13 一緒に探す
しばらくすると、執事を伴ってエデュアルドが部屋へとやってきた。
彼がセシリアの隣に腰を下ろすと、待機していた侍女が新しい茶器に温かい茶を注ぐ。静まり返った部屋の中に、水音だけが優しく響いた。
セシリアは、先ほどから書き溜めていた紙を、順番に彼へと手渡した。
『お話はすべて伺いました。これからは、もっとお傍で一緒に過ごさせてはいただけないでしょうか』
エデュアルドは驚いたように目を見開き、紙の文字とセシリアの顔を交互に見つめた。セシリアは真っ直ぐに彼を見返し、深く頷く。
この城へ来てからというもの、食事の席も、読書の時間も、彼女は常にひとりきりで過ごしてきた。それが、彼女に沈黙を守らせるための城側の配慮であることは分かっていた。けれど、春までに呪いを解かなければならないのだとしたら、ただ離れて黙っているだけでは足りないような気がしていたのだ。
セシリアは、次の紙をそっと差し出した。
『魔女のいう“真実の愛”がどのようなものか、私にはまだ分かりません。けれど、一緒に探すことならできるかもしれないと思うのです』
エデュアルドは紙を見つめたまま動かなかった。きつく結ばれた唇が、言葉をなぞるように微かに震える。
やがて彼はゆっくりとセシリアに顔を向けると、万感の思いを込めるように、深く頷いた。
それを見て、セシリアの肩からようやく力が抜ける。
しかし、エデュアルドがその紙を大切そうに懐へしまおうとするのを見て、彼女は慌ててそれを取り戻そうと手を伸ばした。彼は不思議そうに困った顔で首を傾げる。セシリアは赤くなる顔を隠しながら、急いで次の文字をしたためた。
『字がとても下手なので、見られるのが恥ずかしいのです』
エデュアルドは小さく目を瞬かせると、セシリアの手元から筆記具をそっと滑らせるようにして取り、文字を走らせた。
『かわいい文字だ』
流麗な筆跡でそれだけを書き残すと、先ほどの紙は、すばやく彼の懐の内へと収められてしまった。
エデュアルドは立ち上がると、わずかに口元を緩めたまま部屋を後にした。控えていた執事と侍女は感極まったように手を取り合って喜んだ。
セシリアは手元に残された彼の文字をそっと胸に抱き、文箱の中へと大切に重ねた。
その日から、二人は朝夕の食事をともに囲むようになった。




