表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

53/72

迷いを抱えたまま進む外装づくり

 マーティンが机いっぱいに設計図を広げた。

 義手の外装――骨格となる金属部品、魔力核を収める容器、布と革で補強する部分。

 細かい寸法がびっしりと書き込まれている。

「よし、外装に取りかかるぞ」

 その声を合図に、仲間たちが動き始めた。

 カイは金属部品を加工し、火花が散る。

 ユナは布と革を丁寧に縫い合わせ、補強布を作る。

 リオルは魔力安定剤を調合し、淡い香りが部屋に広がる。

 アルトは魔力核を外装に組み込む準備を進めていた。

 昨日完成した魔力核は、今も淡く脈打っている。

 作業は順調だった。

 誰もが集中し、誰もがラピスのために手を動かしていた。

 ――ただ一人、アルトの表情だけが晴れなかった。

「……迷っているな」

 設計図を見ながら作業していたマーティンが、ふとアルトに声をかけた。

 アルトは手を止め、少しだけ視線を落とした。

「ラピスは……本当に望んでいるのかな。

 俺が作る義手を。

 俺が助けることを」

 その声は弱く、揺れていた。

 マーティンは工具を置き、静かに言った。

「迷うのは完成してからでいいんじゃないか。

 必要なくても、エゴで完成させよう」

 アルトは顔を上げる。

「……エゴで?」

「そうだ。

 誰かを助けたいと思う気持ちは、結局は自分の願望だ。

 それでもいい。

 その願望が誰かを救うことだってある」

 マーティンの声は穏やかで、どこか温かかった。

 アルトは胸の奥が少し軽くなるのを感じた。

 作業は再び進み始めた。

 カイが加工した金属部品が組み上がり、

 ユナの補強布が外装の内側に貼られ、

 リオルの魔力安定剤が部品に塗布されていく。

 義手の外装が、ゆっくりと形になり始めていた。

 アルトは魔力核をそっと持ち上げ、外装の中心部へと近づける。

 しかし、手が止まった。

 ――ラピスとの出会い。

 ――壊れた義手を抱えて泣きそうだった顔。

 ――「おかえり」と言ってくれた声。

 胸の奥が痛む。

「助けたい気持ちは本物。

 でも……これは自己満足なのかもしれない」

 その呟きは、誰にも聞こえないほど小さかった。

 マーティンはその迷いを感じ取ったように、そっと肩に手を置いた。

「迷いながらでいい。それでも前に進めるなら、それは強さだ」

 アルトはゆっくりと息を吸い、魔力核を外装の中心に収めた。

 淡い光が外装の内部を照らし、義手の一部が完成する。

「……よし」

 アルトは小さく頷いた。

 ほんの少しだけ、前を向けた気がした。

 こうして義手の外装は形を成し始めた。

本作をお読みいただきありがとうございます。

少しでも「面白い」「続きが読みたい」と感じていただけましたら、ページ下部より【ブックマーク登録】や【評価(☆☆☆☆☆)】での応援をいただけますと幸いです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ