迷いを抱えたまま進む外装づくり
マーティンが机いっぱいに設計図を広げた。
義手の外装――骨格となる金属部品、魔力核を収める容器、布と革で補強する部分。
細かい寸法がびっしりと書き込まれている。
「よし、外装に取りかかるぞ」
その声を合図に、仲間たちが動き始めた。
カイは金属部品を加工し、火花が散る。
ユナは布と革を丁寧に縫い合わせ、補強布を作る。
リオルは魔力安定剤を調合し、淡い香りが部屋に広がる。
アルトは魔力核を外装に組み込む準備を進めていた。
昨日完成した魔力核は、今も淡く脈打っている。
作業は順調だった。
誰もが集中し、誰もがラピスのために手を動かしていた。
――ただ一人、アルトの表情だけが晴れなかった。
◇
「……迷っているな」
設計図を見ながら作業していたマーティンが、ふとアルトに声をかけた。
アルトは手を止め、少しだけ視線を落とした。
「ラピスは……本当に望んでいるのかな。
俺が作る義手を。
俺が助けることを」
その声は弱く、揺れていた。
マーティンは工具を置き、静かに言った。
「迷うのは完成してからでいいんじゃないか。
必要なくても、エゴで完成させよう」
アルトは顔を上げる。
「……エゴで?」
「そうだ。
誰かを助けたいと思う気持ちは、結局は自分の願望だ。
それでもいい。
その願望が誰かを救うことだってある」
マーティンの声は穏やかで、どこか温かかった。
アルトは胸の奥が少し軽くなるのを感じた。
◇
作業は再び進み始めた。
カイが加工した金属部品が組み上がり、
ユナの補強布が外装の内側に貼られ、
リオルの魔力安定剤が部品に塗布されていく。
義手の外装が、ゆっくりと形になり始めていた。
アルトは魔力核をそっと持ち上げ、外装の中心部へと近づける。
しかし、手が止まった。
――ラピスとの出会い。
――壊れた義手を抱えて泣きそうだった顔。
――「おかえり」と言ってくれた声。
胸の奥が痛む。
「助けたい気持ちは本物。
でも……これは自己満足なのかもしれない」
その呟きは、誰にも聞こえないほど小さかった。
マーティンはその迷いを感じ取ったように、そっと肩に手を置いた。
「迷いながらでいい。それでも前に進めるなら、それは強さだ」
アルトはゆっくりと息を吸い、魔力核を外装の中心に収めた。
淡い光が外装の内部を照らし、義手の一部が完成する。
「……よし」
アルトは小さく頷いた。
ほんの少しだけ、前を向けた気がした。
◇
こうして義手の外装は形を成し始めた。
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