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揺れる不安と完成した義手

 作業場には、静かな緊張が漂っていた。

 マーティンが義手の可動域を確認し、指の一本一本を慎重に動かす。

 カイは金属部品の締め具合を調整し、工具の音が小さく響く。

 ユナは革の柔らかさを再確認し、手触りを確かめながら仕上げを進める。

 リオルは魔力安定剤を最終塗布し、淡い香りが部屋に広がった。

 アルトは魔力核の脈動を見つめていた。

 青白い光が規則正しく脈打ち、外装と完全に馴染んでいる。

 義手は――完成していた。

 それなのに、アルトの表情は晴れなかった。

「……本当に渡していいのかな」

 小さく漏れた言葉に、マーティンが気づいた。

 工具を置き、静かにアルトへ視線を向ける。

「受け取るかどうかはラピスが決める。

 お前は届けるだけでいい」

 その言葉は、優しくも力強かった。

 アルトは少しだけ息を吸い込み、視線を義手へ戻した。

 一方その頃――

 アルトの自室では、ラピスが静かに待っていた。

 義手が完成しつつあることを、彼は知らない。

 ただ、最近のアルトの帰りの遅さが気がかりだった。

「……何かあったのか?」

 不安が胸の奥でじわりと広がる。

 ふと、指先がまた少し動いた。

「……っ」

 確かに動いた。

 しかしすぐに痛みが走り、ラピスは顔をしかめた。

「俺は……まだ何もできないのに」

 その呟きは、誰にも届かないまま、静かな部屋に溶けていった。

 作業場では、完成した義手が机の上に置かれていた。

 アルトはそれをそっと持ち上げる。

 青白い光が淡く脈打ち、義手全体に生命が宿ったように見える。

 仲間たちが息を呑み、見守る。

 アルトは深く息を吸った。

「……ラピスのところへ行く」

 その声は静かだったが、確かな決意を帯びていた。

本作をお読みいただきありがとうございます。

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