長い一日の終わりに
洞窟を出た一行は、潮晶石を慎重に包み込みながら、ゆっくりと海岸へ戻っていた。
戦闘の疲労が全身に残っているが、誰もがどこか晴れやかな表情をしている。
「よくやったな。全員、生きて帰ってこられた」
キセルが大剣を肩に担ぎながら、仲間たちを労った。
「もうコウモリは嫌だ……」
シルがぐったりと肩を落とす。
その横で、ハリスは珍しく落ち込んだ顔をしていた。
「俺のせいで落石起こしたし……。ほんと、悪かったよ……」
キセルは笑ってハリスの背中を叩く。
「強い奴ほど、失敗も派手なんだ。気にすんな」
「……そうか?」
ハリスが少しだけ顔を上げる。
◇
海岸に出ると、夕日が水平線に沈みかけていた。
橙色の光が波に反射し、洞窟の暗さとは対照的な温かさを感じさせる。
「少し休もう」
マーティンが潮晶石の包みを膝に置き、慎重に開いた。
青白い光がふわりと漏れ、全員の顔を照らす。
「……状態は良好だ。傷も少ない」
マーティンは安堵の息をついた。
◇
キセルたちと別れ拠点に戻ると、マーティンはすぐに机へ向かい、潮晶石の分析を始めた。
マーティンは測定器具を並べ、潮晶石に魔力を流し込む。
「これは……想像以上だ」
ハリスが覗き込みながら言う。
「何が?」
「魔力の通しやすさが異常だ。
それに、魔力回路の安定性が段違い。
義手に組み込めば、魔力暴走のリスクが大幅に減るはずだ」
マーティンの声には、興奮が混じっていた。
「つまり……アルトの望む義手が、完成に近づくってことか?」
ハリスが尋ねる。
「ああ。これなら、彼の回路を最大限に活かせる」
潮晶石は淡く脈打つように光り、まるで応えるように輝いた。
◇
マーティンは潮晶石を丁寧に布で包み直し、そっと机に置いた。
「今日はここまでにしよう。
明日、アルトたちにも見せてやらないとな」
その言葉に、ハリスは疲れた顔のまま微笑んだ。
長い一日だったが、確かな成果を手にした帰還だった。
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