潮風の中の実験
放課後の作業場には、魔力の焦げた匂いが漂っていた。
「……また暴走したか」
アルトは試作中の義手を見つめ、ため息をついた。
魔力を流すたびに、内部の回路が焼け焦げてしまう。
そこへ、扉がノックされる。
「アルト、みんな……!」
リオルと両手いっぱいに素材を抱えた従者が入ってきた。
「これ、祖母の遺留品で……魔力を通しやすい素材なんです。
補助になるかもしれなくて……!」
「ありがとう、リオル!」
アルトはすぐに義手の内部に素材を組み込み、魔力を流してみた。
――シュウッ。
さっきまで暴走していた魔力が、ほんの少しだけ安定する。
「……おお、さっきより持つ!」
しかし、次の瞬間。
――パキンッ。
義手はあっけなく壊れてしまった。
「……やっぱり、潮晶石が必要だな」
マーティンがぽつりと呟いた、その時。
「就活受かったぞー!」
勢いよく扉が開き、ハリスが両手を広げて入ってきた。
「おおっ!」「すごい!」「おめでとう!」
みんなが一斉に祝福し、アルトも笑顔で言った。
「おめでとう、ハリスさん」
「ありがとな!」
ハリスが嬉しそうに笑うと、マーティンが今までの経緯を説明し始めた。
潮晶石のこと、義手のこと、洞窟の危険性――
ハリスは真剣に聞き、そして言った。
「よし、俺も一緒に行く」
マーティンが頷く。
「助かる。準備を手伝ってくれ」
◇
その後、みんなでマーティンの準備を進めた。
「潮の満ち引きで、歩きにくさが変わるかもしれない」
カイが地図を広げながら言う。
「洞窟の危険度は高い。魔物も出る可能性がある」
「必要な装備は……これと、これと……」
日程調整も進み、いよいよ“出発”が現実味を帯びてきた。
そんな中、アルトがマーティンに小さな包みを差し出した。
「これ、持っていって。弓矢を三本と、短剣を一本」
「……回路が描かれている?」
「うん。魔力回路を組み込んでみたんだけど、小さな風魔法で使えたよ」
ハリスが興味津々で覗き込む。
「へぇ、面白そうじゃん」
「試してみてもいいか?」
マーティンが尋ねると、アルトは首を振った。
「私が実践してみせるよ」
◇
一同は人のいない海岸へ移動した。
風が強く、波の音が響く。
「的、作るぞー」
ハリスが魔法で簡易的な的を組み立てる。
アルトは短剣を手に取り、遠くの的を見据えた。
――スッ。
投げた短剣は、一拍置いて光をまとい――
――ドンッ!
的を粉々に破壊した。
「ひゃあっ!?」
ユナが悲鳴を上げる。
次にアルトは弓矢を手に取った。
「弓、引かないのか……?」
マーティンが驚く。
「投げるのかよ……」
ハリスも目を丸くする。
アルトはダーツのように矢を投げた。
――ヒュッ。
瞬時に遠くの的を射抜く。
「すご……!」
マーティンが感嘆し、リオルも目を輝かせた。
「こんな感じでも使えるよ」
「ありがとう、アルト」
マーティンが礼を言ったその時、ハリスが手を伸ばした。
「俺も使ってみたい!」
魔力を込めた瞬間――
――パァンッ!
矢は破裂して砕け散った。
「えっ……あれ……?
もしかしてハリスさんとマーティンにとっては粗品……?」
アルトが慌てる。
「いや、違う」
マーティンが回路を確認し、同じ位置に立って矢を軽く放つ。
――ブオンッ!
風を切る音とともに、的が吹き飛んだ。
「魔力を多く込めなくても使える点はいい。
……ただ、ハリス叔父さんには難しいな」
「回路が繊細すぎるんだよ〜!」
ハリスが文句を言う。
「そのための潮晶石だろ?」
カイが苦笑しながら言うと――
みんな、吹き出して笑った。
潮風の中、仲間たちの笑い声が響いた。
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