も魔力もついた」と言っていた話を思い出す。

 改めて、魔王城の状況は普通ではないのだと思い知らされた。





「結果を報告いたします」


 ロイドが執務室に集まった面々に告げた。

 アリサはまた書類の山に忙殺されている。

 リンは洋梨のコンポートを食べていた。ロイドがあとで食べる一切れはすでに確保してある。安心して報告を始めた。


 五年前の事件の報告書の件、カインとヒューは当事者なのですでに知っていたのだろう。ロイドが話している間、興味なさそうに紅茶を飲んでいた。逆にリンは口元を手で押さえ、悲痛な顔をしている。

 アリサは仕事の手を止めなかった。しかし、リーサ侯爵夫人の死因の話に差し掛かった時、バキッと音がした。

 アリサの手の中で、ペンが真っ二つに折れていた。


「あら、やだ。ごめんなさい」


 馬鹿力で恥ずかしいわ、とアリサははにかんだが全員が神妙な顔をした。


「続いて、セレス家初代当主の話ですが……」



 ガタン、とアリサが音を立てて椅子から立ち上がった。未だ高位貴族の礼節を崩さないアリサには珍しいことだ。


「待って! うちの醜聞必要?!」


「必要です」


「本当に?!」


 アリサは頭を抱えているが、ロイドは構わず続けた。


「これは四代前の勇者の話です。

初代当主の母は当時の侯爵家本家の夫人、勇者は男爵家出身でした」


 それは大変な話だった。

 普通ならば、一族郎党処罰されてもおかしくない話だ。

 男爵家の人間が侯爵夫人と内通する。血統に勝手に低い血を混ぜる大罪。

 しかし、当時の王国は救国の勇者に恩があった。秘密裏に侯爵、勇者の男爵家、王国で話し合い、侯爵は新しい領地を与えられ、勇者の男爵家は罪を免除された。そして、五男として育てられたセレス家初代当主は、成人と共に男爵位を賜った。


「つまり……うちの初代は勇者の子で、侯爵家の醜聞を隠すために男爵になったってこと?」


 改めて詳しく説明されて、アリサがショックを受けている。


「そうなりますね。初代当主は誠実な人柄だったようですが」


 慰めにもならないが、ロイドは付け足した。初代当主の教えは『高潔たれ』であったと聞く。侯爵にとって血の繋がらない自分を、成人まで実子と同じように育てた侯爵家に対して、本人なりの恩返しのようなものだったのかもしれない。


「私は勇者とは清廉潔白な人間のみが認定されるのだと思っていました。実際、聖女教育などでもそう教えられています。そうだな、リン?」


「はい、カイン様も伝説に聞く勇者像と違わぬ姿だったので、わたしも疑ったことはありません。

 ……魔王城に来てからは、まあ、アレですけど」


 ちらりとリンが勇者に視線を向ける。微妙な空気が流れたが、カインは意に介さなかった。


「さらに調べていくと、九代前はもっとひどかった。ヒューのように、ジョブとしてのシーフではなく、名実ともに盗賊でした。

 彼は初めて愛した女性を助けようとした際、勇者認定を受けたと記録に残っています」


 九代前の勇者はその後、どのような人生を送ったのだろうか? 勇者認定されたことで、案外改心して奪うのではなく与える人生を送ったのかもしれない。


「魔王についても、興味深い記述がありました。

 六代前の魔王は、我が子を殺された悲しみで魔王認定を受けていました。この魔王は周辺地域を焦土にしています。

 彼の行いは許されるものではありません。しかし、最初から世界を滅ぼさんとする化け物だったのではないのです」


 六代前の魔王は、子煩悩の優しい父親だったようだ。しかし、我が子を理不尽な理由で奪われた悲しみで魔王認定された。

 調べれば調べるほど、認定の条件が伝えられている勇者像や魔王像とは結びつかなくなってくる。


「しかし、語り継がれてきた伝承の中で、共通しているものがありました」


 そう、連綿と繰り返される歴史の中で、これだけは必ず同じだった。


「勇者が、魔王を倒す。それだけは、例外がなかったのです」

更新ペースについてのお知らせです。


本作は全話執筆・予約投稿済みですが、カクヨムでも同時公開を開始するため、更新ペースを一日2話から一日1話(17:10)へ変更します。


完結まで毎日更新は継続します。

引き続きお楽しみいただければ嬉しいです。

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