揺れる不安と完成した義手
作業場には、静かな緊張が漂っていた。
マーティンが義手の可動域を確認し、指の一本一本を慎重に動かす。
カイは金属部品の締め具合を調整し、工具の音が小さく響く。
ユナは革の柔らかさを再確認し、手触りを確かめながら仕上げを進める。
リオルは魔力安定剤を最終塗布し、淡い香りが部屋に広がった。
アルトは魔力核の脈動を見つめていた。
青白い光が規則正しく脈打ち、外装と完全に馴染んでいる。
義手は――完成していた。
それなのに、アルトの表情は晴れなかった。
「……本当に渡していいのかな」
小さく漏れた言葉に、マーティンが気づいた。
工具を置き、静かにアルトへ視線を向ける。
「受け取るかどうかはラピスが決める。
お前は届けるだけでいい」
その言葉は、優しくも力強かった。
アルトは少しだけ息を吸い込み、視線を義手へ戻した。
◇
一方その頃――
アルトの自室では、ラピスが静かに待っていた。
義手が完成しつつあることを、彼は知らない。
ただ、最近のアルトの帰りの遅さが気がかりだった。
「……何かあったのか?」
不安が胸の奥でじわりと広がる。
ふと、指先がまた少し動いた。
「……っ」
確かに動いた。
しかしすぐに痛みが走り、ラピスは顔をしかめた。
「俺は……まだ何もできないのに」
その呟きは、誰にも届かないまま、静かな部屋に溶けていった。
◇
作業場では、完成した義手が机の上に置かれていた。
アルトはそれをそっと持ち上げる。
青白い光が淡く脈打ち、義手全体に生命が宿ったように見える。
仲間たちが息を呑み、見守る。
アルトは深く息を吸った。
「……ラピスのところへ行く」
その声は静かだったが、確かな決意を帯びていた。
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