砂浜の疲労と、仲間たちの助言
椅子に座ったラピスは、肩で息をしながら周囲を見渡した。
初めて訪れる拠点の空気はどこか落ち着いていて、それでも少し緊張してしまう。
ユナがそっと水を差し出した。
「ラピスさん、どうぞ」
「ありがとう……」
水を飲んだラピスは、ほっとしたように息を吐く。
「砂浜って……こんなに疲れるんだな……」
◇
マーティンがラピスの義足に膝をつき、魔力核の状態を確認する。
指先で軽く触れ、魔力の流れを確かめるように目を細めた。
「魔力核の揺れは少ないが……砂地での負荷が大きかったようだな」
彼は義足の接合部を見ながら続ける。
「砂に入ると魔力の流れが乱れやすい。調整が必要だな」
ラピスは真剣な表情で聞き入る。
横ではアルトが小さなメモ帳に細かく書き込んでいた。
◇
ハリスが腕を組みながら口を開く。
「砂浜での訓練は危険が伴う。アルトじゃ支えきれないだろうし、護衛をつけるべきだ」
リオルも頷いた。
「今日みたいに転倒する可能性は高いからね」
ラピスは少し肩をすくめたが、責められているわけではないと理解している。
◇
そこへカイが勢いよく近づいてきた。
「砂浜歩けたのすごいよ!」
ユナも優しく微笑む。
「初めてなのに、あんなに頑張ってて……」
ラピスは照れたように視線を落とした。
「ありがとう……まだまだだけど、もっと歩けるようになりたい」
◇
リオルが後ろに控えていた護衛騎士トラフィカへ視線を向ける。
「トラフィカ、何かアドバイスはある?」
騎士は一歩前に出て、落ち着いた声で答えた。
「砂浜は体力がないとすぐに魔力が消耗します。歩行訓練と並行して、体力づくりも始めた方がいいと思われます」
その言葉にアルトが頷き、ラピスの方へ向き直った。
「明日から、歩行だけじゃなくて体力をつける訓練も始めよう」
ラピスは目を丸くする。
「体力の訓練……?」
アルトは指を折りながら説明した。
「呼吸を整える練習、上半身の軽い筋力強化、体幹を鍛えるバランス訓練……それから歩行距離の記録とペース管理。無理のない範囲でやっていこう」
ラピスは少し不安そうにしながらも、前向きな表情を見せた。
「……うん。やってみたい」
◇
マーティンが義足を軽く持ち上げ、細部を確認する。
「砂地用に魔力の流れを少し変えてみよう。次の砂浜訓練では、今日より安定するはずだ」
そして、義足の隙間に入り込んだ砂を見つけて眉を寄せた。
「砂が義足に少し入ってしまっているな……ここも調整しよう」
ラピスは申し訳なさそうにしながらも、感謝の気持ちを込めて頷いた。
◇
ハリスが腕を組んだまま言う。
「転倒はしたが、初挑戦としては十分だ」
リオルも微笑む。
「次はもっと歩けるはずだよ」
カイが元気よく拳を握る。
「応援するからね!」
ユナも優しく声をかけた。
「また拠点に来てね、ラピスさん」
ラピスは胸に温かいものが広がるのを感じた。
「……皆、ありがとう」
その声は少し震えていたが、確かな前向きさが宿っていた。
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