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14 窓辺から

 それまで自分の部屋でとっていた食事は、大きな広間へと場所を移した。

 中庭を望む窓際に置かれた細長いテーブル。その正面にエデュアルドの席が、そしてすぐ隣にセシリアの席が用意されていた。それぞれの傍らには、いつでも言葉を紡げるよう筆記具が静かに置かれている。それは、かつて同じように沈黙を守った先代たちの頃からの、この城の慣習なのだという。

 

 侍女に案内されてセシリアが席に着くと、ほどなくしてエデュアルドが執事を伴って現れた。

 運ばれてくる温かな朝食。立ち上る湯気、かすかに響く銀器の触れ合う音。いつの間にか外に降り積もった真っ白な雪が、自然の鏡となって部屋の隅々まで明るく照らし出していた。

 言葉はなくとも、ふとした瞬間に微笑みだけが交わされる静かな時間。セシリアにとって、それは不思議なほど心地よく、この上なく満ち足りたものだった。

 

 食事が終わると、エデュアルドは領地の政務に就くため自室へと戻っていった。セシリアもまた自分の部屋へと戻り、再びあの古い日記を開いた。

 何か呪いを解く手がかりはないかと、一文字も見落とさぬよう丹念に頁を繰ってみたが、それらしい記述はどこにも見当たらない。やはり当時は、魔女の言葉など誰も本気にしていなかったのだろう。

 

 日が傾き始めた頃、中庭のほうから不意に賑やかな気配が伝わってきた。

 セシリアは白く曇った窓ガラスを指先でそっと拭い、外を見下ろした。

 そこには、エデュアルドの姿があった。彼の周りを取り囲むように、近習と思われる若い男たちが、屈託のない様子で賑やかにじゃれ合っている。声を上げて笑い合う彼らの輪に交じるエデュアルドは、重い呪いなど背負っていないかのような、ごく普通の快活な青年に見えた。

 

 次の瞬間、男たちが窓辺から覗くセシリアの姿に気づいた。彼らは破顔し、大袈裟な身振りで盛大に手を振ってくる。セシリアは少し戸惑いながらも、思わず小さく手を振り返した。

 すると、眼下の男たちの間でいっそう大きな歓声が上がる。だが、すかさず執事が眉を吊り上げて駆け寄り、若者たちに向かって容赦のないカミナリを落とした。若者たちは首を竦めながら退散していった。

 

 あとに一人残されたエデュアルドが、窓辺のセシリアに向けて、そっと片手を上げた。

 

 彼女が応えるように手を上げると、エデュアルドもまた背中を向け、歩き去っていった。

 

 遠ざかる彼らの背中を視線で追いかけながら、セシリアはふと、若者たちの中にひとりだけ、明らかに風体の異なる黒髪の男が混じっていたことに気がついた。

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