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4 ミクラノア城

 城の奥へと案内された部屋は、すでに暖炉の火で心地よく温められていた。上質な調度品や柔らかな寝具が整えられた空間に、セシリアの強張っていた頬が自然と緩む。


 侍女が手際よく帽子と外套を脱がせている間に、彼女のささやかな荷物が運び込まれてきた。

 執事はほっとした面持ちで、セシリアに向き直る。


「今日はお疲れでしょう。このあとお食事を運ばせますので、エデュアルド様とは、明日の朝、お会いいただきますようお願いいたします」


 運ばれてきたのは、湯気を立てる熱いスープに、香ばしい焼きたてのパン、そしてじっくりと煮込まれた羊の肉。どれも手の込んだ、温かな心尽くしの料理だった。

 セシリアは小さなテーブルについて、静かにそれらを味わった。

 食事を終えると夜着に着替え、天蓋付きのベッドに潜り込む。


 侍女が灯りを消して静かに部屋を去ると、セシリアは暗闇の中でそっと目を開けた。窓から差し込む微かな月明かりが、見慣れぬ天井を淡く照らしている。


 遠くから、牛のようでもある、聞いたことのない奇妙な獣の鳴き声が、地を這うように響いてきた。セシリアはその声を遠い子守唄のように聞きながら、深い夢の中へと落ちていった。


 翌朝、遠くから響く鐘の音でセシリアは目を覚ました。

 部屋を訪れた侍女の手によって、手際よく身支度が整えられていく。

 髪を結い上げられ、薄化粧を施され、最後にドレスへ袖を通す。それはセシリアが持参したものではなく、侯爵家があらかじめ用意していたものだった。上質な織物で仕立てられた見事なドレスは、驚くほど身体になじんだ。


 侍女の後に続き、エデュアルドの待つ部屋へと回廊を進む。

 その一歩ごとに、胸の鼓動は早まっていく。きつく結んだはずの唇が、微かに震える。

 やがて侍女が、突き当たりにある重厚な扉を静かに開け放った。


 朝の清々しい光が部屋に満ち、セシリアは思わず手をかざした。その指の隙間から、ぼんやりとした人影が浮かび上がる。


 磨き上げられた革の長靴、襟の詰まった上着、そして――。

 光に目が慣れるにつれ、背の高い男の姿が鮮明になっていく。

 控えていた執事が促し、侍女が明るい声を添えた。


「セシリア様、エデュアルド様でございます」


 逆光の中に浮かび上がるエデュアルドの、その強い眼差しは、驚くほど真っ直ぐだった。


 セシリアは息を呑んだ。


 エデュアルドはただ無言のまま、静かにセシリアを見下ろしていた。


 その様子を、執事と侍女は固唾をのんで見守っていた。

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