届かない想いと進む作業
マーティンが机いっぱいに設計図を広げた。
外装の仕上げ工程――細部の金属部品、革の補強、魔力核を収める容器。
そのすべてが、義手の完成を左右する重要な作業だった。
「ここからは細かい調整が続く。慎重にいくぞ」
その言葉を合図に、仲間たちが動き始めた。
カイは金属部品の微調整に取りかかり、火花が散る。
ユナは革の仕上げを行い、柔らかさと強度のバランスを整える。
リオルは魔力安定剤の最終調合を進め、淡い香りが部屋に広がった。
アルトは魔力核と外装を完全に接続する準備をしていた。
昨日完成した魔力核は、今も淡く脈打っている。
作業は順調だった。
誰もが集中し、誰もがラピスのために手を動かしていた。
◇
一方その頃、アルトの自室では――
ラピスが静かに過ごしていた。
義手が完成しつつあることを、彼は知らない。
ただ、最近帰りが遅くなっているアルトのことが気がかりだった。
「大丈夫だろうか……早く帰ってきてくれ」
小さな呟きが、静かな部屋に溶けていく。
ふと、指先に力が入った。
「……動いた?」
ほんのわずかだが、確かに動いた。
自分の身体が少しずつ回復していることを感じる。
しかし、すぐに痛みが走り、ラピスは顔をしかめた。
「ちゃんと動くことができたら。きっと一緒に外に行けたのに」
その言葉は、誰にも届かないまま、部屋の空気に消えていった。
◇
その頃、作業場では――
アルトが魔力核を外装に接続しようとしていた。
魔力核をそっと外装の中心へと近づける。
淡い光が義手全体に広がり、部屋が青白く照らされる。
「……これで、ほぼ完成だ」
マーティンが静かに言った。
仲間たちが息を呑む。
義手は、確かに形になっていた。
アルトはまだ迷いを抱えたまま、義手を見つめた。
ラピスは本当に望んでいるのだろうか。
自分の助けを、本当に必要としているのだろうか。
本作をお読みいただきありがとうございます。
少しでも「面白い」「続きが読みたい」と感じていただけましたら、ページ下部より【ブックマーク登録】や【評価(☆☆☆☆☆)】での応援をいただけますと幸いです!




