信じたいと言った手が触れたもの
青白い光が脈打つ義手を抱え、アルトは廊下をゆっくり歩いていた。
足取りは重い。
胸の奥に、まだ消えない迷いが残っている。
「……本当に渡していいのか」
小さく漏れた言葉は、誰にも届かない。
それでも、仲間たちの背中を思い返す。
自分を支えてくれた声、手、視線。
――届けるだけでいい。
その言葉が、アルトの足を前へ進ませた。
◇
ラピスの部屋の前に立つと、アルトは深呼吸した。
手が震える。
「……ラピス」
ノックしようと手を上げるが、迷いが指を止める。
その瞬間――
部屋の中から、何か重いものが落ちる音が聞こえた。
「ラピス!」
アルトは迷う暇もなく扉を開けた。
◇
床に倒れたラピスが、驚いた顔でこちらを見ていた。
「……アルト?」
アルトは慌てて駆け寄り、抱えていた義手を床にそっと置いた。
「大丈夫か、ラピス!」
ラピスは痛みに顔をゆがめながら、ゆっくり身体を起こそうとする。
その視線が、床に置かれた義手へ向かった。
「……それは」
アルトは義手をそっと掲げた。
青白い光が部屋を照らし、ラピスの瞳に映り込む。
ラピスは息を呑んだ。
「……新しい義手?」
アルトはうつむきながら言った。
「渡していいのか……ずっと迷ってた。
ラピスが望んでいないかもしれないって……」
ラピスは驚いたように目を見開いた。
「そんなこと……」
言葉を探すように、ラピスはゆっくり息を吸った。
「俺は……動きたい。外に出たい。
でも……動かないんだ。手足が。
少しでもアルトと一緒にいたいのに」
アルトは息を呑んだ。
ラピスの指先が、かすかに動いた。
「でも……アルトが作ったものなら……信じたい」
ラピスはゆっくり手を伸ばした。
「……見せてくれ」
アルトは義手をそっと差し出す。
ラピスの手が義手に触れた瞬間――
青白い光が脈打ち、部屋全体が淡く照らされた。
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