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信じたいと言った手が触れたもの

 青白い光が脈打つ義手を抱え、アルトは廊下をゆっくり歩いていた。

 足取りは重い。

 胸の奥に、まだ消えない迷いが残っている。

「……本当に渡していいのか」

 小さく漏れた言葉は、誰にも届かない。

 それでも、仲間たちの背中を思い返す。

 自分を支えてくれた声、手、視線。

 ――届けるだけでいい。

 その言葉が、アルトの足を前へ進ませた。

 ラピスの部屋の前に立つと、アルトは深呼吸した。

 手が震える。

「……ラピス」

 ノックしようと手を上げるが、迷いが指を止める。

 その瞬間――

 部屋の中から、何か重いものが落ちる音が聞こえた。

「ラピス!」

 アルトは迷う暇もなく扉を開けた。

 床に倒れたラピスが、驚いた顔でこちらを見ていた。

「……アルト?」

 アルトは慌てて駆け寄り、抱えていた義手を床にそっと置いた。

「大丈夫か、ラピス!」

 ラピスは痛みに顔をゆがめながら、ゆっくり身体を起こそうとする。

 その視線が、床に置かれた義手へ向かった。

「……それは」

 アルトは義手をそっと掲げた。

 青白い光が部屋を照らし、ラピスの瞳に映り込む。

 ラピスは息を呑んだ。

「……新しい義手?」

 アルトはうつむきながら言った。

「渡していいのか……ずっと迷ってた。

 ラピスが望んでいないかもしれないって……」

 ラピスは驚いたように目を見開いた。

「そんなこと……」

 言葉を探すように、ラピスはゆっくり息を吸った。

「俺は……動きたい。外に出たい。

 でも……動かないんだ。手足が。

 少しでもアルトと一緒にいたいのに」

 アルトは息を呑んだ。

 ラピスの指先が、かすかに動いた。

「でも……アルトが作ったものなら……信じたい」

 ラピスはゆっくり手を伸ばした。

「……見せてくれ」

 アルトは義手をそっと差し出す。

 ラピスの手が義手に触れた瞬間――

 青白い光が脈打ち、部屋全体が淡く照らされた。

本作をお読みいただきありがとうございます。

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